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種馬勇者の血統付き  作者: 赤月
アッシュの決意
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Act.6 天柱石戦 前編

 刺されたホホジロとクロジロの傷は、気を失うほど深く応急処置では、出血を止めれそうになく、スクワッシュに抱きかかえられた事を怒っているアサギをなだめ、治癒魔法で治してもらった。貴重な秘薬を使ってしまうが、助けられる顔見知りを放置して後で嫌な思いをするよりかましだと思えた。怪我をした2名と違い、ラブカは、何を言われたか知らないが、恐怖のあまりか気を失っているようだった。


 可能性として先ほどの狙撃主のチームが戻ってくることは、少ないだろうが、銃声と悲鳴で他のチームが来ることも考えられる。メダルを持っていない3チームに危害を加えることも無いだろうと考え、治療を終えた後、目を覚ます前に俺達は川原を離れ、再び森の中に入っていった。


 こんな出足の2日目は、天柱石と呼ばれる岩方向にスクワッシュの鼻と耳を頼りに森を探索するが、はじめからわかりきっていた事だが、山1つを有する大きな島で、移動し続けているチームを探し当てるには、スクワッシュの能力便りの索能力では、足りない事が良くわかった。

 夕刻には、天柱石に到着し、空から落ちてささったような岩の横で俺たちは、火を起こし野営することにした。


 「で、あと3日探し続けるのか?」

 

 スクワッシュが、今日の探索中にアサギが、見つけた木の実を口に入れながら聞いてくる。


 「いや、俺たちの探索能力じゃ、この広い島から探し出すのは、無理だと思うんだ。」


 「えぇ~。なのに今日あんなにも歩いたんですかぁ~。」


 疲れが顔に出ているアサギは、肩を落とし疲れきってるようだ。よくその体力で訓練所を耐えてこれたな。


 「いや、ちゃんと考えて歩いたよ。だからこそ今日は焚き火もしてるし、今日一日は足跡をこの葉っぱのついた枝を引きずって、消してきたんだ。それにこの周辺にも警戒用の鳴子もしかけた。」


 適当な長さの枝を切り落とし、腰につけて、足跡の上をこするようにして今日一日は、歩き続けた。よっぽどのことが無い限り、はっきりとは、足跡は残っていないだろう。それに天柱石についてからアサギに火を起こしてもらってる間、俺とスクワッシュは、昼間に集めておいた蔦を使い、天柱石周辺の森に引っかかれば音が鳴る簡易警戒トラップをしかけておいたのだ。


 「今日は2人共疲れただろ?見張りは俺一人でするから先に寝てくれ。先は長いからな・・。」


 しばらくすると二人の声は、聞こえなくなり、夜鳥の鳴き声と木々の漣そして、火のはぜる音だけが闇を支配していった。


 





 「あまり沈んでない足跡が3人。軽装だな。しかも1人は、小さいから女か?この程度の隠蔽技術で、足跡を隠したつもりかよ・・・。」


 ねずみのような前歯をしたビックスが、眼の目にある足跡を隠すため何かを足跡の持ち主を嘲笑した。


 「まぁーその分俺たちは、奴らの行方がわかるんだからあまちゃんに感謝じゃねぇか。しかも女がいるなんて、久々に楽しめるかもな。」


 3匹のカラスが描かれた小型の円形の盾を持ったドライルは、ビックスと足跡の主を嘲ている。


 「緩んでるぞ。しかも試験だ。女がいても手は出すな。戦場ではないんだからな。」

 「「へい。」」


 この二人は、ただの歩兵。騎士でもないため、品や格などという言葉には程遠い。ただ、彼らとは長い戦友でもある。私は手に持った祖国独特の武器である槍剣ソードスピアという、槍の矛部分が短剣のように長い槍の中に祖国が見えたような気がした。


 私は、5年前ほどは、ゲイルマ国の騎士だった。ゲイルマ国は、小さな山国で良質な鉱石が取れることで周辺国には、知られていた。全盛期には、良質な鉱石を採掘する鉱山の麓に腕利きの鍛冶屋集団が、住みつき、武具を輸出することで、国は潤っていたのだが、徐々に鉱石は、取れなくなり、腕利きの鍛冶屋達も徐々に他国へ移り住んでいったのだ。税収は減り、国力が落ちていった。それをレギアス帝国が見逃すわけがなく、東から徐々に侵略され、ついに国王の降伏宣言で、国は地図から消え去った。


 レギアス帝国は、さも寛大な処置の如く、ゲイルマ国の国土をゲイルマ領として、降伏した国王をその領主として任命したがその理由は、隣接したゼハイル共和国を攻める為であり、残存したゲイルマ国の戦力を捨て駒として、先鋒に立たされ、壊滅に近い被害を受けた。レギアス帝国皇帝は、皇帝の兵を無駄に殺したと難癖をつけ、元国王・ゲイルマ領主を斬首し、ゲイルマ領には、帝国本土より新領主を向かえたのであった。もちろん、ゲイルマ領との過酷な戦争で、疲弊したゼハイル共和国を降した。

 帝国としては、下った軍門を使い、新たな国土を得るという自らが、痛みを持たない戦略で、国土を増やしたのであった。俺は、運よくか悪く、戦闘中に腕を折っていたため、途中から従軍することができ無くなり、生き延びたが、遺恨の対象の帝国に忠誠など持てるわけもなく、部下の生き残りのドライル・ビックスの2名と逃亡した。目指したのは、自由都市として名高い、レルカ。帝国領の最西端から東端までの2ヶ月の旅路の果て、どうにかたどり着いた。


 軍や傭兵になるよりももうすこし自由に生きようと思った俺たちは、冒険者ギルドの加入試験に挑どむことにした。私達はゲイルマ国騎士に支給される胸甲騎兵鎧キュイラッサー・アーマーやサーベル等の武器を売却し、どうにか受験料を工面し、試験を受けてみると、好都合に3人1組の試験だ。私は、神の加護はまだあると確信した。そして、この獲物だ。ずさんな足跡の消し方からさっするにきっと訓練所の生徒だろう。ならば、きっと貴族の三男四男。もしかしたら祖国の敵レギアス帝国の貴族かもしれない。


 「おっと!!あぶねぇあぶねぇ。ずさんな足跡の癖に罠は、慎重に隠してやがる。」


 俺が、物思いに浸って進んでいる中、ビックスが、罠を発見してくれたようだ。鳴子と呼ばれる、侵入者を知らせる簡単な罠だ。


 「きっと、ずさんな足跡が罠だったかもな。不注意を誘って俺達を油断させる。そして、この罠にはめる。って寸法のな。」

 「へへぇっ。斥候スカウト職の俺様、ビックス様がいたのが、奴らの運のつきだな。」


 ドライルの考え通りなのかもしれない。ビックスが油断しすぎていたらきっと罠にかかっただろう。


 「鳴子の罠だ。敵は近いぞ。2人とも気を引き締めろよ。」

 「「へい。」」


 ビックスが罠を解除し、しばらく進むと森が開け、広場に鳴っており、その中央には、大地に突き刺さった岩が見える。そして、その下には、小さな焚き火と座っている影が1つと横になっている影が2つ。目的の足跡の主達だろう。


 「ビックス。左へ。ドライル右へ。私は、このまま進む。まだ罠があるかもしれないから気をつけろよ。」


 私の虫のような命令に従い、2名とも分かれて進んでいく。心の中でゆっくりと100を数え、私は森から開けた広場に踏み出す。


 「ッ!!罠は!?」


 私に気がついた焚き火の前に座っていた影は、狼狽しながら立ち上がる。仲間を起こすことも忘れているようだ。


 「もう包囲させていただきました。悪いことは言いません。降伏してください。メダルさえいただければ、害は加えません。」


 できれば、無駄な争いは避けたい。フードを深くかぶっており、顔は見えないが、もし訓練生だったとしたら戦場も経験したこと無い子供かもしれない。


 「し、信用できるかよ。」


 影は、長杖を両手に持ち構える。


 「仕方が無いですね。っと!!」


 私は、一気に駆け出し、影との間合いを詰め、槍剣で突くが、影が寸前で右にかわす。だが、槍剣は普通の槍ではない。刃が剣並みに長いのだから、切りつける用途も考えられているのだ。そのまま影に切りつけるが、影は手に持った杖でかろうじて、受け止め、後ろにとび間合いをとった。


 「ほぉ、少し意外ですね。ですが、次は無いですよ!!」


 槍剣に慣れていない他国の人間相手に初手で無傷だった。という経験は初めてだが・・。


 「これはいかがですかっと!!」


 私は、魔力を槍剣に込め、突くと同時に一気に開放した。


 「槍技・十字槍クロスランサー!!」


 槍剣の先端から十字状の魔力が放出される。突くというより、魔力でできた大きなハンマーを前方に突き出すというイメージの技だが、範囲が広い、槍相手に盾の持っていない相手なら間違いなく槍の突きは、避けようとするが十字槍の範囲の広さは計算外になり、意表を付く攻撃になるはずだ。


 「そういうのを待っていたよ!!」


 影は、意外にも前に足を一歩踏み出すのと私が、十字槍に弾き飛ばされろ。と思った瞬間はほぼ同じだった。次の瞬間のことだ。 


 「ぶへっ!?」


 尻に、蹴り上げたような強打で、不覚にも私の口からは、ぶざまな声が漏れた。先ほどまでは、背後に誰もいなかったはずなのにいったどこからなのか確認する暇もなく、十字槍を繰り出した後の槍剣を大きく前に突き出した状態で、不意すぎた背後からの一撃は、私の姿勢を大きく崩し、前に転倒してしまう。

これは、背後から何かが飛んでくるように仕組んであったのか?そのまま寝ている相手の仲間の上に転倒してしまう。中身は硬い。石にマントをかけ、人が寝ているように見せかけているようだ。ということは、罠だったのか?まさかここに誘導するために足跡をずさんに消したのか?まさか油断させるために鳴子を発見させたのか!?ということは他の二人が心配だ。急ぎ体制を立て直して、反撃を・・・。


 「っぐ!!」

 

 そこで、後頭部を殴打され、意識が遠のいていく。

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