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僕の平凡な日常 なんちゃって。  作者: 絹川クーヘン
21/58

第21話 からすなはお父さん?

カラスのからすなのお話です。


 夏も終わり、秋が近づく時期。冷え込む日が増えてきた。

数斗の家でも、寒さ対策をしていた。ぷちぷちを窓に張って、熱を保つよう対策をしていた。

「そんなんで、あったかくなるのか?」

「さあな。なんでも、こうすると冷気が入ってこないとか。」

「ふ~ん。」

「これでよしっと。ああしまった。ここに張ると、からすなが入れなくなるな・・・そういや最近来ないな。」

「確かに。オイラも見てない。」

からすなはここしばらく、数斗のところに顔を出しに来ていない。

「ずっと疑問に思ってたんだけど、からすなはどこに住んでるんだ?」

「知らねえ。てかカラス自体、どこに住み着くのか。」

「だよなーじゃあ探そうぜ!散歩ついでに!」

「嫌だ。寒いのに外に出たくねえよ。」

「なんだよ!!最近連れねえな!!いいよ。オイラ一人で探す!」

そう言って、ぬりかべは出ていってしまった。

「短気だな・・・あいつ。」



 晴れた天気。いつも数斗の肩に乗っているせいで、民家が大きく見える。

「さて。どこに行こうかな。」

思いついたのは、瞬熄の家だった。

「瞬熄~~」

返事がない。

少し間が空いてから、瞬熄のお母さんが出てきた。でもぬりかべの姿が見えないので、そのまま行ってしまった。

「あれ~~?ぬりかべ?」

「おおっ!久しぶりだなー」

そこへ前に瞬熄の家にお世話になった時に遊んだ妖怪がやってきた。

「久しぶりだな。瞬熄いるか?」

「いいや。今日は居ないですぜ~?」

「本日は冬華様とデートでしてーー」

「そっか・・・なあからすな見かけてないか?」

「見てないですー」

「何かあったんで?」

「いや。見てないならいいんだ。じゃあまたな!」

ぬりかべは瞬熄の家を後にした。

 次に向かったのはヤイバの家。

「おーいとびつきーー」

「誰だ!!」

「ぬりかべだよー!」

「なんだぬりかべか。」

「どうしたんだよそんなに怒って。」

「いいや。これが普通なんだ・・・」

「ああ。それは悪かった。」

「まあ気にしてねえさ。ほら飲めよ。お茶の代わりだ。」

ヤイバはそういうと、牛乳を皿に用意した。

「ワン!ってオイラは犬じゃない!!」

「そうか。じゃあ俺が飲むわ。」

ヤイバは自分で注いだ牛乳を自分で飲んだ。

「で、何か用か?」

「その、からすな見てないか?最近家に来なくて。」

「悪いが俺も見てない。」

「そうか。オイラはもう行くよ。」

「おう、気をつけてな!見つかるといいな。からすな。」

「おお。」

 ヤイバのマンションを出ると、ぬりかべは再び捜し歩いた。

「んーーどこだ?あっ・・・」

すると、空に黒い鳥が一羽飛んでいた。

「まさか、からすな?おーい!!からすな!!!」

呼んではみたものの、距離があるせいで聞こえていない。鳥はゆっくりと飛んでいった。ぬりかべは必死で追いかけた。

 しばらく追いかけたのだが、だんだん首が疲れてきて、下を向いて歩いているといつの間にか見失っていた。

「あれ?どこだ?あと、ここもどこだ!??どうしよう・・・オイラ、迷った!?」

知らない商店街に入ってしまった。



 その頃数斗は。ぬりかべとからすなを見つけるべく、辺りを散策していた。

「ぬりかべどこまで探しに行ったんだか。からすなのことだ、近くにいるだろう。」

歩いていると、カラスの鳴き声が聞こえてきた。

「ほらいた・・・でもカラスと話してるな。」

民家の屋根に止まり、メスのカラスと会話しているからすなを見つけた。しかし、邪魔になるといけないと思い、数斗は話しかけなかったが、通り過ぎようとしたときに不思議な会話を耳にした。

「・・・もう平気か?」

「うん。あれからこの子の事も手を出さなくなったし。」

「そうか。お腹の子も元気に生まれてくるといいな。」

「・・・うん。」

からすな以外にメスのカラスと幼いカラスがいた。

その会話の流れから、数斗は思った。

「(あいつ、父親だったのか??知らなかった。)」

数斗は幸せそうに笑っているからすなを見て、数斗は一言も言わずにその場を後にした。



 商店街を彷徨っているぬりかべ。

「うう・・・ここはどこだ?からすな~~!!」

 ぬりかべが歩く反対方向の道にはカップルが歩いていた。

「うめえ~~~」

「ほんと。喉が潤うわ。」

「やっぱ寒くなってきたときにアイスっていいよな~」

仲良くソフトクリームを頬張っていたのは、瞬熄と冬華だった。すると、目の前にぬりかべがいることに気付いた。

「ぬりかべ!?」

「えっ?“ぬりかべ”」

ぬりかべの正体が見えないし、ぬりかべのことを知らない冬華が隣にいるにもかかわらず、普通に呼んでしまったことを何とか誤魔化そうとした。

「ああっえっとあれ!“ぬりい缶ジュース"が飲みたいなーって。」

「そんな缶ジュースあるの?」

「ちょっちょっと待っててくれよ!冬華!」

「えっ??ここで??」

瞬熄はそういうと、すぐに転ぶふりをしてぬりかべを拾い上げた。しかし、冬華には瞬熄がただ転んだだけに見えたので、不安に思った。

 路地裏に移動した瞬熄は、ぬりかべを地面に置き、事情を聴いた。

「お前なんでここに?数斗さんは一緒じゃないのか?」

「それが、からすなを追いかけてたら道に迷っちまって・・・」

「なるほどね。」

すると、瞬熄のスマホが鳴った。

「もしもし?数斗さん・・・ぬりかべなら今一緒ですよ?・・・はいわかりました。伝えておきます。」

「数斗からか?」

「ああ。からすなが見つかったそうだ。だから帰って来いってさ。」

「そうか。よかったー」

「じゃあ、帰り道教えてやるから付いて来いよ。」

「ありがとな瞬熄!」

瞬熄はそのままぬりかべを送っていった。

 「サンキュー瞬熄。」

「いえいえ。ぬりかべも、無事に帰ってこれて良かったな。」

「わざわざごめんな瞬熄。冬華を置いてきてまで送ってもらって。」

「えっ?ああーーーーっ!!!やべえ、冬華のこと忘れてた!!」

瞬熄は妖怪の力を使って、冬華が待ってくれている商店街まで駆けた。

 目的の場所へ着くと、どこを探しても冬華の姿は見当たらなかった。冬華は寒い中待っていても、人混みが少なくなってきたため仕方がなく家に帰ってしまったのだ。

「俺は・・・なんてバカなことを・・・」



 数斗の家の中では、賑やかにテレビが付いていた。

「そうだ!からすなは??」

「ああ。そのことだけど、もうあいつは帰ってこねえよ。」

「帰らないって・・・」

ぬりかべには意味が分からず、ただ驚いていると、そこへ丁度いいタイミングでからすながやってきた。

「「えっ??からすな!?」」

「2人ともそんな驚いて何かあったのか?・・・ああ近頃顔を見せてなかったからな。心配をかけてすまない。」

「いいやじゃなくて!お前、父親なんだろ?一緒にいなくていいのか?」

「ん?何の話だ?」

からすなは首を傾げた。

「その・・・お前がメスのカラスと会話してるのを耳にして・・・」

「それで私が父親になったと。それは誤解だ。彼女には付き合っている男性と出来た子供がいる。彼女の不倫相手にそのことがばれて命を狙われていると相談をされてな。それでしばらくの間様子を探っていたんだ。事は無事に解決したがな。」

「なっなんだ・・・」

「数斗!!おどかすなよ!!!」

数斗は勘違いをしていたのだった。

「それにしても、“カラスの住処”ってどこにあるんだ?」

「住処なんてものはない。ただ落ち着きたい場所に住むだけさ。」

からすなにはまだまだ知らないことがたくさんあると知った二人。そんな彼の日常を少し確かめることができた一日は時が過ぎていった。


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