エイプリルフール
「あ、小田君……」
「おう、柴崎」
春休み真っ只中の、ある糞ダルい日曜日、何か損した気になる長期休暇中の日曜日のこと。
その日は四月一日、つまりエイプリルフールであった。
誰かに嘘をつく予定など皆無であった。
バス停で偶然にも出会ったのは、中三のときのクラスメイトの柴崎だった。
どちらかといえば目立たない方の女子で、何度かしか喋ったことがなかった。
顔は整っている方だったので、よく告白はされたらしいが。
まぁ、本人談ではないが。
と言うか俺も柴崎のことが中二あたりから結構気になっていたのだが。
まぁそんなことはどうでもいい。
「これからどっかいくのか?」
黙っていては気まずいので、俺は喋りかけた。
「え、あ、うん。ちょっと……買い物に」
俯き加減で、柴崎は言った。
「買い物か。俺は特に目的はないんだけどな。ただちょっとブラブラしようかなぁと思って」
「へぇ……」
としか柴崎は返さなかった。
気まずい沈黙だけは避けなければ。
という、なんというかソフトな強迫観念から、俺は喋り続けた。
「お前は何買いに行くんだ?」
「えぇっと……それはちょっと……」
まずったか?
いや、沈黙よりはマシだろう……たぶん。
そうこうしているうちに、バスが来た。
俺と柴崎はそれに乗った。
俺は柴崎に席を譲った。
「ありがとう」
小さくそう言って、柴崎は座った。
なんとなく、こう……優しくしてあげなきゃ!的な気持ちにさせるオーラを、柴崎は持っているのだ。
「そういや、柴崎ってxxx高だっけ?」
「うん……そうだよ」
柴崎は言った。
そして
「たしか、小田君はxxxxx高だったよね」
そう続けた。
俺は一瞬、驚いた。
柴崎は会話を展開させるようなことはしない。
今までそんなことはしたことが無かった。
驚きによる少しの間を置いて、俺は答えた。
「そうだよ。っていうかxxxxx高ってxx中からの奴あんまいないんだよな。友達作りから始めなきゃなんねぇってのが、なんつーかダルいなぁ」
「……そうだね」
「…………」
妙に気まずい感じの沈黙が、しばらく続いた。
そしてその沈黙を破ったのが
「……ねぇ」
柴崎だった。
またしても、自発的に会話を展開させるようなことをした。
そんな柴崎に何か違和感を感じながらも、取り敢えずは会話を続けた。
「何だ?」
「小田君ってさ、中学のとき好きな人とかいたの?」
意外なことを訊いてきた。
…………まぁ、俺は中二のときからお前のことが結構気になってたんだけどな。
などと真実を言えるはずもなく、俺は
「いや、別に」
と答えた。
「……ホント?」
「ホントだって。マジで」
「……まぁ、エイプリルフールだから別に嘘でもいいんだけどね……その、ちょっと訊いてみたかったの」
だんだん小さくなる声で、柴崎は言った。
……そうか、今のでもう俺は嘘をついたことになるのか。
そんなことを思ったときだった。
「次は、xxxxxxxx、xxxxxxxxでございます」
バス内にアナウンスが流れた。
「あ、ミスった」
予定よりも一つ先のバス停まできてしまったのだ。
「ごめん、俺もう降りないと。一つ先まで来ちゃったみたいだから」
「う、うん。……それじゃ……またね。小田君」
「おう、またな」
俺はバスを降りた。
行く予定だった繁華街まで、歩きで行くことにした。
と、そのときだった。
ケツのポケットで、ケータイが振動した。
家から電話だ。
「もしもし」
「あ、もしもし、お母さんよ!何回かけても出なかったけど、今どこにいるの!xxxxに行くって言ってたけど、そこにいるの?今そこにいるの?」
「どこって、バス停間違えたから今xxxxにむかって歩いてるとこ」
俺がそう言うと、母親は
「あぁ……よかった」
と言った。
「何?何かあったの?」
俺が訊くと、母親はとんでもないことを言った。
xxxxで五人、人が殺されたのよ。
あんたの友達の柴崎さんも……刺されたらしくて…………。
「……それ、いつ頃のこと?」
「あんたが家出てちょうど五分くらい経ったぐらいのことよ……」
俺が家を出て五分後。
俺がバス停にちょうど着いた頃……。
俺は、何も言えなかった。
後日、柴崎の通夜も葬式も終わってしばらく経ったある日のこと。
俺は柴崎の家族に呼ばれて、柴崎の家へ行った。
そこで、俺は意外なモノを渡された。
「……これは?」
「あの子の部屋を片付けてたら出てきて……あの子、小田君のこと好きだったみたいね」
「…………」
恋文……じゃ、ないか。
俗に言う、と言う言い方も変だが、ラブレター、だった。
「………………」
俺は仏壇に手を合わせ、それから柴崎の家を後にした。
だいぶ久しぶりの投稿です。
どうも、蒼山です。
ジャンルをホラーにするか恋愛にするか迷いました。
なんかもうテキトーにやった感バリバリですが、そこは持ち味としてテキトーにスルーして下さい。
こんな何の起伏も無い話を書く(打つ)時すらメタルを聴く俺は正常なのか、否か……。
ってゆーか、最近のアニメはおもしろいね。
メタルもいいけど、アニメもいいね。
でもメタルだな。うん。(結局何が言いたかったのか