表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の平凡な日常 なんちゃって。  作者: 絹川クーヘン
9/58

第9話 女の恨みは怖いのにゃ


 ドラキュラの元にネコ娘がやってきた。

「ドラキュラ様。本日はいかがいたしますか?間数斗の事。」

真面目な口調で尋ねると、ドラキュラは言った。

「いいや。今回は数斗君はやめとくよ。口だけでは引き寄せられない、手強い方ですからね。誰かを使って交渉しないと。」

「ではぬらりひょんを?」

「それだと力の差が大きすぎますよ。そうですね~"座敷童子君"を捕えてください。」

「なっ!なぜですかにゃ?奴の他にもあのいぬっころとかっ・・・」

「任せましたよ。」

「はい・・・わかりました。」

ドラキュラの言われた通りにしようとしたが、ネコ娘は腹立たしかった。

そこへ、一匹の猫が話しかけてきた。

「娘さま?どうされましたにゃ?」

「・・・猫又・・・行くわよ。座敷童子・・・必ず始末してやる!」

ネコ娘はさっきの優しい表情はどこにもなく、殺意に芽生えた表情をしていた。



 「へっくしょん!」

まりのは大きなくしゃみをした。

「風邪?まり。」

「うーんどうだろうね。」

「最近、流行ってるよね。」

「そう?」

「うん。今の風邪とか、あと殺人事件。それから、失恋。」

「そんなことわかるの?」

「だって、今月に入って4組の芸能人が、付き合っていた人と別れたり、離婚したりしてるし。」

「失恋に流行りなんてあるんだね~」

実際にそんな流行りは存在しない。

「あっ、あそこのお店みたいな~」

「なら後で隣のお店にも付き合ってよ。」

「うん。」

 まりのとひかりは、デパートに来ていた。

その足取りを、ネコ娘は物陰に隠れて偵察していた。

「あれのどっちですかにゃ?」

「右よ。」

猫又はネコ娘に尋ねた。

「じゃあ邪魔な子はどうするんですにゃ?」

「あなたに任せるにゃ。うまく奴らを引き離して。座敷童子は、わたしが仕留める。」

彼らは行動に出た。

 「これもカワイイな~でもこっちも・・・」

「どっちにしようか迷うな~この際全部買っちゃう?」

「もうーまりのはワイルドだね。」

「にゃー」

ひかりは 1 匹の猫を見つけた。その猫は近くにあった T シャツを持って、店から出てしまった。

「えっ?待って!それはダメだよ!」

ひかりは黒猫を追いかけた。

「よし!これ決めた!ひかり~決まった?わたしは・・・あれ?ひかり??」

さっきまで近くにいて同じものを見ていたはずが、ひかりの姿がなく、はぐれてしまったと気づいたまりのは、店の出口へ出た瞬間に腕を掴まれた。

「待ってよ~~あなたカワイイじゃない?ぜひ、うちに来てよ!」

「えっ????」

女の人は、モコモコなブーツにミニミニスカート。腹チラのスウェットを着ていた。

親しげに近づいてきたが、まりのの顔見知りではなかった。

 そこからかなり離れた場所で足を止め、女の人は声色を低く変えてこういった。

「やっと、2人きりになれた。ねえ、座敷童子。」

「っ!あなた、何者?」

「わたしは、ドラキュラ様に仕える秘書。ネコ娘にゃ。」

スウェット姿から一変して妖怪の姿に変わったネコ娘。相手が妖怪だとわかると、ひかりのことが頭を過った。

「ひかりをどこにやったの。」

「ああ。一緒にいた人間は、わたしの部下が確保してるからご心配ないにゃ。そんなことよりも自分の心配をした方が良いんじゃないかしら!!!」

ネコ娘はまりのに飛びかかってきた。

 その頃ひかりは、まだ黒猫を追いかけていいた。黒猫はネコ娘と座敷童子に鉢合わせさせないようにと距離をとっていたのだ。だいぶ距離が延びたとき、急に立ち止まった。

「はあ・・・はあ・・・猫ちゃん、服を、返してくれないかな?」

「・・・いいよ。」

黒猫は言葉を発し、2本足で立ったのだ。そして素早い速さでひかりの腹に拳を入れ、ひかりを気絶させたのを確認すると満足そうに笑った。

その様子を黒猫はネコ娘にテレパシーを通じて知らせると、ネコ娘は勝利を確信した。

「フフッ彼女は死んだわ。さあ、今度はあなたの行く番よ。」

「行くって・・・どこに・・・」

「地獄に決まってるにゃ。」

ネコ娘はまりのに襲い掛かると、手を振りかざした。

でも、どこも痛くない。すると、まりのの頬が少し切れているのに気付いた。

「嘘っだって素手っ・・・違う、爪??」

よく見ると、ネコ娘の手には鋭い爪が輝いていた。

危険なことがわかったまりのは、座敷童子に変化した。

「そうこなくっちゃ。」

ネコ娘は攻撃を仕掛けてくる。座敷童子はひたすら避けた。

「どうして・・・わたしを・・・狙うの?」

「あなたが憎いからよ!!!」

「えっ??」

「ドラキュラ様があなたをターゲットに指名した!!あなたなんか虫けらのくせに!!!いえ、それ以下の能力のくせに!!!なぜ、ドラキュラ様はあなたを人質にと考えたの??なぜ!!!」

「・・・っ!・・・知らないわよ!!そんなの。」

「黙れ!!!わたしは許さない!!あなたなんて、死んで、ドラキュラ様の目からいなくなればいいのよ!!」

ネコ娘は怒りと共に、涙を流していた。

座敷童子はなんとか両腕を封じ、動きを抑えた。

「っ!!!!!離せ!!!!」

「こんなこともう止めて!憎しみで誰かを殺すなんて、そんなの自分勝手でしょ!!」

「うるさい!!あんたなんか・・・あんたなんか!!!!・・・」

怒りで我を忘れているネコ娘の手を、黒い男が掴んだ。

「ドラ・・・キュラ・・・さま・・・」

「勝手なことをされては困りますよ?ネコ娘君。」

「(この人が、ドラキュラ・・・)」

座敷童子は、ネコ娘の知り合いということで相手も妖怪だと知り、全身が震えた。すると、ドラキュラが座敷童子に言った。

「お嬢さん、私と歩きませんか?」



 ひかりは、夢を見ていた。

草原にひかりは立っていて、突然景色が真っ暗になったかと思うと、白い影が襲い掛かってくる夢     

「うわっ!!・・・こっここは?」

「俺の家だ。」

そこには数斗がいた。

「数斗さん?」

「お前どうしたんだ?デパートの路上で倒れてたんだぞ?」

「それでっわたしは一体・・・」

「はあ・・・お前が倒れてるのを見て、警察が来たんだ。でもなんとか話を付けて、お前を家まで運んだ。けどピンポン押しても家の人が出なかったから仕方がなく俺の家に運んだってわけだ。でももう両親、帰って来てるだろう・・・」

「両親はいません。」

ひかりは呟いた。

「両親は、1年前に・・・亡くなりました。原因不明のまま・・・」

「っ・・・そうか。悪かった。」

「いいえ。いいんです。わたし、帰ります。」

立ち上がったひかりに、数斗は引き止めた。

「待て。今日は泊まってけ。」

「えっ・・・でも・・・」

「今晩ビーフシチューなんだ。食って行けよ。」

戸惑いながらも、ひかりは晩御飯をご馳走になった。

「おいしいです。」

「よく作ってたからな。家で。」

「ご両親にですか?」

「ああ。大家族なんだ。下が多くてな。だからたまに俺が家事やったり、遊ばせた時もあった。」

「大勢でいる家族なんて楽しそうですね。」

「・・・悪いななんか。」

「いえ・・・」

一瞬沈黙したが、思い出したように数斗は話をし始めた。

「昔から賑やかな生活をしてたおかげで、引っ越してきて初めて一人の生活に入った時、こんなに静かなんだなってわかったんだ。」

「帰りたいとは・・・思わなかったんですか?」

「なぜだか思わなかった。それでも、兄弟たちのことが心配になったよ。ご飯はちゃんと作れてるかなとか、一番ちびの奴らをしっかりあやしてるだろうかとか。そう思うと、俺自身は今までそれを熟してきてたんだなって実感した。でも、いざ自分の事だけでいいようになると、何かが足りなくて腹が立った。」

「腹が立った?」

「誰もいないのに心配するのはおかしいだろ?だったら今いる自分のことだけ考えようって思った。それでも家族のことを考えちまって・・・」

「わたしは、両親が居なくなって、一人になる家に帰るのが嫌でした。今は環境に慣れて、学校の事を思い出しては家でも自然と笑っていられるようになりましたよ。」

「強くなったんだな。お前。」

「えっ?」

「それって、お前が強くなって、孤独に打ち勝ったわけだろ?俺も見習わねえとな。一人ででも、大丈夫なように。」

「ん?どういうことですか?」

ここに住んでいるのは数斗一人。なのになぜ“一人ででも大丈夫なように”というのかがひかりはわからなかった。

「カアー」

いいところでからすなが窓の傍で鳴き声をあげた。

「こいつはからすな。俺のあっ・・・友達だ。」

「カラスと友達なんですか?」

「ああ。懐いてるんだ。紹介する。こいつは隣に住んでる人だ。」

「ひかりっていうの。よろしくね。からすなくん。」

「カアー」

「・・・言葉、通じてますかね?」

「わかってると思うぜ?カラスは、頭がいいからな。」

数斗には聞こえていた。からすなが「よろしく」と返事を返していることに。

「なんか、違和感があります。」

「いいだろ別に。」

ひかりは笑っていた。数斗もつられて笑ってしまった。

夜。

「すみません。ベット貸してもらって。」

「いいよ。俺はソファで寝るから。ゆっくり休め。」

「はい。おやすみなさい・・・」

「ああ。おやすみ。」

 リビングに入ると、ぬりかべが言った。

「数斗、あの子変わりないか?」

「あの子?ひかりのことか。何ともないが・・・」

「あの子から、この前来たしゃべる猫の匂いがした。多分、傷つけたのは、奴らだ。」

ぬりかべの話を聞いて、数斗は外に出た。

「ドラキュラ!!どこだ!!話を聞き出してやる!!」

「君!!」

呼んだのはトロールだった。

「まりのを見なかった?」

「まりの?いや。見てない。」

「家に帰ってないんだ。福美も心配してる。」

「(ドラキュラの仕業だ・・・)俺も探すぜ・・・ていうかトロール、お前、やっと名前覚えたんだな。」

 トロールがまりのを「君」と呼んでいたのには訳がある。それは、単なる名前を憶えていないからである。



ドラキュラはまりのと散歩をしていた。

「ここに来たのは初めてでしてね。知らない道がたくさんあるんですよね。」

「そうなんですか・・・あの、ドラキュラさん、そろそろ帰らないと・・・」

「おや。もうそんな時間でしたか。これは失礼いたしました。ではこれで。」

「・・・あの、一つ聞いてもいいですか?」

「なんでしょう?」

「さっきのネコ娘って、ドラキュラさんの仲間・・・?」

「そうですよ。」

「じゃあ、わたしの友達の居場所を教えてください!」

「そこまではわかりません。でも生きています。狙ったのは貴方だけですから。」

「それってっ・・・」

ドラキュラはまりのをぐっと引き寄せ、自分と目線が同じになるように顔を近づけた。

「もしかして、“貴方を狙った理由”を聞きたいのですか?その答えを知ってしまったら、貴方を殺さなければいけなくなりますよ。貴方はまだ、死にたくはないでしょう?」

「・・・っ!」

「まりのを離せ。」

そこへトロールと数斗がやってきた。

「おや。トロール君。それに数斗君も。・・・あ~なるほど。」

ドラキュラはそうつぶやくと、トロールに激しく攻撃をした。立てなくなるぐらいまでトロールを叩きのめすと、すばやくまりのの首を固定した。

「まりのっ!」

「あ・・・!」

数斗はトロールと目の前の出来事に驚いた。

「ちょっとっ離してください!!」

「静かにしてください。はぁ・・・」

ドラキュラは牙をむき出し、まりのの首に噛みついた。

「うっ!」

まりのは苦しい表情をしたまま、気を失ってしまった。

首から離れたドラキュラは最後にこう言い残した。

「これで彼女は用無し。目覚めたときには私と同じ吸血鬼になるでしょう。さあトロール君。帰ろうじゃないですか。ね?」

「・・・・・・いや・・・だ・・・」

トロールは尺も承知で、ドラキュラに逆らった。

「しょうがない。河童くん。」

「はい。」

不思議な空間が空に出来たかと思うと、河童が顔を出した。

「トロールくんを、お願いします。」

「はい。」

「それでは。数斗くん。」

ドラキュラはトロールを連れて行ってしまった。


━━━━━ごめんね・・・まりの


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ