第32話 女子会
前もっていっておきます。女子会の経験ない人が書いてるので語弊があっても受け付けません・・・w
「う~んこれでいいかな。いや。こっちのほうがいいかも。よし!これでバッチリ!」
ひかりは身支度を整え、外出した。ひかりにとって今日は大切な一日でもあるのだ。
待ち合わせしていた場所には、すでにまりのと冬華がいた。今日はこの三人でお泊り会をするのだ。
「で、冬華の家でお泊りができるって言ったけど、家はここから近いの?」
「そうよ。10分もかからないから。」
徒歩7分で、冬華の家に着いた。
「あ、いらっしゃい。」
玄関で出迎えてくれたのは、冬華によく似た顔のきれいな男の人だった。
「ただいま。兄さん。」
「えっ?冬華って一人暮らししてるんじゃ・・・」
「そうだけど、兄は旅人なの。」
「旅人?」
職業がなんなのか把握できない。すると、冬華の兄から詳しく説明をしてくれた。
「僕は衣吹。世界中に足を踏み入れてそこに住んでいる人たちの暮らしや文化を取材してるディレクターをしているんだ。番組も抱えていてね。会社にこもって作業をするからなかなか家に顔を出しにこれなくてね。それなのに、久々に昨日電話をかけたら「友達がお泊りするから」って。友達なんて初めて聞いたからね。どんな子たちか気になって。」
どんな人なのか理解できたところで、女の子たちは冬華の部屋に移動した。もちろん衣吹には立ち入り禁止と念を押した。
「お兄さんとはいくつ離れてるの?」
「5つよ。」
「まだ若いんだね~無精ひげ生やしてたからもっといってるのかと。」
「まり、正直すぎるでしょ。」
「構わないわ。わたしも合うのは久しぶりだから・・・きっと剃る時間もないぐらい多忙なのよ・・・あ、さあ!荷物は置きっぱなしでもいいから。」
衣吹に見送られて、3人はデパートに向かった。その5分後。すぐに衣吹から冬華にメールが届いた。「楽しんでおいで!!友達と存分に楽しんでね。それじゃあまた今度。」
言葉は短いけれど、顔文字や絵文字がたくさんあったおかげで文字数が60文字以上もあった。
デパートで最初に向かったのは百均。飾り付けもして、部屋の中を華やかにしたいというまりのの案から、ここでパーティグッズなどを探した。
「ひかり。」
「何?」
ひかりを振り向かせると、そこには黒縁にひげが生えたメガネを付けたまりのがいて、ひかりはクスっと笑った。
「アハハハッへんなの~」
「それも買ったらいいんじゃない。ずっとかけててもいいと思うし。」
「冗談言わないでよ~」
百均を見終わり、そろそろ帰る時刻となった。
「予定通り!文句ないよね?生徒会長~」
「はいはい。まあ暗くならないうちに用が済んでよかったわ・・・あっハンカチをどこかに落としたわ。悪いけど、先に戻ってて。」
冬華は、再び店内に入っていった。
「とりあえず、戻ろうか。ひかり。」
「・・・大丈夫かな。一人で。わたしがさがっ・・・」
「大丈夫だよ~!!わたしたちが通ったところなんて、冬華は把握してるだろうし。それに、飾り付けも進めなきゃ。」
まりのはそう言って、なんとかひかりを“誘導”させることに成功した。
その頃冬華は、探すと言っていたハンカチをバックから取り出した。
「ごめんなさい。ひかり。」
実はこの作戦を思いついたのは、冬華なのだ。
事の出来事は、遡ること前日。ひかりには内緒で、まりのに呼び出された。
「なに?ひかりには黙って来てって・・・」
「エヘヘッ実は、明日はひかりの誕生日なの!もちろん、本人もわかってると思うんだけど、それでもお祝いしたいな~って、どう?冬華もサプライズ祝いやってみない?」
明日がひかりの誕生日だと初耳だった。
「いいと思うわ。すごく。」
冬華は喜んで参加を引き受けた。
「じゃあ、わたしの提案聴いて!えっと・・・」
「待って。その提案、わたしが考えてもいいかしら。」
「えっ!?ふっ冬華が・・・?いいけど・・・サプライズなんて考えたことあるの?」
普段はがり勉というか、ふざけることが苦手そうな冬華がさ往来図作戦を計画すると、自ら提案してきたのが意外すぎたが、生徒会長なだけあって、作戦をお昼休みまでに完成させたのだ。
計画その1 デパートでパーティグッズの購入。(ひかりも一緒に)
計画その2 私の家でまりのとひかりとで飾り付け。その間、わたしはうまく抜け出してバースデーケーキを購入する。
計画その3 家に着いたわたしからケーキをあげる。
これを読み終わると、まりのは首を傾げた。
「なんで冬華がケーキを渡すのよ。わたしがあげたかったのに・・・」
「ごめんなさい。でもわたしからあげさせて。後で事情を説明するから。」
ぶっちゃけ本番だが、成功を祈りつつ、冬華は目的のバースデーケーキを買い、お店を出た。
すると、黒い物体で足が長い物体が目の前をうろうろしていた。
人間には見えていない。それは、妖怪だけが見える相手だった。
「こんなときに・・・早く終わらせてもらうわ。」
冬華の周りで季節外れの雪が舞い、雪女の姿へと変化した。
「足が長いから“足長”ね。覚悟しなさい。」
雪女は足長と名付けた妖怪の足を、吹雪で凍らせ、その隙をついて、氷ごと砕けさせようとした瞬間、大きな腕のようなものに突き刺された。そして雪女はビルに身体を強く打たれた。
「くっ・・・なにが・・・っ!」
足長とは別の黒い物体は、手が長く、一回り身体が小さかった。
「まさか、仲間?・・・弱ったわ・・・」
雪女は身の危険よりも、ケーキのことが心配だった。ケーキはまだ無事でいる。
まりのはふと、妖気を感じた。
「(まさか・・・冬華に?)」
「まり?動き止まってるよ?」
「ああ、ごめん・・・あ!わたし・・・ふっ冬華を迎えに行ってくる!こっこんなに遅いしね!心配だよ~~」
嘘が思いつかず、本音でなんとか妖気を突き止めるための口実を訴えた。しかし、ひかりは
「そうだよね。やっぱりハンカチ見つかってないのかもしれないし。急いで!まり!」
口実を見事に真に受けて、急ぐよう勧めてきた。
安心して、飾り付けをひかりに頼んで、まりのは外に出た。ひとりで準備を進めるひかりに、まだ家にいて見かねた衣吹は、手伝いにやってきた。
「一人?手伝うよ。」
「ありがとうございます。」
「それにしても、可愛らしいね。」
「えっ??」
衣吹がひかりのことを見つめながら“可愛い”と呟いたため、思わずドキッとなってしまった。
「この飾り。今どきのパーティーグッズはかわいいね。」
「あ・・・そっそうですよね~~アハハッ」
とても純粋なひかりと衣吹は、もくもくと飾り付けを行った。
雪女はいつの間にか、氷で作られたタワーのてっぺんに、ケーキを保冷しておいた。その方が相手の視線を向けられないし、今の雪女にとっては“弱点”となる。
「だいぶ時間をかけてる・・・まりのもひかりも心配してるかもしれない・・・」
考え事をしていたせいで、背後からの攻撃に真っ向から受けてしまった。
地面に叩きつけられ、地上に身体がめり込んだ。
開けにくくなった瞳を、なんとか力を振り絞って開いてみると、そこには手が長い妖怪がケーキのあるタワーに手を伸ばしていたのだ。気づかれた。
「だめーーーーーーー!!!!!!!」
雪女は手を伸ばした。そこから少なからずの氷が散った。でもそれは届かない。
タワーは崩れ落ち、氷も粉々に砕けた。
言葉が出ない。もうすべてが台無しになってしまった。雪女は、ただ拳を強く握りしめるしかなかった。
すると、耳元で生き物の鳴き声が聞こえた。ゆっくりと顔をあげてみると。
「キュウ!」
「あなたは・・・もしかして・・・!」
白いイルカが、ケーキの箱を嘴に乗せている。
「イル!グットタイミング!!」
そこには座敷童子がいた。もちろん、白いイルカは式神イルだ。
「おまたせ!」
「ひかりは大丈夫なの?」
「もう!!そんなこと言ってる場合!!?今はここを早く片付けて、誕生日会。早くひかりを祝ってあげよう。」
「それもそうね!イル、ケーキをよろしくね。」
イルは様子をうかがうことになった。
「いくよ!トラ・・・ってえっ?」
トラを召喚しようとしたとき、なぜかイルが正面に立ったのだ。
「イッイル・・・???ケーキはどうしたの?」
イルは建物のわずかなでっぱりに、ケーキを乗せていた。
「いつのまに・・・やる気だね。イル。」
でも、座敷童子にはある悩みがあった。
様々な戦いをこれまでこなしてきたが、イルを使って戦ったことは一度もない。そもそも触れ合いやすくて心優しいイルがどのような戦いをするのか想像もつかない。
「とにかくわたしは信じるよ!行け!イル!!」
「キュウ!!!」
イルは素早い速さで手長足長の急所を打ち、それでも歯向かってくる敵の周りをぐるぐると周り、相手の目を回らせた。2匹はフラフラと足元をふらつかせていた。
「キュウキュウ!!」
“今だ!”という合図を貰ったような気がして、座敷童子は式神・トラを呼び出した。
「後はお願い!!トラ!!」
「ガル!」
トラは2つの前足を深く構え、安定した体制をとると、口から真っ赤な炎を繰り出した。
それに続いて、雪女も大きく空気を吸い、ゆっくりと息を吐くと、冷たい吹雪が小さな粒から大きな粒へと大きさを変えた。
2つの技は混ざり合い、より一層威力を発揮させた。
一気に敵を倒し、元の姿に戻ったまりのと冬華は、急いで戻った。その途中、あることに気づいた。
「あ!ケーキ!!」
「あ!」
2人は家に向かいながら、まりのは再びイルを呼び出し、ケーキを取りに行かせた。
無事にケーキを持ったイルと合流し、息を整えてドアを開けた。
「「ただいま~~!!」」
「お~~~~~~そ~~~~~~い!!!!!!!!!!!!!二人とも遅すぎるよ!!どんだけ心配したと思ってるの!!」
「ごめん・・・ひかり。」
「ごめんなさい。遅くなって。」
「もう!!こっちの準備は終わったよ。さあ、始めようよ!!」
やっと始まった女子会。かわいい飾りつけはみんなで購入したもので。料理は得意なひかりと衣吹も少し手を加えたらしい。
「そういえば兄さんはもう帰ったの?」
「そうそう!冬華ちゃんに手紙を預かったの。」
ひかりに手渡された衣吹の手紙を読んでみると。
“冬華へ
女子会、楽しんでね~こんなに友達と過ごすのは初めてなんじゃない?よかったね。邪魔しちゃ悪いから、お兄ちゃんは帰るよ。休みが取れたらまた帰ってくるから。それじゃあ素敵な夜を過ごしてください。 衣吹”
気を使わせたように思える内容だが、ああみえて仕事が忙しいことは冬華も承知していたので、とても兄らしいと思った。
「さて!ケーキ食べようよ!どこにあるの?うわっ・・・」
ケーキを楽しみにしているひかり。なぜかあたりを暗くしたまりのと冬華。そして、歌を歌った。
「「ハッピバースデートゥーユー ハッピバースデートゥーユー ハッピバースデーディアひかり~~ハッピバースデートゥーユー」」
「えっ!?」
「「おめでとう!!ひかり!!」」
冬華の持つケーキは、ひかりの目の前に置かれ、少しためらいながらもひかりはロウソクの火を消した。
「・・・サプライズ?」
「そうだよ!今日誕生日だってわかってたんだから~」
「おめでとう。ひかり。」
「ふぇ・・・ありがとう~~~嬉しい!!すごくうれしいよ!!」
うれし泣きをこぼしたせいで、食べたときに少ししょっぱさを感じたひかり。でも無事にサプライズを成功させることができた。
そして、まりのは気にかかっていたことを聞いてみた。
「ねえ冬華。もう教えてくれてもいいんじゃない?なんで冬華がケーキをあげたかったのか。」
初耳だったひかりも、気になって目を見開いた。
「・・・実は、入学して間もないころに、ひかりと一度会って話してるの。」
「「ええ!??」」
それは、入学してまだ1か月経っていない頃のことだった。
周りの視線は氷より冷たくて、先生に頼まれていたプリントを運ぶのが苦難だというのに誰にも「手を貸して」とは言えない自分。
俯いたまま歩いていると足に躓いてしまい、プリントが宙に舞いあげり、床に広がってしまった。
「(もう、こんなこと・・・こんな情けない自分がっ・・・)」
「大丈夫?手伝うよ!」
“自分が嫌い”だと思う前に、そっとその手を差し伸べてくれたのが、ひかりだった。
「今のわたしにとっては、何気ない出来事のように思えるけれど、あの時はひかりの優しさがどれだけ嬉しかったか。」
「だからひかりに感謝の気持ちを言いたくて、ケーキを渡したかったわけか。」
「そうだったんだね。でもごめん。わたし・・・覚えてない・・・」
「いいの。もう過去のことだから。でも、やっと気が晴れたかも。」
女子会は、ただのパジャマパーティーではない。ふとした会話から、友達の暖かさや過去の話をよみがえらせる、室内井戸端会議なのだ。
この話を機会に、ひかりの誕生日を本日7/2にしたいと思います。




