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僕の平凡な日常 なんちゃって。  作者: 絹川クーヘン
19/58

第19話 狼男と少女と

 ひかりは自炊していた。それも慣れない手つきで。

「・・・よし!できた!」

作ったのは数斗から教えてもらった大根と油揚げの煮物。

ひかりは料理が得意だが、洋食が得意なだけで他の料理は全く作れなかったのだ。

そこで数斗に話を持ちかけると、栄養バランスを考えたオリジナルレシピを教えてもらっていたのだ。

試しに味見をしてみると      

「・・・あっおいしい!!数斗さんに教えてもらった分量で、丁度いい。教えてもらってよかった!そうだ!数斗さんにも味見してもらおうかな。」

ひかりは小さいタッパーに煮物を詰めて、隣の家に持って行った。

「こんにちは数斗さん!いま、煮物を作ったんですけど・・・」

「ああ?なんだ?女か?」

 数斗には、勝手にドアを開けて入ってもいいといわれていたため、玄関を開けてそこから用事を言葉にしたのだが、玄関にはすでにお邪魔している人がいた。それは、ヤイバだった。

「あっ・・・っ・・・」

ひかりは見た目がいかついヤイバと視線が一致してしまい、目をそらすことができず声も発することができなかった。

「その声は、ひかりか?あ・・・悪い。」

ひかりの顔は、まるでホラー映画を見た跡のような顔をしていたので、数斗はすぐにヤイバを部屋に連れ戻した。

「アハハハハッ俺が数斗ん家に押しかけたと思ったのか。アハハハハッ」

「だっだって・・・」

「まあ確かに、この顔でそう言われるのは慣れてっから、落ち込みはしねえけど。でも安心してくれ。とって食いはしねえよ。」

「ひいっ!!!!!」

「おいヤイバ、冗談やめとけ。怖がってるだろ。」

「アハハハッ悪りい。それにしても、お前がこんな年下と親しいなんてな。」

「きっかけは瞬熄だからな。あいつの友達繋がりで、親しくなったんだ。」

「はい。ああ自己紹介してませんでしたね。わたし、前野ひかりです。えっと・・・ヤイバさん?」

「やめろよ。ヤイバ“さん”なんて。呼び捨てでも構わねえよ。あ、それかさ、“とびつき”って呼んでくれよ。瞬熄が付けた俺のあだ名だ。」

「じゃあ・・・とっ・・・ヤイバさんで。」

優しい人柄なのはわかっているのだが、ひかりは見た目とのギャップに軽く呼ぶことができなかったのだ。

「まあいいか・・・そうだ!せっかく3人いるんだし。俺の買い物に付き合ってくれ。」

「ん?買い物なら3人もいらないんじゃないか?」

「十分だよ!ほら行こうぜ!」

 着いた先はスーパー。なぜかというと

「今日は肉とトイレットペーパーの激安価格で販売してんだ!それを買い占めるってわけだ!一人一個だから、味方の人数が多いほど有利だってことだな!」

ヤイバは人数が増えて嬉しそうだが、味方であるはずの2人はなぜか他人であるかのように、目を合わせないようにしていた。

「どっどうした?数斗、ひかり。」

「悪いなヤイバ。肉は俺も欲しいんでな。」

財布を片手に、数斗は敵意を剥き出した。

「はあ!??おい!裏切るのか!!」

「ごめんなさい。ヤイバさん。わたしも、トイレットペーパーは補充しておきたいので貰います!」

ひかりも財布を両手で握りしめた。

「ひかりまで!??・・・そういやみんな一人暮らしだった。生活のために安いのに目が無いのは同じだよな。いいぜ。だったら、変装名人と言われた俺自身で、最高2つずつゲットしてやらあ!!!!」

 そして、ひかりは無事にトイレットペーパーを。数斗は肉を。そしてヤイバは。

「お客様、先ほど一つずつお買いあげなさいましたよね?」

「ギギギギクッ!!!」

2つ目に手にしていた肉とトイレットペーパーを没収され、結果目的の商品を一つずつ買い占めたのだった。

 「二人の裏切者!!!」

「買うもの次第で、人って変わるもんだ。ヤイバ。」

「んだと~!!!」

ヤイバの怒りを、さらりと横に流す数斗たちを見て、ひかりは笑いが絶えなかった。

「あ、ゲーセンあるぜ!ゲーセン!!」

「やった!ゲーセン!」

ひかりも嬉しそうに、ゲーセンに入って行った。

「ああ!!!これこれ!!MR400!!」

「バイクのフィギュアですか?」

「そう!免許持ってるからバイク欲しいけど、買えないんだよ・・・」

「そうなんですか・・・」

「だから、せめてバイクフィギュアでも買って、それを眺めながら・・・妄想に浸ろうかなってな!ぶっ放すエンジン音が響いて、そこに夕日が映える道のりで、俺はバイクで走り出す・・・」

「(ここで妄想に浸るのやめろ。)」

数斗は、ヤイバには言わなかったが、密かに思っていた。同じく妄想を聞いていたひかりは、数斗とは真逆だった。

「素敵な将来じゃないですか!ヤイバさんがバイクに乗る姿、きっと様になってると思います!!その夢、わたしにも協力させてください!」

「えっ・・・」

ヤイバはもしかしてと思った。ひかりはそういうと、財布からお金を出しUFOキャッチャーをスタートさせた。

ボタンで操作していく。すると、箱に入った景品が少し動いた。でも取れなかった。

「んー」

ひかりは再びお金を入れた。そばで見ている数斗とヤイバも思わず息を止めて見守っていた。

今度は景品が落とし口のすぐ手前まで来たが、それでも落ちなかった。ここで悔しさを呟くのがよくあることだが、ひかりは無言のままお金を入れた。

「ひかり・・・もう十分だ。」

ヤイバはひかりの腕を軽く掴んだ。

「はっ・・・」

集中力が途切れたせいで、動かしている途中でボタンを離してしまった。そのままアームは下がっていくと、箱の端にぶつかっただけで、ガコンと落ちた。

「取ったーーーーーーーー!!!!」

「おお!!!!サンキュー!!ひかり~~」

「きゃあっヤっ、ヤイバさん!?」

喜びのあまり、ヤイバはひかりに抱きついてしまった。びっくりしてひかりは固まってしまったが、数斗が気をきかせてヤイバをひかりから離した。

「お前は人目ってのを気にしないのか?」

ヤイバが周りを見ると、人々がこちらを見ていた。まるで、不審者を見たかのように。

「しまった・・・俺としたことが・・・」

人々の目に晒されると、胸が少し痛み出したヤイバ。ところが、数斗がツッコミを入れたのだ。

「・・・たく、それだから“とびつき”って言われるんだよ。すぐ飛びつくんだからな。早く帰るぞ。」

再び周りを見てみると、人々が「なーんだ」という表情に変わっていた。

「ヤイバさん。行きましょ。」

ひかりも優しく微笑み、ヤイバは駆け足で2人を追いかけた。



「もう日が暮れちまったな。でも、一人暮らしメンバーだから家の心配とか無いから楽だ。」

「そうですね。わたし、今日とっても楽しかったです!」

「俺もだ。ひかりのくれたバイク、大事に飾っとくぜ!」

「そんな。ありがとうごさいます。とびつきさん。」

「えっ・・・ひかり、今とびつきって呼んでくれたか??」

「はい・・・始めは、呼ぶのが恥ずかしかったけど、さっき数斗さんがすぐ飛びつくからって言っていったのが面白くて。あだ名そのままなんだなって。」

「うううっ・・・うあーーーーー数斗!!俺今幸せだ!!!」

「んな大げさ・・・」

「俺、こんなの初めてだ。プレゼントももらって、しかも年下の女子高生からなんて。もうこんな幸せこねえよ!!!」

「よかったな。」

数斗は他人事だと思って、棒読みで返した。

「決めた。俺、ひかりのこと守るぜ。ここまで人と接することができるようになれたのは数斗のおかげだ。それとひかりは俺に、諦めないってことを教えてくれた。手に入らないように見える景品でも諦めずに掴み取る。スッゲーかっこいいじゃんか!!な!?」

数斗はくだらないことに憧れを抱くヤイバに乗せられた。

「ああ。確かにかっこいいな。そういうの。」

「もう!二人だけで何話してるんですか!わたしがいるってこと、忘れてませんか?」

会話の中に、ひかりが混じってきた。二人は思わず苦笑いをした。

「やっぱり忘れてたんですね!!せっかく月がきれいですねって言いたかったのに。」

「月?」

「はい。今日は満月ですよ。見てください!」

二人は月を見た。でも、満月を見たヤイバは苦しみだした。それでも、なんとか数斗にしがみついた。

「・・・かず・・・と・・・やばい・・・逃げろ・・・・!!!」

「ヤイバ・・・っ!・・・ひかり!行くぞ!」

「えっ、かっ数斗さん!!待ってください!!いきなりどうしたんですか??」

数斗はひかりの手を掴み、急いで逃げた。

「数斗さん!とびつきさんは・・・っ・・・!」

「振り返るな!ひかり!!」

遅かった。ひかりは見てしまったのだ。ヤイバが狼男へと変わり、そして自分に襲い掛かってくる妖怪の姿を。

「あれは・・・」

「くそっ。ひかり、すまない!」

数斗は、ひかりを気絶させ、腕に抱えた。

狼男は数斗に向かってくる。数斗は烏天狗へと変化し、狼男に槍を向けた。

「さっきのお前はどうしたんだよ!」

「ガウウウウ・・・ガァァアァ・・・」

烏天狗の言葉も耳に入らなくなってしまっている狼男。こうなってはあの時のように止めることはできない。

「とにかく、ひかりをこの場から遠ざけねえと。庇ってる余裕なんてねえ・・・」

「ぉー・・・」

ふと鳴き声が聞こえてきて、烏天狗は羽根を伸ばして上空へ昇った。声の主はぬりかべだったのだ。

「クオオン!」

「ガウウ・・・?!」

ぬりかべは狼男を尻尾ではたき、遠くにある山奥に飛ばした。

「助かったぜ、ぬりかべ。」

「ぬりかべだけじゃないですよ。」

「ぬらりひょん・・・!?」

「相手は狼男ですよね?今日が満月で、とびつきが怪しくなる気がしてたんですよ。」

「そうか。けど悪い、こいつを家まで送ってくれないか?」

烏天狗は腕に抱えていたひかりをぬらりひょんに差し出した。

「ひかり!?一緒だったんですか!?」

「ああ。そいつがいると、あいつを止めるのに足手まといになる。それに、狼男の正体見られちまった。だからせめて、それを夢で終わらせたいんだ。」

「烏天狗・・・すぐ戻ってきますから!」

ぬらりひょんはひかりを連れて駆けていった。

烏天狗は羽根を羽ばたかせて、狼男の元へ向かった。

 ぬらりひょんがひかりの家に着くと、戸締りがしてあるのを確認した。

「ちゃんと戸締りしてるんだな。」

ぬらりひょんは、ひかりから家の鍵を盗人した。中に入り、ひかりをベットに寝かせて帰ろうとすると、ひかりがささやいた。

「・・・っ・・・とび・・・つきさん・・・」

夢でうなされているようだった。きっと、烏天狗が言った“狼男の正体を知ってしまった”ことが原因だと確信した。

「ひかり、とびつきとせっかく仲良くなれたはずなのに。必ず、救って見せるからな。」

ぬらりひょんは、ひかりの家から猛スピードで山奥へと向かった。

 「うはっ・・・」

烏天狗は木々に押し付けられた。狼男は烏天狗の身体を両手で強く持ち上げられた。

「うあああああ!!!!!」

ただ掴まれているだけなのに、狼男の爪は長く鋭い、そのため、握っただけで皮膚に食い込んでいく。

それでも、烏天狗は羽を広げて狼男に翼で攻撃した。手から離れられたものの、傷を負ったところからは血が流れ続けていた。

「ガウウアアアアアアア!!!!!!」

狼男が遠吠えを上げる。

「・・・狼男・・・もういいだろ。だからもうやめてくれ・・・でないと、俺も死ぬがお前も死ぬぞ・・・」

「ガオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアア!!!!!!」

「クオオオオオオオオン!!!」

ぬりかべが狼男に立ち向かうが、大きな体が軽々と持ち上げられ、地面にたたきつけられた。

「ぬりかべ!!」

小さくなった身体は、もう動けない。

「ううっ・・・オイラの力じゃあ・・・かなわない・・・」

「くそっ・・・どうしたら・・・止められる・・・お前のことを・・・」

2人はもう傷の深さに陥ってしまった。

「諦めんな!!!烏天狗!!ぬりかべ!!」

どこからか声が聞こえてきた。

「狼男!俺が相手になるぜ!!はあ!!」

ぬらりひょんが剣を振りかざすと、狼男の肩を切り裂いた。

「おおーさすが新品。切れ味が違うな~」

余裕のあるぬらりひょんの態度に、狼男は激怒したらしく、妖気が一層強く湧いた。

「なんだ?・・・すげー息苦しい・・・ううっ・・・」

「カハッカハッ・・・ぬらり・・・ひょん・・・」

もう狼男の周りにいる者は、みな息苦しさに耐え切れず、呼吸が困難になった。

すると狼男の視界に、先ほど自分で持っていた景品が落とされた。

そう、今日ひかりが取ってくれた景品。"大切にする"とヤイバはひかりに約束した。

「グルルルルガアアアアアアアアアアアアア!!!!アアッアアアアアア!!!!!!」

狼男の異変に、烏天狗たちは気づいた。

「成仏せよ。悪霊退散!!」

現れた人物は狼男の顔面に、大きな札が張りつけた。すると、狼男からは黒い霊が飛び出していった。それは狼男よりも3倍くらいの大きさの霊だった。

飛び出した霊は、お札によって成仏された。

「みんな大丈夫?ひどい傷だ。起死回生・・・」

そう唱えると、3人の傷口がどんどん閉じていった。



意識が戻った3人の前にいたのは弊六だった。

「弊六!?・・・もしかして、お前が運んでくれたのか?」

「もちろん。3人には応急処置はしたけどどこか痛むところはない?かなり重症だったけど・・・」

「いいや。平気だ。それより、また助けられたな。お前に。」

「気にしないで。無事で安心したよ。」

さりげなく会話をしていたが、何か違和感を感じた。

「なあぬらりひょん、お前今瞬熄になってるぞ。」

「えっ・・・うわあっ!ほんとだ!!数斗さんも!!でも、弊六は弊六のままだ・・・もしかして、本当の妖怪??」

疑問をぶつけてきたので、弊六は自分の正体について話し出した。

「俺は、君たちの味方でもないし、敵でもない。互いが妖怪同士だというだけの仲だ。でも違いを述べるのであれば、君たちは妖怪で、俺は妖怪じゃないってことかな。それに俺には使命があってそれを果たしただけさ。」

「その使命ってのは、どういうものなんだ?」

「烏天狗には、前に言ったはずだよ。御幣に込められた人々の願いを叶えるって。でも今は御幣だけじゃなくて、その人が強く思っている願いでも叶えられるようになって成長したお陰であの狼男の願いも聞こえてきて。」

「あっ、そうだ!狼男はどこに?」

数斗はヤイバのことを訪ねた。

「もうここにはいませんけど、彼なら大丈夫ですよ。彼に憑りついていた地縛霊を成仏させましたから・・・」

ヤイバが妖怪の姿になった時、ずっと憑りついていた地縛霊に、いち早く気付いたのは幣六だったのだ。

そして、顔面にお札を叩きつけたときに無事に成仏させることができたのだった。

数斗は話を聞くと、神社を出て行った。

「あ!数斗さん!!行っちゃったよ・・・あ、そうだ弊六、ひかりの持ってたフィギュアってどこに置いた?」

「運んでこれなかったから、まだ森の中にあると思う。」

「そっか。探さねえと・・・今何時だ?」

「4時だけど?」

時間を聞いて、まだ早朝でありみんなが寝静まっているときだとわかり、外に出て絵馬を書いた。

「ぬらりひょん?何を書いてるの?」

「・・・頼む。弊六。無理かもしれないけど、この願いを、叶えてくれねえか?」

手渡された絵馬の内容を見て弊六は笑った。

「これなら、お安い御用だよ。」

弊六はすぐに引き受けくれた。

 数斗は一度うちに戻り、先日渡しそびれた新聞を持ってヤイバの家へと向かった。

そして、ヤイバの住むマンション。

数斗はドアをノックした。

「・・・ヤイバ?いるか?俺だ。数斗だ。」

そういうと、静かに返事が返ってきた。

「ああ。配達か。ありがとな。」

「・・・その、大丈夫か?」

「そういうお前はどうなんだよ。重症なんだろ?弊六って妖怪から聞いたんだ。」

「心配しなくても、あいつの力で、もう傷は治った。」

「ならよかったな。もう会わないことにするから、安心しろ。」

「何言ってんだ。お前、こういうの嫌いだって言ってたよな。望んだ訳じゃないだろ。」

「もう、仲間を傷つけちまうのは御免だ!!!!」

 ドアの奥にいる、顔も見えないヤイバだが数斗はわかる。あいつが泣いていることを。

ヤイバは自分が妖怪の姿になった時、人を噛み殺し、人間の姿に戻った時には血まみれとなった人間の亡骸を見て、どうすることもできないでいた。なぜ自分がこんなことを。なぜ罪のない人々をこんな死を与えなければならないのか。

今までのヤイバなら、自らの身体を傷つけてそこに包帯を巻くという習慣になっていたのだが、現在は引きこもるようになった。自分を傷つけていくよりはましだと。

「そんな気持ちでいるなら、夢は叶わないぜ。」

「・・・えっ・・・?」

「お前は見た目によらず優しすぎるんだよ。仲間を傷つける?上等じゃねえか。俺らのチームは、人間であり妖怪だ。傷つけることだってあるさ。んなこといちいち申し訳なく思っているなら一生百鬼夜行なんて作れねえよ。これから戦って強さを磨いていくんだ。お前ならその手でできると、俺は頼りにしてる。」

ヤイバは、自分の掌を見た。

「・・・俺の・・・手で・・・人を・・・仲間を・・・」

その手を握りしめた。

「数斗さん?」

そこへ、ひかりと瞬熄がやってきた。

「ひかり?瞬熄どういうことだ?」

「ひかり、とびつきならこの部屋にいるから。」

「うん。ここまで教えてくれてありがとうね瞬熄くん。すみませんとびつきさん。ひかりです。お邪魔してもいいですか?」

「えっ???ああ・・・いっ今開ける。」

ヤイバはドアを開けて、ひかりを家にあげた。扉が閉まると、数斗は瞬熄をみた。

「お前、どういうつもりだよ。ひかりはヤイバに・・・」

「その記憶を、弊六に頼んで消してもらったんですよ。ああ・・・消したっていうか、書き換えてもらったっていうのが正しいのかな。ひかりが狼男に襲われた場面は、狼男じゃなくて、ただとびつきと一緒に帰ったということになったんです。その中で、ひかりがとびつきにあげた景品を、ひかりが持って帰っちゃったから、もう一度2人が会う機会を作った。ということにして、わざとひかりの家に景品を置いておきました。ひかりはとびつきのところに行こうとしたけど、数斗さんが家にいないから、代わりに俺に電話をくれたっていう訳です。」

「そうか。でも、弊六もなかなか役立つ術持ってるんだな。」

「そうでもないみたいですよ?記憶を書き換えることは、脳に負担がかかるから書き換えすぎると、記憶を失ってしまう可能性があると弊六は言っていました。」

「記憶喪失するってことか。もちろん、これ以上ひかりに妖怪の姿はさらさねえよ。逆に俺が守る。」

 そのころ中では、2人は正座をしていた。

「とびつきさん、実は昨日バイクのフィギュアを採ったのはいいんですが、持ち帰っちゃったみたいで、今朝部屋にあったんです。改めてどうぞ。」

「ああ。ありがとう・・・」

「ん?なんかあまり嬉しくなさそうですね?」

「いいや!全然!うれしいんだけど・・・」

ヤイバはひかりが、記憶がないことを知らないため、無理をして来ているんじゃないかと思い込んでいた。

「もしかして、昨日のこと・・・」

ひかりが呟いた発言に、ヤイバは耳を立てる。

「本当は、別のフィギュアがよかったんじゃないですか??バイクが欲しいのはよくわかりました。でもこだわりがあるのかと思って。それが原因ですか??」

そこでやっとわかったヤイバは、さっきの元気のなさはどこへやら。ひかりをみつめてこう言った。

「いいや。あまりにも俺好みだったからさ、喜びに浸ってたのさ。マジありがとな。ひかり。」

ヤイバはひかりから、バイクのフィギュアを受け取った。

 そしてフィギュアは、よく視線を向けるテレビの近くに置かれたのだ。


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