ミスの多い一日
大きな厄介ごとが終わって安心していたのかもしれない。
その日、嘉内はやたらとミスを連発した。
そんなこともあり、リーダーの機嫌は急下降中だ。
「……やらかした」
「気にすんなー。あたしらにだってミスはある。あんたのミスは可愛いほうだと思うよ」
「ありがと」
こうなってくると電話に出たくなるなるのが、人の心理というものである。
「ああああああ。休みたい。一日何もせずぐったりしたい!」
休憩中思わず嘉内は口にした。ここのところ仕事が忙しくて休日出勤も多く、まともに休めていない。
「同意だね~~。嘉内ちゃんの仕事ぶり見てると、リーダーよりも頼りになるわ」
それはイレギュラーな電話を引きまくっているという事でしょうか。本気で聞きたくなる。
「前のリーダーは前回みたいな電話があった時だと、最後まで付き合ってたよねぇ」
グループ再編成前から同じグループの師井がぼそりと呟く。
その通りだ。
前のリーダーは「勉強になるから」と言って一緒に最後まで付き合ってくれていた。そのリーダーは、その上のクラスへと移行してしまったが。
「やっぱり移行する人って勉強してるよね~」
同時期に入社した人間でも、そういった違いは出る。
余談だが、このグループ内で誰が新人か、と言われたら、実は嘉内だったりする。
それもあり、嘉内の引きの良さには、誰もが同情している。
それ以上に、嘉内がそういった電話を引くために「ありがとう」と言ってきた人物もいるくらいだ。
……失礼な話である。
「あ、嘉内ちゃん。リンゴいらない?」
いきなり師井が尋ねてきた。
「いる」
「サンキュー。明日休みだから家に来てよ」
「ほーい」
そんな約束をして、その日は終わった。