プロローグ
三人称は初めて書きました。自分の好きな作品の影響で魔法ものに挑戦
00
「私はこの家を継ぐつもりはないです」
15歳の春、少女は叔母に重大な言葉を告げた。普通の人からみればなにかの家業を継ぐ話が決裂したのではないかと思うが若干違うのだ。
彼女、竜宮寺明日香の家は代々魔法使いの家系で15歳になったら家元を継がなければいけない決まりになっている。信じ難い話だがこの世はありえない事ばかりだ。
「い、いきなりどうしたのよ明日香ちゃん」
「私なりに考えたのですが竜宮寺という苗字はかなりのプレッシャーで周りから好奇な目で見られるのは耐えられません」
竜宮寺家は古来からある名家で見る人を魅力するような日本屋敷を田舎町に佇ませている。
その屋敷内の居間で叔母と明日香の冷戦は始まろうとしていた。
「……確かに私達竜宮寺は1000年以上も続く魔法使いの家で他の魔法使いから好奇な目で見られるのはわかりますが、他に理由があるのでしょう」
「……」
叔母の目は先程までの優しい叔母ではなく、冷酷な魔女として明日香を見定めていた。
だが、そんな目線でたじろぐ明日香ではない。彼女は彼女なりに覚悟を決めていたのだ
「10年前にいなくなったお母様を探しにここを出たいのです、手がかりはお母様のペンダントしかないですが。」
「――貴方の母親はろくでもない母体だった、そんな母親を見つける意味はないでしょう」
「少しお時間をくれますか?私なりに色々と考えたい事があるので」
そう言い放ち、明日香は居間を出た。だが、彼女は叔母が最期に放った言葉に気がつけなかった。
「母親に似て忌々しい娘め……」
01
「お嬢、本当に家をお出になるのですか!?もう少し冷静になってください! 」
「本当よ、彰英。私は既に我慢の限界を超えているわ」
居間を出てから早10分、明日香の部屋の前には彰英という男が立っていた。
身長185cm以上の巨体なのにそれ以下の明日香に頭を垂れている姿はなんともいえないものだった。
「お気持ちはわかりましたが静江様やお父上を納得させる理由はないのですか?」
「言ったとしても話を聞かないだろうから今日の深夜にここを出るわ」
「……決断力が早いのは良いですがその早さが仇になってしまう事がいずれ出てきますよ」
彰英は明日香が赤ん坊の頃からずっと見守っていた為、静江叔母様や父親よりも明日香を心配していた。
「10年間ありがとう、彰英。一応部屋に手紙を残しとくから渡しといてくれる?」
「承りました……お嬢、お元気で」
明日香には彰英の大きな背中はたくましさを感じていたが今の彰英はそのたくましさを失い、哀しみにくれていた事に気づいた。
彰英が部屋を出たのを見計らって明日香は壁に掛けていた呪文を解いた。
「竜宮寺の道具は置いていこう」
呪文を解かれた壁には少女が入っても大丈夫な穴が空いており、明日香はその穴に入った。彰英には深夜に出ると言ったが深夜に出たとしても父に殺されるだけなので裏をかいて今日出る事にした。
――――
穴から出てから明日香はある人物を待った
「お、時間より早いな」
「予定よりはなんとかなりました」
車から出てきたのは母の弟で景政という人物、以前明日香のパソコンにメールを送ってきて色々と相談に乗ってもらっていたのだ。一応確認として明日香は母が好きなものを質問して答えられていたから大丈夫だと実感していた。
「でも本当に良いのか?この家にいたら君は……」
「――後悔なんてとっくに捨てています」
「すまなかったな野暮なこと言って」
車に明日香を乗せた後、景政は少しだけ後悔してしまった。彼女はこれから茨の道に進んでいくのに自分は止められないのだという事に