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双極の魔法使い 更新しません  作者: デトロイトのボブ
1章 少女の日常は崩れ去る
13/17

12話「虚栄なる小人⑤」

  01



「明日香!! しっかりしろ!! 」


「私は……私は……」


 春馬は地面に倒れている明日香の元に駆けつけた。ナイトメアによほど苦しめられているのか明日香は尋常ではないぐらいの汗をかいていた。

 アルヴァトスの不死身の能力のおかげで傷は治るが悪夢や精神干渉系魔法はまだ明日香では()()()()



「解呪しようとしても無駄よ、それは女性の血液でしか治せないもの」


「そんな事はわかってる。なあ、あんた明日香になんの恨みがあるんだよ。妹の友達なんだから大切にするべきだろうがよっ!! 」


 春馬は無駄とわかっていながらも桜のこめかみや額、心臓付近に弾丸を撃ち込む。

 普通なら既に体は蜂の巣だが、桜の体は弾丸を全て消していた。


「まだわからないのね。彼女は他人を不幸にする力があるのよ。今はまだ活動段階に至ってはいないけど、オルタナティブが進めば進むほど彼女の元に魂が集まっていくのよ。私や貴方のもね」



「どういう事だ? 」


「オルタナティブは最後の一人になれば大抵の願いは叶えられる。その願いを叶えさせるには私や貴方の魂、他の参加者の魂を彼女に集わせるのよ。彼女を利用しない限りはオルタナティブは成立しない」


「じゃあアイツは……」



「オルタナティブの為に作られた哀れな少女よ。魔法使いなら知っていて当然の事を知らなかったり、一般人に変に肩入れしているのは本当に面白かったわ」


 桜は明日香を嘲笑っていた。人形が必死に人間のフリをして正義感を振りかざしていたのを魔法を使って視ていた桜はそれがおかしくてたまらなかった。


「一つ聞かせろ。アンタは本気でおかしいと思っているのか? 」


 桜にバレないように春馬は一部だけ解放していた神速なる大英雄の目(アキレウス)を全開放する為に魔力を練っていた。

 春馬の負の感情(異能)はダイスを使って、三体いる使い魔の内の一体を呼びだし、自身の体に宿す。神速なる大英雄(アキレウス)はその負の感情(異能)によって創られた使い魔の能力の一部を使っている。


「おかしいに決まってるじゃない。だけど一つ貴方にいい事を教えてあげる。彼女を救いたければ彼女を()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ば彼女は人形のままでいられるのよ」



「……もう答えは既に決まった」



「どうやらまだ諦めていな……くっ!! 」


 春馬は瞬く間に桜の右腕に弾丸を撃ち込んでいた。桜は体に撃ち込まれた弾丸を消そうと試みたが異変が生じていた。


「まさかと思ってあえてやらなかったけどアンタ本当に吸血鬼なんだな」


 桜の体には光を放つ弾丸が埋まっていた。他の体の部位は霧化して難を逃れたが、右腕だけはいうことを効いていなかった。


「いいわ、いいわ。貴方は私の願いを邪魔するのね……」


 桜は目の前にいる春馬を自分の願いを邪魔する嫌な敵として見るようにした。

 侮れば殺されると桜は考えていた。



  02


「ここは……? 」


 明日香は目を覚ますと何も無い暗い場所にいた。先程の遊園地とは違い、そこにいるだけで人の精神は崩壊していく。

 ナイトメアは対象者のトラウマを呼び起こし、再体験させるものだ。


「そうだ私は牛に変な技を……アル君!! 」


 明日香はある違和感を覚え、自分の中にいるアルヴァトスに問いかけた。だが、声は無かった。

 アルヴァトスの魔力反応はあるものの、消えかけのロウソクみたくいつでも溶けてなくなりそうだった。


「これはもしかして相手の異能や使い魔を封じるものか……かなりマズい状況ね」


「兵藤君が香澄のお姉ちゃんを倒さなきゃこれは解けないのかぁ。しかし、兵藤君の異能って銃火器を大量に出すだけなのかな……?」


 明日香はなんの迷いもなく暗闇の中を歩いていると、奥の方から光が漏れていた。

 罠だと感じながらも明日香は光の中へ


「暗闇から急に映画館に……わけがわからないよ」



 暗闇から抜け出した明日香が行きついた場所はとある古びた映画館。

 周囲を見渡すと席は四席分しかなく、明日香にもわかりやすいように一つだけ目印が書いてあった。


「何かを観ろって事ね。あのお姉さんの事だから趣味が悪いモノに違いない」


 明日香は運が良いのか悪いのかこれから映し出されるモノをすぐに趣味が悪いモノだと判断できた。()()()()()()()()|だ

 《・》()()()()()()()()()()()()()()()



『さぁ、君が求めたモノが明かされるこの日に感謝を。キヒヒヒ!! 』


 なんの前触れもなくスクリーンには気色の悪いピエロが映し出されており、明日香を嘲笑った。


 「きっも。なんか急に疲れが……」


 上映時間になったのか先程の空間と同じように映画館は暗くなっていた。

 スクリーンは後ろの映写機からの光で徐々に明るくなり、そしてある映像を映し出す。



 「――えっ、これは……私の家? 」


 明日香が見慣れている古めかしい日本屋敷がスクリーンに現れていた。

 そこから段々とズームアップしていき、明日香と思わしき小さな女の子が屋敷の廊下を歩いていた。


 「確かこの時、私は夜にトイレで目覚めて……それで」


 明日香は小さい頃の記憶の続きを頭の中から懸命に探ろうとしたが思い出せなかった。

 小さい頃の嫌な思い出は誰だって消したいものだ。明日香はそう思うようにしたが……



『早く部屋に戻って寝ないと……あれ? 父様の部屋から光が漏れてる』


 幼い明日香は重い瞼を無理やり開きながら、父親の部屋に入った。

 明日香の父親は普段地下室で()()()()()を創るために色々実験をしていた。

 地下室を隠す為に置いてある書棚が左にズレていた。小さき女の子は父親に入ってはいけないと言われている地下室に向かっていた。



 「――やめて」


『父様はこんな広い場所で実験をしているのね! 私も大人になったら同じように実験したい! 』


 幼い明日香は狭い屋敷に360度を見渡せる地下室があった事に驚きを隠せず、興奮していた。


『助けて……ここから出して……』


『誰かいるの? 』



 幼い女の子は声が聞こえた場所まで歩いた。辺りはなにやらおびただしい血の色が地面にこびりついていたが小さきはそれを気にしてなかった。

 運命は時に残酷な面を見せる事を幼い明日香は気がついてない。



『私がいっぱい……』


 目の前には竜宮寺明日香だったはずのモノがゴミのように大量に棄てられていた。

 竜宮寺明日香だったモノ達は小さき明日香を見るなり、なにやら呻き声を出していた。


『ああ、見てしまったのか。残念だなぁ』


 後ろからこの世の地獄を彷彿させるような声で幼い明日香の肩を掴んでいた。

 その後の映像は映っていなかった。



 「ハハッ……どうりで変だと思ったんだ。魔法使いとして当たり前の常識を知らなかったのも変に一般人に肩入れするところも」


 明日香はオルタナティブに参加して初めて大粒の涙を瞳から流していた。

 今まで自分が考えていた理想は全て無駄。自分は人間でない現実に耐えられなかった。

 胸元のペンダントは微量だが光を放ち始めていた。その光はまるで全てを包み込む母親のように

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