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僕の平凡な日常 なんちゃって。  作者: 絹川クーヘン
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第10話 対決と裏切り


 まりのを「わらし」に運んだ。ところが、起こすことが困難だった。

「そんな・・・じゃあ、まりのが目を覚ましても、吸血鬼になっているかもしれないから危険だってこと!??」

「はい。そういうことみたいです。」

「それにトロちゃんはドラキュラという妖怪に連れていかれたと。」

「・・・あの、そのトロールって、本当に信用していいんですか?俺はあいつを信用してません。あいつには・・・その・・・」

「別の妖気でも感じるの?」

「えっ。」

数斗は福美が“妖気を感じる”という言葉を聞いて驚いた。

「福美さん・・・まさか妖気を?」

「ええ。こう見えても、昔は妖怪だったの。数斗くん、貴方もでしょ?」

「・・・はい。あいつからドラキュラと同じ妖気を感じたことがあるんです。ドラキュラの仲間なら、敵・・・」

「違うわ!トロちゃんは違うの!トロちゃんはドラキュラに利用されているのよ!危険なことを犯しているのはトロちゃんだってわかってやっているの・・・わたしには、全てを話してくれたわ。」

「ん・・・」

すると、まりのが気が付いた。

「まっまりの・・・?」

緊張感が湧いた。いきなり襲ってくるか、それとも攻撃を仕掛けてくるか、いずれにせよ警戒した。

「ママ、数斗さん。わたし・・・生きてる~~」

「まりの~~~~~!!!!!まりの?まりのよね?よかった~~~~~~!!!!」

「ママ・・・」

「でもなんで無事なんだ?」

数斗は不思議に顎に手を当てて考えた。 その様子に福美はトロールについて話すことにした。

「すぐに治る?」

「そう、トロールはどんなに大きな怪我をしても、瞬時に傷口が塞がるの。」

「それはおかしい。あいつはドラキュラの攻撃を食らって重傷でしたけど、治っていませんでしたよ。」

「きっと、まりのを助けるために自分の身体を省みず、力をまりのに使ったのかもしれないわね。」

数斗はドラキュラに襲われたまりのを救ったかもしれないトロールを少しだけ敵ではなさそうだと考えを改めた。

「でも、俺は納得がいきません。」

「そんな・・・」

「完全に信じてるわけじゃねえよ。でもあいつは完全な悪じゃないってことは確かだ。」

「数斗さん・・・巻き込んじゃってすいません。」

「えっ、ああーいいんだ。気にすんな。」

 あくまで、まりのには数斗が妖怪ということは、伏せておくことにした。



 闇の世界では、トロールは針地獄とでもいう石板に、挟まれていた。足元は血で溜まっている。

そこへドラキュラがやってきた。

「気分はどうかな?トロールくん。」

「・・・・・・」

何も言わないトロールに、ドラキュラはあるものを見せた。

「これがなんだかわかるかい?君の、‘心臓’だ。」

「・・・っ!」

「君はこれをどうにかしない限り生き続ける。そうだったね~」

「・・・どうするつもり?」

「一つ聞かせてくれませんか?なぜ、回復しなかったのですか?君ならあの数秒で、傷なんて治せるはずです。ですがあの時、治さなかった。どうしてですか?」

ドラキュラが質問しても、トロールは答えなかった。

「当ててあげましょうか?まりのさんを、助けたんでしょう?」

トロールは瞼を開いて驚いた表情をした。

「回復は、自分を救うことも可能だが、他人を救うことも可能。ただし、救うには自分に治癒力は使えなくなる。器用では無いんですよね。」

「・・・どうして、それを・・・」

トロールは自分自身が治癒力を持っていることを、ドラキュラに話していなかったため、相手がその事を知っていることに驚いた。

「実を言えば、あの時すでに、君を試していたのです。君があまりにも馴染みすぎているのでね。もし自分が危険な目にあったとき、親しい者が危険な目にあったとき、君は自分と他人。どちらを選ぶのかをね。」

鋭い目つきでトロールを見ると、珍しく動揺していた。

「私はこう見えて、きっかけを作ってあげるのが得意なんです。だから、トロール君にもきっかけをあげましょう。」

石板からトロールを開放し、その場に仰向けになったトロールを見据えてドラキュラは言った。

「奴らを始末しろ。もししくじるのであれば。」

ドラキュラが合図をすると、ネコ娘がやってきた。そこには、トロールだけが見えていたオーラがある。

そのオーラは、透明だった。

トロールは目をつぶって唇を噛みしめた。



 数斗の家では、テレビが流れていた。

「アハハハッアハハッ」

「ぬりかべ、笑いすぎだ。」

「だって見てみろよ。アハハハッ」

大笑いしていると、数斗が帰ってきた。

「あ!数斗、お前どこに行ってたんだよ。ひかり、自分の家に帰ったぞ。」

「そういえば・・・」

「忘れてたのかよ!」

忘れていた。その他にももうひとつの事柄を数斗は思いだした。

 最初に出会ったとき、ドラキュラの代わりにネコ娘が言ったこと。

━━━━━「ドラキュラ様は、あなたを必要としている。力を、貸してほしいの・・・」

初めから狙っていたのは数斗。そのほかの人たちを巻き込んでいるのは自分だと気づいたのだ。

バンと音を立て、突然数斗は壁に怒りをぶつけた。

「かっ数斗???」

「くそっ・・・巻き込んでんのは・・・俺の方じゃねえか・・・」

「おい!数斗、外を見ろ。」

からすなは窓を見ると、不気味な雲が覆っていた。

「なんだ?」

「あっ!!あれ!!」

ぬりかべがいうところを見るとドラキュラが空を歩いていた。そこには道なんてものはないのに。

「(奴は俺が止めない限り、この戦いは終わらなそうだな。)奴と戦う。」

「でも、奴の弱点が・・・あっそういえば、あいつ、明るいところに長時間居れないんだったな。それから・・・」

プルル・・・

数斗のスマホが鳴った。

「もしもし。」

「"数斗くん?"」

「福美さん?」

「"今ドラキュラについて調べてたんだけど、相手を倒すための弱点を見つけたの。"」

「明るいところに連れて行くってことなら、知ってますよ?」

「"そのほかにもあるの。とにかく、うちに来てくれる?"」

 わらしに着くとまりのも一緒だった。福美がさっそく、あるメモを見せてくれた。

「何枚もあるわたしの先祖たちが書き残したメモを見つけてね、ドラキュラの事を書いてあるか調べてみたの。そしたら見つけたの。一つは十字架。」

「知ってます。」

「ニンニク。」

「知ってます・・・」

「日の光。」

「知ってますって!試してみようにも、それらを持ってねえ・・・あっ!あいつなら・・・」

 スマホの電話が鳴り、出たのは瞬熄。

「もしもし。数斗さん・・・えっ?ありますけど・・・ああ!!なるほど!!了解しました!」

スマホをしまうと、数斗はにやりと笑った。

「これで、あいつと戦える。」

「それはどうでしょうか?」

振り向くと、ドラキュラがいた。

「お邪魔しますよ?」

「丁度いい。お前を探す手間が省けたぜ。」

「待って!数斗さん!!」

まりのが食い止めようとした。しかし、

「フッ」

ドラキュラが指を鳴らし、合図を送ると、外に大量の蝙蝠がやってきた。

「"君たち"はこの子たちの相手をお願いします。」

そういうと、数斗と共に消えてしまった。代わりに、ネコ娘と河童が姿を現した。

「座敷童子!この前は仕留めそこなったけど、今日(こんにち)を、あなたの命日にしてあげるにゃ。」

「あなたが強くなっていたとしても、わたしは、負けない!!」

まりのは座敷童子になって構えた。

「待ってよ。俺もいるんだよ。忘れないで?」

河童も攻撃を仕掛ける準備をしていた。



 数斗に頼まれたものを積めた袋を持って、瞬熄は夜空に飛び交う蝙蝠の群れに、妖気を感じたことから先を急いでいた。

「間に合ってくれ・・・!!っ??」

全力疾走していると、目の前にトロールが現れた。

「悪い!!どいてくれ!!」

「・・・」

トロールは黙って瞬熄に掌を構えた。すると、瞬熄に白いオーラが纏いつき、瞬熄の走る速度があがった。

「なんか・・・ありがとな!」

瞬熄が行った後、トロールは瞬熄が持っていたものを手に十字架とニンニクを持っていた。それにクリーム色のオーラを纏いつけると、物はどこかへ転送された。

 座敷童子は、2人を相手に打つ手がなく、倒れていた。

「うっ・・・」

「もう終わりにゃ?大したこと無いのにゃ。」

「早すぎるけど、蝙蝠たちも逃がしてと。とどめはどっちがする?」

「河童がやっちゃっていいわよ。こんなやつ殺しても、や何の特もないもの。」

「じゃあ。やっちゃうよ。」

河童は拳を強く握りしめて、座敷童子の頭上へ振りかざした。だが、それは右に反れた。いいや。それは刃先を下にした状態の剣でくいっと反らされたのだ。

「よおー久しぶりだな河童。俺の事、覚えてるよな?」

「・・・忘れるわけないよ。ぬらりひょん。だよね。」

「ああ。お前は俺が倒す!!はあ!!」

ぬらりひょんは剣を振りかざす。ところがネコ娘が河童を蹴り、なんとか剣を交わした。

「向こうでやるにゃ!!あんたには邪魔が入ったみたいね。だったらしょうがないわ。わたしがとどめを!!えっ・・・いないにゃ?」

座敷童子の姿が無かった。

「ここだよ。」

真上には、座敷童子をお姫様だっこして見透かすトロールの姿があった。

「トロールっ・・・まさか、裏切る気にゃ??」

「はっきり言えばそうなるけど、違う。ぼくは、自分の思うように生きる。誰かを守るために。そして、自分自身を開放するために。」

「さっきの出来事忘れたの?あんたが裏切るのなら、オーラのやらが見える能力を喪失させて、殺すわよ。こんなことをドラキュラ様が許すと思ってるにゃ?でも、知らせるよりも、今ここで、あなたを始末してあげるにゃ!」

ネコ娘はさらに爪を尖らせ、トロールに飛びかかった。



その頃、数斗はドラキュラに瞬間移動させられ、見知らぬ場所にいた。

「ここは・・・どこだ?」

「‘闇の世界’ですよ。ここには、我々以外存在しないのです。」

「ドラキュラ・・・!」

暗闇の中から白銀の髪の毛と黒いタキシードが見えて、ドラキュラの姿が現れた。

「・・・答えろ!お前、俺が狙いだろ?何がしたい。」

「君の、数珠が欲しいのです。」

「なんだと?」

「その数珠には、様々な妖怪の証。すなわち、魂が込められているというではありませんか。私はそれを手に入れて、この闇の世界と、君の住んでいる町を結合させ、闇の世界と化するのです!」

「んなことさせるかよ!!」

数斗は烏天狗に変わった。

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