Act.4 第一夜
何かが俺をゆする。まだ眠い俺はそれを払うが、まだ揺すられる。
「・・っ!!なんだよ・・・。」
目をあけると、まだ暗い。森の中のため3つの月が今どこにあるかわからないがとりあえず、太陽は昇っていないようだ。目が慣れてくると目の前には、アザミがマントに包まり眠っている。
「アッシュ君それはぁ~、まだ早いよぉ~・・・。」
いったい何の夢を見てるんだ?起こして問い詰めたくなったが、俺を起こした相手は、急を要するようで、上半身は、屋根代わりの倒木の上にあり、器用に足で俺を揺すり続けている。
俺は、音をできるだけ立てないようにし、よじ登り、スクワッシュの横に並んだ。
スクワッシュの耳は、前方にしっかりと固定されているが、俺の目では、その方向にまだ何も見えていない。
「何があるんだ?」
「アホが川伝いに下っていっている。まれに聞こえるのは、聞き覚えのある腹減ったって声だ。」
スクワッシュは、ふっっと小馬鹿にした表情を浮かべている。
日々毎日「腹減った。」と空腹の音を俺たちは聞いていた。日々14時を過ぎたあたりの講義中に聞こえるその声と音は、もう日常的な声で気にもならなくっていた。
徐々に川を下ってきた声の主は、「餓豚の」と訓練所で異名を持つデブのホホジロだ。毎日持ち歩くお菓子の量の半端なく、マジック・ポーチの中を満載してくるが、それを消費する量も異常な速度で、昼飯前には、食べつくしてしまう。その後は、給食が消化されてしまうと聞こえてくる音はすさまじい。
(つくづく、極秘行動には向かない奴だな・・・。にしも・・・。)
ホホジロが一人で彷徨っているように見えるが、「腹減った。」は聞こえても腹の音が聞こえない??あの2つはセットのはずだ。しかも一人?ホホジロがいるならその相棒「のっぽの」ホホグロとその2人のボスのような存在である鼻持ちならない貴族のどら息子・ラブカ・シャークの姿が見えないというのが、ふに落ちないのだ。だが、その疑問はホホジロが時折、振り返る行動で、理解できた。
ホホジロの後方を2つの影が、川原の岩に隠れながら進んでいく。それを時折不安そうに振り返りついて来てることを確認するホホジロ。
(・・・アホだ。)
ラブカの考えはきっと単純すぎて簡単だ。
1.ホホジロを一人、飯を求め彷徨ってるように見せかける。
2.どっかのチームがホホジロというエサに食いつくの待つ。
3.そのチームを後ろから狙いメダルをゲット。
てなぐらい単純なことだろう。ただ、世の中そう単純にはいかないだ・・。
俺の思考は、轟音で遮られた。
(発砲音か!?)
ホホジロがしりもちを付く形で倒れこんだ。
(銃か!!)
俺のひぃ爺ぃがこの世界に持ち込んだといわれる技術の一つ。銃と呼ばれる驚異的な武器だ。
魔力を込め、筒の中で爆発させる。その爆発力で弾と呼ばれるものを飛ばし、対象を攻撃する。命中した際の破壊力はすさまじく金属鎧を貫通する程だ。ただ、10メートルも離れるとほぼあたらないと聞いている。
狙撃者を探すが、周囲に見当たらない。
(ホホジロは!?)
どうでもいいといえば、どうでも良いが、顔見知りということだけで心配になってしまう。ホホジロは、しりもちをついたまま、周囲を見回している。どうやらアホのホホジロも無事なようだ。その周囲にも狙撃者は見当たらないようだ。
(ということは・・・。やっぱり・・・。)
スクワッシュとホホジロをえさにしている2人の釣り人の周辺にもう3人が立っている。一人は、ライフルを肩に担ぎ、後の2人は、ホホジロと同じように尻餅をついたラブカとホホグロに剣を突き立てている。
(この状況なら俺でも後ろから狙うな。さてどうするか。)
選択肢としては・・・。
第1案.アホどもを救出する。銃を使うやつは、訓練所にいなかったということは、一般加入希望者だろうということは、俺とスクワッシュで3人を相手取るのは危険だろう。よって却下。
第2案.アホどもは放置は確定として、メダルを奪った後、気が緩んでいる所を襲って、メダルを奪う。いや、熟練しているならそんな油断をみせるだろうか?しかも先ほどの銃声でこの付近のチームが周辺に着ており、奪ったメダルをさらに奪われるという恐れがあるよな・・・。
(動かないほうがいいか・・・。)
俺は考えをまとめると、血の気の多いスクワッシュの肩に手を置いて、待機を知らせようとしたが、俺の手は空を切った。
(まさか!?もう駆け出したか!?)
前方を確認するが、スクワッシュの姿は見当たらない。
(スクワッシュが、迂回なんてするわけがないのに?どこだ??)
俺たちが寝床にしている下を見た時にスクワッシュを見つけたのだった。スクワッシュは、アサギの横で頭の上の両耳を押さえ、小さくうずくまっていた。
(あ、そういえば、こいつ雷とか大きな音が嫌いだったな・・・。。)
スクワッシュはしばらく、動けないだろうし、アサギに至っては、銃声がしてもまだ寝ている。緊張感というものがないらしい。
(さて、これで駒は俺一人か。)
内心ため息をつくと、ラブカ達に目を向けた。
どうやらスクワッシュを探している間にホホジロもつかまり、3人まとめて縛り上げられている。いまだに剣をちらつかせてるということは、メダルを提供することをラブカたちが断っているのだろうか。
突然、苦痛にうめく絶叫が木霊した。
剣をちらつかせていた男が、ホホグロの太ももに突き刺したようだ。業を煮やしたのだろう。恐喝で無理なら実効するまでといった感じだろうか。男たちの顔には、残忍な笑いが浮かんでいる。そして、別の男が、ラブカに剣を突き出し、ラブカは、いそいそと懐からメダルを取り出した。残忍な拷問に耐える根性などない奴だし、それが賢明だろう。ルール上殺したところで文句は言われないのだから。
でもそれを実行できる所が、訓練所で温い教育を受けている俺たちと、殺伐とした戦場や依頼をこなす傭兵たちの違いかもしれない。メダルを奪い取った男たちは、まだラブカ達に何かを要求しているようだ。ラブカたちが、ポーチから食料を取り出し、地面においていっている。それを見ている男たちの顔にはまだ、残忍な笑みがこぼれているのを俺は、見て次の惨劇が予想できてしまった。
無抵抗なラブカ達を殺す気だ。殺伐とした戦争世界に浸った者は、精神が壊れ、平和になっても快楽殺人を行うものが多いと聞く。きっとあの3人組もそういった奴らだろう。いくらいけ好かないラブカたちであっても目の前で殺されるのを放置するわけには、行かない!!
俺は、マジック・ポーチから水筒をだすと下でうずくまっているスクワッシュにかかるよう水をすべてぶちまけた!!
「スクワッシュ、いつまで遊んでる!!奴らを殴りに行くぞ!!アサギ!!お前も起きろ!!」
2人が反応したかどうかも確認せずに俺は走り出した。




