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兼業農家の憂鬱5

 仕事終わり、同僚の嘉内がほくほくとなにやら抱えていた。聞けば焼き芋だという。女性の大半が好きだろうと思われる焼き芋。それにしても数が多すぎである。

「おまけで貰っちゃってさぁ。食べきれない分は明日スイートポテトにして持ってくるから」

 嬉しそうに言う嘉内は、どうやらお菓子作りが電話のストレス発散のようである。

「好きだねぇ」

「甘味好きだしね。それに作ること自体が楽しいし。それに専業主婦だった母がよく作ってくれてたし」

「羨ましいこって」

 思わず師井の口から本音が出た。


「うちの場合はねぇ、エンゲル係数高かったってのもあると思うよ」

「よく分からん。焼き芋はよく畑でやったけど」

「……はぃ?」

 嘉内が目を見開いて驚いていた。

「いやさ。うちの婆さんの変なこだわりで『豆ぶち』ってのをやってたんだわ」

「……ナニソレ」

 やっぱり知らないか。師井の年代で「豆ぶち」を知っているもののほうが少ない。

「乾燥させた豆を殻から取り出すのさ。その時に棒とかで豆を打って鞘から取り出すから『豆ぶち』っていうのさ」

「分からん」

「だろね。で、豆の鞘とか茎とかが乾燥して畑に残るわけ。それを肥料にするっていう事も兼ねるからだろうけど、風のない日に燃やすのさ。で、その燃やした中にアルミホイルに包んだ芋を放り込む、と」

「できたてホカホカの焼き芋が出来るわけですね、分かります」

 そこだけは分かったらしい。

「ちなみにな、前の職場でも知ってる人少なかったから気にしないよ」

「豆ぶち」など知っているほうが少数派だろう。

「そうなの?」

「おうよ。親世代でも知らん人は知らんかった。挙句『それ私が子供のころばーちゃんがやってた』って言われたぞ」

「さよか」

 嘉内の顔があきれ顔になっていた。

「あ、うちは珍しいからね。多分ご近所でもやってなかったんじゃないかと思われ」

「そんな言い訳要らんわ」

 袋から焼き芋を一つ取り出しながら嘉内が突っ込みを入れてきた。

「いや。未だやってるかって言われると謎だし」

「いいんじゃね? ほい、面白い話聞けたし、一個どうぞ」

「サンキュ」

 もくもくと一つ食べ終わると満腹になり、ご飯など要らないように感じた。


 懐かしい話を思い出しつつ、師井は帰路についた。

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