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僕の平凡な日常 なんちゃって。  作者: 絹川クーヘン
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第43話 蛇と烏


 冷たい氷の塊が、龍の足場を固まらせている。

ところが、龍の足が歩き出すたびにすぐに氷は砕け散り、破片が散らばってしまう。

周りへの被害が及ばないようにと、弊六は結界を張ろうと試みてはいるが、体長7メートルを超える大きさの相手を囲う結界を作るのは相当な体力を消耗する。

「弊六、大丈夫?」

「なんとか。でもこの大きさ、しかも四方八方に動き回るのに結界を張り巡らせるのは無理だ、どうしたら・・・」

頭を悩ませる弊六の元へ駆けつけてきたのはぬらりひょんだった。

「どんな様子だ?」

「見ての通りよ。氷で足元を止めようと思ってもこんな大きい生き物の身体を一部だけ凍らせても、力が勝ってすぐに壊れてしまうの。」

見上げてみても、相手の顔は一切見えない。

「手だてを考えるしかないな~」

3人の背後はがら空きだった。

そんながら空きに、龍の頭が1つ大口を開けて近づいた。

自分たちの真後ろにいる龍の存在にいち早く気づいたのはぬらりひょんでも、弊六でもなく、雪女でもない別の妖怪だった。

「こちらを向いてください。」

3人の後ろの龍、龍のそのまた後ろにいた妖怪のお淑やかな声に龍の頭は振り向いた。

すると顔の全体がみるみる石と化し、重力に負けた顔は地面にのめり込んだ。

3人の視線の先には、足が蛇の尾になっており、緑色の長い髪の女妖怪が立っていた。

不思議なことに、彼女は(まぶた)を閉じていても、こちらの光景は把握できるようだ。

そうでなければ、ぬらりひょんたちが襲われそうになっていることに気づいて止めることはできない。

「無事でよかったです。」

「ありがとう。助かったぜ。」

「いいえ。あの、お伺いしたいのですが、わたしと同じような姿をした、妖怪を見ませんでしたか?」

安堵の表情をがらりと変え、必死な表情と声色で尋ねられたが、あいにく3人は口をそろえて「見ていない」と答えた。

そうですかと妖怪は残念そうにしていたが、立ち去る足取りは急いでいる様子だった。

その残念そうにしていた顔が、雪女にとって見覚えがあった。

あの人に会うのは初めてのような感じがしない。

頭の中を整理しているとぬらりひょんが呟いた。

「なほりに似てるな。」

雪女は納得した。

話し方と言い、髪の長さといい、似ている部分が多すぎるほとだ。

「あの人、なほりが怖がっていた人よ。つまり、女優のマリネさん。なほりのお姉さんの一人だわ。」

「「えっ!??」」



 龍の近くまで到着した烏天狗たち。

ぬりかべは龍の皮膚を見て妖怪の察しがついた。

「やっぱりただの龍じゃない。こいつはオロチだ。」

「"おやつ"?」

狼男は真剣な表情で聞き返した。

「違う!"オロチ"だ!ヤマタノオロチ!言い伝えでは8つの首のある龍ということでその名がついてて、鱗がいびつになってるのがその証拠なんだけど、9つの頭のやつがいるなんて知らなかった。こいつはなにもんなんだ。」

得体の知れない龍を倒さなければ、町中の建物が崩壊しめちゃくちゃになってしまう。

「とにかく!このおやつをぶっ倒せば何事もチャラになんだろ!おし!」

意気込む狼男だが、一方で冷静な烏天狗は龍の根元である背中にかすかな人影が見えたため、すぐさま龍の足元を避けながら進んでいった。

「おい!烏天狗どこにっ...?」

狼男とぬりかべは何も言わずに烏天狗に着いていった。

するとそこには、足が蛇の尾になっており、緑色の長い髪の女がうずくまっていた。

その緑色の髪には見覚えがあり、烏天狗は話しかけずに佇んだ。

一方狼男は女がその場から動けないでいるのかと思い、そっと相手の肩に触れた。

「おい。動けるか?」

「誰!!?」

勢いよく振り向いた女の顔の一部は、蛇の鱗に染まっており、妖怪の姿をしていたが、目を閉じたまま涙を流していた。

その姿はあの時のなほりに似ていた。

「取って食うつもりは全くねえ。怪我がねえ早くここから立ち去ったほうがいいぜ。」

「立ち去る・・・?そんなことできるはずがないでしょ!!妹が、帰ってこないの。さっきマリネにも伝えたら、イベントにも顔を見せてないっていうしで。何かあったのかと思って外に出て探していたら。これが。」

手に持っていたのは壊れた黒縁メガネだった。

「なほりの・・・」

烏天狗がなほりの名前を呼ぶと、女妖怪は烏天狗の首元に見に着けている数珠を引っ張り顔を近づけた。

「なほりのこと知ってるの?あの子をどこに??!もしかして、あんたがこの妖怪を作り出した張本人じゃないでしょうね!!」

「離してくれ。数珠に、容易く触るな。」

殺気立っている相手は、なほりが心配できっと誰がやってきても犯人に思えるだろうと、烏天狗は胸を痛めた。

「・・・ごめんなさい。あたしの大切な、うちの妹なんだ。顔を知ってるなら話が早い。探し出して?お願い。」

烏天狗はすぐに探すと返事を返したいと思っていたが、レンズが割れたメガネを見てしまったら、もう━━━━━  

「おうおう烏天狗、お前に限って“諦める”なんてそんな水臭い事、思ってないだろうな?」

挑発した狼男が言った単語がまさに烏天狗が女妖怪に言おうとした言葉だった。

しかし、狼男にとっては普通の態度でも喧嘩腰に聞こえるせいで、言葉は正反対の言葉を発した。

「探すぞ。まだ諦めんのは早すぎるし。」

「そうこなくっちゃだぜ!」

「ぬりかべ、こいつを足止めしとけ。」

「任せろ!」

「そんじゃ俺も手伝うぜ!」

力任せの“二匹”で龍を止めるべく、本来の大きさである2mの姿となったぬりかべとになり、狼男は気合を握り締めた固い拳で相手がしびれるような痛みを与えた。

ところがそれは裏腹となり、龍は混乱状態になってしまい、益々暴れだしてしまった。

烏天狗は、まるでむじゃきな子供を見守るかの眼差しで、そのままからすなに頼んだ。

「あいつら何やってんだか。からすな。お前もなほりを探してくれ。」

からすなはコクンと頷き、その場を飛び立っていった。

「信頼してるんだね。そしてあんたも信頼されてる。いい仲だね。」

「そういうあんただって、妹のこと気にかけてんだから、向こうも同じこと思ってるんじゃないのか。」

「・・・わからないよ。ねえ、なほりと知り合いなら家族のこと何か言ってなかった?」

 前になほりから悩みの訴えを聞いたような気がする。

“「・・・一番傷つくのは、この気持ちを誰にもぶつけられないこと!!お姉ちゃんに言いたくても言えない。叫びたいけどこらえてしまう!!!この苦痛は一体、誰に伝えればいいのでしょうか?」”

あの時言っていた情景を相手に伝えると、やっぱりという反応だった。

どうしてその反応なのか烏天狗はなほりとの関係が全く見えない。

親戚か、家族か、そんなわけがあるはずがない。

考えがまるでわかりあっていないし、分かり合おうとしているつもりでも互いに一方通行。他人の関係としか思えない。


雪女は地面から氷柱を作り出し、ぬらりひょんは素早い速さで登っていき、龍の顔が見えるところまでたどり着いた。

「こんな顔してたんだな~あっあれ?からすなか?」

ビルの上に辿り着いたぬらりひょんよりも先に辿り着いていたのはからすなだった。

「ずっと思ってたけど、からすなって早いよな。俺より先回りしてることあるし。なあ今度競争してみないか?」

誤解しているとからすなは伝えたい。

いつも先にぬらりひょんの前に現れてしまう訳は、偶然だからだ。

 一瞬で空気が変わった。ぬらりひょんとからすなはお互いの真後ろに的となるものを見つけた。

「からすな見ろよ!あの龍の頭、ビルの路地裏に集中的に攻撃してる。あそこに誰かいるのかもしれない。あれ?烏天狗・・・どうやらあの人も気づいたみたいだ。」

「カア!」

からすなが指示してきたのはぬらりひょんの真後ろに立つヤマタノオロチの姿。その裏の様子を指していた。

ぬりかべの頭を悩ませていた九つ目の頭をもつ龍。その九つ目の頭はただのプロジェクターから映し出されていた映像だった。

遠目で見ていたため、本物と同化していたように見えていたが、違いが判ると体の太さや鼻先から出る二本の髭があるのとないのとで違いがはっきりしている。映像はただの龍だからだ。

「あれを止めれば、少しは安心するかな。得体の知れない妖怪の正体が解明してさ。」

ニッと笑うと、素早い速さでプロジェクターの場所まで移動していった。



 烏天狗は、ヤマタノロチの頭が一つだけ狭い路地裏の辺りを気にしているのを発見したのだ。どうやら大きな頭で入り込めないらしく、代わりに路地裏を調べることにした。

暗くて見えない中、手探りで壁を確認しつつ進んでいくと右手に亀裂が走っているところがあるのに気付いた。まっすぐな亀裂だからヤマタノロチが付けたものではない。もっとよく触って確認してみる。すると丸いドアノブが手に差し掛かった。

ためらいもなく、ドアに耳を押し当ててみる。

外は騒がしくて聞き取りづらいが微かに鼻をすする音が聞こえた。同時に泣きじゃくっているのかヒクヒクという声にできない息を吐く音も。

中に誰かがいる。

「おい。誰かいるのか。無事なのか、返事してくれ。」

「・・・・・・・・・はい。います。あなたは・・・誰ですか?」

かなり震えた声。相手がなほりだと判明できた。幼い子供がドアの向こうにいるようで、烏天狗は胸が苦しくなった。まだ自分の事を名乗ることができない烏天狗はとっさにドアノブを開けた。

「だめです!!開けたらっ・・・っ!?」

内側のドアノブを必死で引っ張るなほり。しかし外から空気が入って来て、砂埃に交じって烏の羽が中に入ってきた。

その羽を見つめると、すぐに石になってしまい柔らかいはずの烏の羽が石化した。だがドアの向こうにはからすがいるのだとなほりは安心した。

「カラスさん?カラスさんがいるんですね!ありがとうございます!でもごめんなさい。カラスさんには会えないです。わたし、今メガネをしていないんです。落としてしまったみたいで・・・わたし、メガネをしていないと目があった人を石にさせてしまう力を持っているんです・・・信じてくれないですよね。そんな魔法みたいなことがあるわけないって。だけど信じてください。」

ぬりかべと自分のように姉妹でテレパシーを送りあっているのか。烏天狗の存在を知っていたなほりに、隠すこともない。

ただまっすぐな言葉をかけた。

「信じるよ。お前の能力は知ってた。だから今お前の力が必要なんだ。力を貸してくれないか?」


今まで自分は、誰かに助けを求めていてばかりだった。そんなわたしを必要だとあなたは言ってくれた。メガネで見えないその扉の向こうであなたが手を差し伸べてくれているのが見える。


今度はわたしがあなたを助ける番だ。


大丈夫。わたしはもう一人じゃない。あなたが傍に居てくれるから。



 なほりはドアを開けた。烏天狗はドキっと緊張感が沸いた。なほりの姿は足首が見えるくらいの長さまである丈のワンピースを着ていて、髪の毛は無数の蛇でできている。そう目を合わせたものは全て石に変えてしまう妖怪メデューサ。三姉妹の正体はゴルゴンの孫である妖怪姉妹だったのだ。

 二人の前に、未だ路地裏に入れず狼狽えているヤマタノオロチの頭があった。



 からすなは、ヤマタノオロチの行動を食い止めているぬりかべに近付き、九つ目の頭の正体を話した。原因が判明したぬりかべはいつものサイズに戻った。

「わかったぞ。あいつら映像に騙されて、ここに現れたんだ!」

「どういうことだ?ぬりかべっ」

ヤマタノオロチの足を掴み、引きずられながら詳しい内容を尋ねた。

「おそらく、親だと思ってるんだろう。見たところ、こいつらは子供だ。親だと思ってこの世界に現れたけど・・・」

「正体はただの映像。勘違いってとこか。」

女妖怪がぬりかべの言いたかったところを簡潔にまとめてくれた。

「んなことより・・・ぬりかべ!!はやくこいつの動きを止めろよ!!」

「あ、すまない。つい。」

ぬりかべは本来の妖怪の姿、巨大化すると言葉が発せなくなるため、小さい姿になる必要があった。

しかし、その数秒でヤマタノオロチは動き出し、プロジェクターに映し出されている龍の方へと歩き出す。一歩踏み出したその瞬間に結界がヤマタノオロチの進行を封じた。

「ギリギリ間に合った。」

結界の向こうには弊六と雪女、それからもう一人の蛇の女妖怪が一緒にいた。

「ぬらりひょんから事情は聴いた。それで提案があるって。」

「あなた、なほりのもう一人のお姉さんですよね。」

雪女が率直に訪ねた。

「そうだよ。あんたもなほりと知り合いなんだね。」

「ステンノ。この子たちに力を貸してあげましょ。わたしたちがこの妖怪を退治できる唯一の方法みたいなの。」

「わかってるわ。アウリュアレも無事で安心した。なほりのことはこいつらのリーダーがなんとかしてくれてるみたい。だからあたしたちがここを食い止めて見せようじゃん!」



 烏組のメンバーだけでは攻撃が聞かず、動きを封じることも時間の問題。しかし石に変える力を持つ三姉妹の力があれば、石に変えることでこの騒動を終わらせることが簡単という発想を、ぬらりひょんは思いついた。

 ぬらりひょんは誤解を解けるようにとプロジェクターの電源を消すべく、主電源に進んでいた。

「お!あった!!」

急いでプロジェクターの電源を落とすと、ヤマタノオロチたちは本物の龍だと勘違いしていたため、消えた瞬間に追いかけていた物語無くなりパニックに陥り暴れだしてしまった。

結界を作り出してもすぐに壊れてしまう。動きを封じようとみんなが構えたその時だ。滑らかな曲線で青い閃光が全員の目を引き付けた。

「今だよみんな!!龍が気を取られているうちに、退治しちゃって!」

「座敷童子!」

弊六にはわかった。一瞬赤い龍に見間違えてしまうが、青い閃光は式神イルだった。

座敷童子のアイデアで龍の姿と見間違えているヤマタノオロチたちに、姉妹たちの援護を行った。

「みんないい?絶対あたしたちの目を見ちゃだめだからね!!」

「それを踏まえて、援護をお願いします!!」

「わかってるよ!!一匹残らず頼むぜ!!!うらあああああああああああ!!」

狼男はヤマタノオロチの足からよじ登り、一体の龍の頭に乗っかった。右手に怪力の威力をため込んだ拳をぐっと握りしめ、牙を食いしばっててっぺんから頭上をフックさせた。弱らせたところでステンノがぬりかべの背中に乗り、ヤマタノオロチと視線を合わせるように場所を持ってくると、閉じていた瞳をバッチリ開き、その瞬間に蛇にらまれたかのように恐れを感じた龍の頭は驚いた表情をしたまま石化した。

 続けて弊六はお札を取り出して龍の首に張り付けると、そこから釘を刺されたような感覚に陥ったように痛み、苦しみだした。そしてふと目を開いて睨み付けたとき、視界に写ったのは弊六ではなくアウリュアレだった。目を見開き相手を見つめると龍の頭は瞬時に石化した。

残りは4体。一転の龍に騙されている3体をまずは仕留めようと烏組と姉妹は策を立てた。

ところが、路地裏で狼狽えていた1体の龍の頭は姉妹が目を合わせてもいないのに石化してしまった。石になり動かなくなった龍の頭は砂ぼこりをたてて地面に叩き付けられる。砂ぼこりから二つのシークレットが浮き出ていた。

「あれは・・・烏天狗!!」

狼男が大きな翼のシークレットを見て名前を当てた。

「じゃああれは・・・」

「メデューサ・・・」

ステンノとアウリュアレは、自分達と似たようにからだの一部が蛇になっている様子を見て、一緒にいる彼女がメデューサということに気づけた。

龍の頭を石化させたのは、間違いなくメデューサの力だった。

「遅れたな。」

「いいや。これからってとこだぜ。残りをぶちのめそうじゃねえか!」

「俺も忘れちゃ困るぜ。狼男。これで役者は揃ったな。」

プロジェクターを無事に解決させて戻ってきたぬらりひょん。

最終段階に迫った戦闘。それぞれの能力を一つ一つ龍の頭に攻撃を仕掛ける。

座敷童子は式神トラを呼び出し、炎で1体の首から渦を巻いて頭を閉じ込めた。

炎の威力に勝るぐらい、雪女は霰を起こし急激に凍らせた。しかしすぐに壊されてしまい、氷の破片が飛び散る。だが壊された後はステンノの力で氷を石に変えて相手の頭から下を岩石封じさせると、目を見つめて石化された龍の頭は岩石の下に埋もれた。

弊六は巨大な決壊を作り出した。その決壊を意図も簡単に狼男は持ち上げて、自慢の怪力で龍の頭まで投げつけた。すると決壊は首を貫通し、龍の頭だけが動けるようにしてそれ以外の部位は身動きがとれないように固定させた。仕上げにアウリュアレは目を会わせて石化させ、全身を一気に固まらせたのだ。

烏天狗が槍を振りかざし、突風を巻き起こした。その突風にぬらりひょんが風にのって龍の頭より上空に立つことができた。落下する勢いに乗っかって、鞘だけで龍の頭を地面と垂直に落ちながら地面に押し付けた。顔を見上げると目を見開いたメデューサが待ち構えており、押し付けられたまま龍の頭は石化した。

全ての頭を石化させ、ヤマタノオロチを全身石化させた。するとヤマタノオロチの身体が静かに消えていった。

これはヤマタノオロチの心が静寂し、邪気が消え去った意味をもつ。

まだ幼かった龍の頭たちは、母親と勘違いをしてこの世界に思いを寄せたせいで妖怪となってやってきたのだが、烏組の力で無事に成仏させることができたのだ。

こうして、長い夜は終わり、夜が明けた。



場所を人目のつかない朝の公園に移動した。妖怪の姿をした彼らを人間に見られないようにするためだった。

「メデューサ、あんたがその姿になったのは久々に見れたよ。」

「・・・かっ勘違いしないでください。わたしは、まだ・・・」

「もういいんじゃねえか。気持ちを押し殺すのは。お前は、別に姉ちゃんたちを嫌ってないんだろ?羨ましかっただけじゃないのか?」

数斗の推理にみんなは耳を疑った。そんなことでこんなに嫌うなんてちっぽけな考えをメデューサが悩んでいたなんて思っても見なかったからだ。

だが、周りはそれでも黙ってメデューサの話を聞き入れる。

「・・・そうです。わたしはずっと、羨ましかったです。二人が明るくて綺麗で輝いているのに、なんでわたしだけがこうなんだろうって。クラスの子達から言われてきました。どうしてあなただけブスなの?なんで姉妹なのに顔が違うの?本当はあなたたちと血が繋がってない他人なんじゃないのって。テレビのお仕事が増えて家に帰ってくることが少なくなって、それでわたし一人の時が多くて・・・誰も話す人がいなくて。寂しいときも一緒にいてくれなくて。どんなに辛かったか。時々帰ってきてもわたしの話なんて全然聞いてくれないし。あなたたちは他人扱いでわたしの家に帰ってくるのがすごく嫌でした!!」

なほりは一人で家にいることが寂しくて、誰かに傍にいて欲しいとき誰もいなかった。家族がちゃんといるのにひとりぼっちの家にいるのがトラウマになっていた。

話を聞けば家族団欒という言葉とは無縁の生活をこの三姉妹は過ごしてきていたことに、烏組は気持ちが理解できた。

「・・・そんな、家族にとっては当たり前のことなのに。本当にごめんなさい。なほり。」

「確かにあたしたち、ずっと仕事に夢中になってた。だからあんたの気持ちわかってあげられなかったし。わかろうとも思わなかったよ・・・ごめんよ。なほり。」

いつの間にか、妖怪の姿から人間の姿に戻っていた三姉妹。始めて抱き合って腰にてを当ててぎゅっと抱き締めあったのだ。

ずっとすれ違っていた姉妹がやっとお互いを見つめ直したことに烏組はみんな笑みをこぼしていた。

「それじゃあ俺らは帰るか。」

「あっ待ってくださいカラスさん!!あの、本当にありがとうございました!また会えたら嬉しいです。」

顔をリンゴのように赤くして礼をくれたなほりに、烏天狗はまたな。と言って、烏組はそれぞれ姿を消していった。



その後。テレビのニュースで速報が流れた。内容は人気モデル

アカナとマリネ姉妹が活動休止するという大ニュースだった。テレビの中では体調不良となっているが、実際はなほりとのプライベートの時間を作りたいからという理由から活動休止を選択したのだ。


この内容は、5ヶ月くらい前かな。そのぐらいに描いたものなので、姉妹がモデル活動休止って、あーそんな事描いてたんだーと自分も覚えてなくてw

ごめんよ。復活させないとですねw

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