第22話 雪女の告白
明けましておめでとうございますw
今年初の投稿です。
昨夜、瞬熄のスマホにメールが一通届いた。それは冬華から。内容には「別れましょう」という単語が書かれていた。
今日は月曜の朝。毎度のことながら、瞬熄は爆睡していた。周りには妖怪たちが何とか起こそうと努力していた。
「若様ーー??」
「もう諦めましょ。冬華様がくるのを待とう。みんな。」
「そうだな。冬華様が来ればすぐに目覚めるしな。」
妖怪たちが静かになると、廊下を走ってくる足音が聞こえた。
「大変よ!冬華ちゃんが来ないのよ。いつもならもう来てもいいころなのに・・・」
「えええっ!!!いけない!どうなされたのやら!!」
「落ち着け!この際我らで!」
妖怪たちは眠っている瞬熄の身体を起こし、制服に着替えさせ、ご飯を食べさせ、洗顔と歯磨きを済ませた。靴を履くときには、瞬熄も目を覚ましていた。
「・・・いってきます。」
「いってらっしゃいませ!若様!!」
「いってらっしゃい。瞬熄。」
月曜日に一人で登校するのは冬華と付き合う前以来だ。他の曜日の日は、自力で起きれるため冬華が迎えに来てくれる必要がない。だから普段は、当たり前の時間に登校しているのに、なんか足りない。
学校に着いた時には、もう指定の時間は過ぎていた。 先生が出席をとっていると教室のドアが開いて、瞬熄が入ってきた。
「奴良!遅刻だぞ。」
「・・・すいません。」
「早く座りなさい。山吹・・・ん?山吹?」
みんなが冬華の席を見た。冬華の姿がなかった。
「おい。誰か山吹見てないのか?」
誰も答えなかった。
「初めての欠席だな・・・」
先生の出席簿には、冬華のところに“欠”と書かれた。
ホームルームが終わった後。まりのたちが声をかけた。
「どうしたの瞬熄。今日月曜だよ?一人で来るなんて・・・」
「ずっと冬華ちゃんと登校してたから遅刻なんて珍しいね。」
「それに、生徒会長が欠席なんてかなり珍しいよ。無遅刻無欠席なのに。何かあったんだな。」
「・・・」
瞬熄は何を言われても俯いていた。
新聞配達を終えて、家に帰宅した数斗は朝食の目玉焼きを作った。
「いただきます。あれ?醤油がない。切らしたか・・・じゃあ塩コショウ・・・これもカラかよ。んー仕方がない。ソースで。」
やっとあったソースで味付けをして食べたが、あまりにも調味料が無いので買いに行くことにした。
「じゃあ、留守番頼むわ。」
ぬりかべに伝えると不満げな態度で見つめてきた。
「・・・近頃空き巣が多いみたいなんだ。家のこと、任せたぞ。」
「そういうことなら任せろ!」
ぬりかべに家の留守番を任されたぬりかべ。実は空き巣の事は冗談で言ったことだった。
空き巣の被害が無いというわけではないが、数斗の近所で起きたという話は聞いていない。しかし、ぬりかべは空き巣の事を本気にしていた。
ここ最近、新しく建てられたコンビニで調味料を見ていた。
「コンビニだと高いよなーでもスーパーまで行くの面倒だし。必要なもんだけ選ぶか。」
何を買うかで考え込んでいると、隣から手が伸びてきて、調味料を買ってレジに行った女の子がいた。よく見てみると冬華だった。
数斗はふと考えた。今日は平日だから、学校に行くはずだと。
適当に調味料を買って、数斗は冬華を引きとめた。
「よお冬華。」
「・・・数斗さん。」
「名前覚えてたんだ。会長がサボりか?」
とりあえず訳を聴こうと、誰もいない公園のベンチに座った。
「飲むか?」
数斗はお茶を手渡した。
「ありがとうございます。」
「で?どうしたんだ?」
「・・・瞬熄に、別れようといいました。」
「ふーん。そっか。」
「・・・フフッ。反応軽いですね。」
「まあな。あいつが付き合って別れたって話は、度々聞いてたから。でも別れ話を聞いたのは2年ぶりだな。お前と付き合ってる間、誰とも股かけてないらしいし。」
「普通のことなんじゃないですか?付き合っている人がいるなら、他の人とは付き合わないって。」
「そうじゃない男もいるのさ。二股とかってあるだろ。付き合えって言われれば断れない性格で。相手を傷つけることだけど、今まで冬華の事を想って、付き合ってきたんだろうよ。じゃなかったらこんなに続いてねえよ。」
「えっ?」
「冬華が別れるって切り上げなかったら、ずっと一緒にいただろうな。」
冬華は、自分が思っていたよりも、瞬熄がどれだけ自分の事を想っていたのかを数斗の口から聞いたのだ。そして瞬熄になら素直に言えると。
「まあ、あいつになら嫌いって言ってやっても・・・」
「わたし、もう一度瞬熄と話をしてみます!それに、別れたいと思った訳じゃなくて、些細なことでわたしが怒ってただけなんです。だから、大切にしてくれている彼と仲直りしないと。」
「・・・そうか。でもその前に学校に行けよ。あいつのことだから、お前が一生の傷跡を残しちまったら、引きずると思うから。」
数斗のいう“一生の傷跡”とは、おそらく冬華の皆勤だろう。
「はい。」
冬華は支度をして、学校に通った。
教室は今受けている授業が終われば昼休みだ。だからどこからか腹が鳴る音が聞こえてくる。
こらえている生徒の顔が浮かぶ。授業と言っても、先生が目の前にいる自習なのだ。みんな心を揃えて叫ぶ。
「(誰か・・・来てくれ!!!!)」
その時だ。ガラッとドアが開き、冬華が入ってきた。
「先生、遅れてしまって、すみませんでした!」
頭を下げ上に上げると、冬華にみんな抱き着いた。
「会長!!!!」
「来てくれた!!」
「よかった!!!!」
「・・・っ・・・みんな。」
みんなに歓迎され、嬉しさを噛みしめた冬華。
「いや~これで腹の虫もおさまったぜ!なあ?」
「おお!誰か来てくれねえかなって思ってたんだ!!」
お腹が鳴るのを抑えるために必要なことを行っただけで、祝福されていると知った冬華は問答無用で注意した。
「みんな、ちゃんと集中しなさい!!!!!!」
授業が終わり、待ちに待った昼休み。
「冬華、一緒に食べようぜ。」
瞬熄がお昼に誘ったが、冬華は無視してまりのたちのところに移動してしまった。そして教室を出ていった。
「あっ・・・」
「どんまい。瞬熄。」
小十郎は慰めてあげた。
女子たちがお昼を食べる場所は、屋上だった。
「実は、お昼持ってきてないの。」
「それなら、ミートボールあげるよ。はいあーん。」
「・・・うん。美味しい。」
ひかりは冬華にミートボールをあげた。
「じゃあわたしはウインナーを。あーん。」
「・・・美味しい。ありがとう。」
冬華にウインナーをあげたのはまりの。
「弁当忘れたこと、瞬熄に言えなくて一緒に食べなかったんだ?」
そう思ったまりのに、冬華は別れ話を言うよりはいいと思い、話に乗ってしまった。
「うん。そうなの・・・ごめんね。」
「いいよ。時にはわたしたちを頼ってね!生徒会長だからって、一人で背負い込むことなんて無いんだから。」
「ひかり・・・」
「そうそう!わたしたち、友達でしょ!」
「まりの・・・」
冬華のごめんねは、嘘をついてのごめん。そのことに2人は知るよしもない。
冬華はみんなには内緒で職員室に向かった。そして家庭科の先生にお願いをした。
放課後。一人家庭科室へ移動し、そこでスイーツ作りを始めた。
瞬熄は、小十郎と帰り道を歩いていた。
「せっかく冬華が学校に来たのに、結局一言も話せなかったなんて・・・はあ・・・」
「別れたのなら、けじめをつけなきゃ。もう一度やり直すのか。それとも諦めるのか。」
「小十郎は感が鋭いな。」
誰にも言っていない瞬熄の出来事を、小十郎はわかっていた。そして事情を説明した。
「・・・俺が悪いんだ。だけど、冬華に話しかけようとしたけど、全然足を止めてくれなくてさ・・・」
「確かに、タイミングがつかめないよね。あの様子だと。」
「小十郎!!お前の力でどうにかさ~」
「都合のいいこと言うな。それは願いじゃなくて要望だろ?」
「ん~~~小十郎のケチ!(ん?でも俺がそうなら・・・冬華も・・・はっお互い欲求不満ってことか!??)」
「出来た!」
失敗することなく、無事に完成した冬華。時刻は6時前だった。
「時間も予定通り。瞬熄に届けに行こう。」
冬華は瞬熄の家に向かった。
「あら。冬華ちゃん!入って入って!瞬熄なら自分の部屋にいるわ!!」
瞬熄のお母さんは、朝来なかったことを気にしていたらしく、冬華が訪ねてきたことを嬉しそうに家に上げた。そして用件も聞かずに瞬熄のいる部屋に、言わずとも案内してくれた。
「じゃあね!ごゆっくり!」
瞬熄は言葉も出ないくらい驚いていたが、冬華も同じだった。
「フフッ・・・あははははっさすが母さん。素早いなー。」
「・・・」
冬華は笑えなかった。
「ごめんな。この前・・・あの場に置いて行っちまって。ホントごめん!」
瞬熄は床に手を付いて土下座をし、深々と頭を下げて詫びた。
「瞬熄!そんなに謝られても・・・」
「わりい。けど、あの後メールが来て、お前から別れようって来てさ。文章で返すより直接謝りたかったし、話したかったし・・・とにかく!!冬華の面と向かって話がしたかったんだ!なのに、冬華は俺の事避けてるし。」
「・・・」
「なあ、なんか言ってくれよ!!」
冬華は一言も発さずにいたのだが、このままではいけないと決心した。そしてどうすればいいのか分からなくなりつつ、持っていた箱を瞬熄の胸に受け渡したのだ。中を開けてみるとケーキだった。
そして、ケーキにはメッセージが刻まれたチョコが飾ってあった。
「“しゅんそく、わたしはあなたが好きです”えっ?」
チョコペンで書かれた予想もしていなかった告白に、耳を疑った。そして冬華は部屋から飛び出していった。
「ちょっ待てよ!!冬華!!」
2人の様子を密かに見ていた妖怪たちと、瞬熄のお母さんも驚いた。
玄関を出ると瞬熄が冬華の腕を掴んだ。
「はあ・・・はあ・・・冬華、直球過ぎてわからねえよ・・・俺のどこが好きとか、教えてくれよ・・・」
冬華も息切れをしていたが、それ以外何も言ってはくれなかった。ムキになった瞬熄は、冬華の腕を引っ張って後ろから抱きしめた。
「しゅっしゅっ・・・」
冬華は、息切れのせいで心臓がバクバクしているのか、瞬熄に抱きしめられているせいで心臓がドキドキしているのかがわからなかった。
「待つよ。俺がお前と面と向かって話したかったように、お前にだってきっと俺に言いたいことがあるんだろうなって。俺はいつまでも待つから・・・」
少し吐息交じりの声に、冬華は心臓が破裂しそうだった。
瞬熄の腕が緩むと、冬華は瞬熄から離れていった。すると、妖怪が瞬熄に尋ねた。
「玄関を出たときから、息切れ止まってましたよね?若様。なんで吐息交じりに?」
「やかましいわ!!」
瞬熄は恥ずかしさに、鼻を掻いた。
それは冬華も同じだった。
「はあ・・・心臓が・・・まだ・・・」
冬華の心臓はバクバクだった。そして、涙が出てきた。
「ふっ・・・ううっ・・・瞬熄・・・」
その時だ。雑魚妖怪たちが妖怪の匂いを嗅ぎつけてきた。
「オオーウマソウナニオイガスルナ・・・」
「スコシハホネノアルヤツダ。」
「ドコダ・・・?・・・ア、アソコニイタゼ」
「「「ヘヘヘヘヘヘヘヘッ」」」
3人の雑魚妖怪たちが冬華のところへやってきた。
「ナンダニンゲンジャネエカ。」
「デモコイツカラ、ヨウカイノニオイガスルンダ。」
「ツゴウガイイジャナイカ。ニンゲンヲクエルンダカラナ。オイニンゲンノオンナ、オレタチトコイ。」
「っ・・・!きゃあああああ!!!」
雑魚妖怪たちは冬華を連れ去ってしまった。冬華の悲鳴が聞こえた瞬熄は、声のしたところまで駆けた。ところが、どこにも冬華の姿はない。空耳だったのかと思ったが、証拠があった。冬華の靴があったのだ。
「・・・冬華っ!!」
瞬熄はぬらりひょんと化し、冬華を連れ去った妖怪を探し回った。
雑魚妖怪たちは、冬華を人気のないところへ運んだ。
「サテ、コイツヲドオスルカナ。」
「クッチマオウゼ。」
「ソウダナ。」
雑魚妖怪たちは、冬華に手を伸ばした。すると、冬華から冷たい風が吹き荒れたのだ。
「ウウッサムイ・・・」
「ナンダコノサムサ。」
「アレ、ニンゲンノオンナガイナイ・・・」
「わたしは、人間ではないわ。」
雑魚妖怪たちの後ろには、白い着物を羽織り、色白の妖怪がいた。
「マサカ、サッキノオンナカ・・・?」
「そう、わたしは雪女。これ以上悪さはさせないわよ。ふぅー・・・」
雪女は白い息を吐くと、二匹の雑魚妖怪たちを凍らせた。氷漬けになった雑魚妖怪たちはそのまま粉々になって形が残ることなく消えてしまった。 残りの一匹が隙を見て逃げようとしていたが、壊れた氷の破片を音を立てて踏んでしまい、雪女は再び白い息を吐き、氷漬けにさせた。
雪女は元の姿に戻ろうとすると、ぬらりひょんが現れた。
「てめえか。俺の女を誘拐したのは。」
それにこたえる雪女はぬらりひょんに背中を見せて話した。
「さあ、誰の事?」
「力ずくで聞き出さねえとだめな相手のようだな。」
ぬらりひょんは雪女の目の前に現れ、剣を奮う。
雪女は背中を向けていたはず。ぬらりひょんが正面からかかってきたことに驚いた。
「俺は相手を背中から切るような卑怯者じゃねえ。真正面から・・・」
肩幅が見えるほど開いた襟元に真っ白な着物を身に纏い、涼しげな表情をしていた雪女の顔を除き混むと、ぬらりひょんは冬華を誘拐したはずの妖怪に少し心がときめいてしまった。麗しく、可憐な姿だったからだ。
「とっともかくだ。正々堂々戦う主義なんだよ。」
ぬらりひょんのやり方に、雪女は冷静に対処した。
「あなたのやり方は正しいわ。だけどそんな余裕をかましていては、守れるものなんて守れないわ!」
すると、雪女の周りから冷たい雪が巻き起こり、ぬらりひょんの気が緩んでいる間に体を硬直させた。
「・・・もう、会うことはないわ。」
雪女は姿を消した。
気がつけば毛布を羽織ってうずくまる自分いた。
「ヘックシ!!」
「風邪引いたんじゃねえか?」
「・・・多分。」
「それにしてもよかったな。からすなが通りがからなかったら、凍死してたんだぞ?」
瞬熄は自分の家にいて、数斗に看病されていた。
「そうだったんですね。ありがとな。からすな。」
外で見ていたからすなに礼を言った。からすなもコクンと相槌を打った。
感謝を伝え終わると、瞬熄に何があったのか本題に入った。
「・・・という訳です。でもなんか・・・あの妖怪、妙に胸が苦しくなる。」
「・・・瞬熄、ついに浮気か。」
昼間、せっかく冬華に一途だと告げた矢先、瞬熄が妖怪に恋をすることになるとは数斗も予想外だった。
「そんなわけっ・・・じゃあ・・・」
言葉を詰まらせた。あの妖怪の姿を思い浮かべたら心臓がバクバクと跳ね上がる。
浮気かもしれないけれど、このままでは気持ちがすっきりしない。真実を知りたい瞬熄はある行動に出た。
「数斗さん、手を貸してください。」
━━━━━からすなと一緒に、俺がいた場所に姿を現してほしいんです。多分あの妖怪が来ると思うのでそこで決着をつけますから。
からすなの案内で瞬熄がいた場所に待機していると、予言通り妖怪がやってきた。
「また妖怪。悪さをしようっていうの?」
「生憎だが、俺は劣りだ。」
「劣り?」
「相手は、他にいる。」
烏天狗は羽を散らせて舞い上がった。代わりに後ろに立ったのはぬらりひょんだった。
「あなた・・・まだ生きてたの・・・」
「あんなんで死ぬか。それよりも、お前は何者なんだよ・・・昨日初めて会ったはずなのに、お前のことが頭から離れなくて・・・」
「わっわたしは・・・っ・・・」
雪女は不安だった。今自分の目の前にいるのが、瞬熄な気がして、自分が冬華だと言ったら嫌われるのではないだろうかと。決して瞬熄のことを嫌いになった訳ではなく、ただ冬華に気を使って、他の子と付き合うことを我慢しているのではないかと。
「(どう思われたって、わたしが瞬熄の事を愛しているのに変わりはないわ。たとえ嫌われたとしても、今まで通りの友人としての関係を作っていくことができたらと、わたしは覚悟を決めてるわ。)わたしは・・・冬華よ・・・瞬熄っ!」
涙が出てきたと同時に、思わず瞬熄の名前を呟いてしまった雪女は自分でも驚き、口を手のひらで防いだ。
「やだっ瞬熄のなまっ・・・うあっ!」
目の前が真っ暗になった。冬華はすぐわからなかったけれど、この時ぬらりひょんに抱きしめられていた。
「よかった・・・本当に、お前・・・冬華なのか?」
「・・・っ・・・そうよ。」
「そっか。俺も瞬熄だよ・・・お前の彼氏の。」
「・・・わたし・・・この姿を・・・貴方に見られたくなくて。妖怪になれることだって・・・隠してたの・・・けど・・・今は平気・・・だって、瞬熄、貴方にこうして言えたことが・・・わたしっとっても嬉しい・・・」
「冬華・・・!」
互いに元の姿に戻り、瞬熄から冬華の頭に近づいた。 額を合わせたまま声を発する。
「キス・・・してもいいか?」
迷うことなく答える。
「ええ・・・好きよ。瞬熄。」
「俺も。愛してるよ。」
瞬熄は優しく冬華に口づけをした。一度受け止めたが、すぐに正気に戻った冬華は顔を真っ赤にして恥ずかしがった。その表情をみた瞬熄も顔を赤らめた。




