表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
種馬勇者の血統付き  作者: 赤月
アッシュの決意
3/20

Act.2 試験開始でちゅ。

 異常な魔力で作られたゲートをくぐるとそこは、白い砂浜、打ち寄せる波、そう海岸だった。

海岸以外には、100メーター以上の大きさになる巨大樹がひしめく森しか見えない。巨大樹は、建築資材などに高額で取引されるため、人が立ち入る森では、そうめったに見ないのだが森規模になるほど密集しているということは、本当に無人島である可能性が高いだろう。

 冒険者訓練所がある自由都市レルカと雪解け前のあまり気温が変わらないように思える。そんなに離れていないのかもしれないが、俺の知っている島ではない事だけは理解した。


 「わぁ~、海ですねぇ~。でも泳ぐのは、苦手ですぅ~。」

 「試験は、泳ぐのか?あまり濡れるのは、好きじゃないんだけどな・・・。」

 「いや、泳がないから。いやもしかしたら泳ぐかもしれないけど、とりあえず、寒中水泳は極力しない方向で進みたい。」


 ゲートから少し離れた砂浜に座り、注意事項を読まなかった2人に卒業試験内容を伝えると、自分の荷物を確認しだした。突然のサバイバルだ。何が入っているか確認するのは、基本だろう。能天気な脳みそ筋肉100%な奴も知識吸収機も少しは、常識があるようで良かったと思う。


 「えっと、とりあえず、この3人でチームってことでいいかな?」

 「ほかにだれが、俺に殴る奴を教えてくれるんだ?」


 それを聞いて、アサギはうなづいている。


 「じゃ、とりあえず、みんな荷物を確認後教えてくれ。最低限5日間は、野営になるからな。」


 2人共無言で、荷物を展開していく。

 冒険者訓練所にはいると「マジック・ポーチ」と呼ばれる鞄を支給される。この鞄は魔道具になっており、まず、持ち主として登録した者しか、扱えない上、腰にかける程度の大きさなのに全身金属鎧フル・プレート・アーマー程度までなら入れることができ、さらに中身の重量を10分の1程にしてくれるという、便利すぎる魔道具なのである。街中でも似たような魔道具は手に入るのだが、持ち主登録ができず、すりにあったり、大きさや重さをかえれなかったりすることが多く、支給鞄の品質は、市場に出回ってる最上級であるといえるだろう。なぜ最上級なものが支給されるかというと冒険者ギルドだけが、この最高品質マジック・ポーチを大量生産できるからだろう。


 俺もマジックポーチの中身を取り出してく。


 寝る時にも雨具にも使える分厚いフード付きマントや応急治療セット、小型ナイフ、火打石は、マジック・ポーチを支給された時から入っており3人ともそのまま入っている。

 それに加え、3人合わせて食料が4食分と水もおおよそ1日分だろう。食料と水の確保が最優先になるだろうが、他のチームも同じだろうな。

 

 後は、なめし皮の胴鎧と親父の遺品である六角棍と投擲用のナイフが5本。回復用のポーション(黄)が5個か、ナイフもポーションもこんな5日間もサバイバルするとは思っていなかった為、節約できても3回分の戦闘しかできないだろう。

 アサギは、武器と呼べるものを何ももっていない。ただし、魔法を駆使するために秘薬と呼ばれる媒介を持っている事は持っているのだが、8つのうち、虹蛇の抜け殻・トカゲの尻尾・蝙蝠の翼は、気持ち悪いという理由で持ち歩いてないのは、いつものことだ。

残り5種類を使ってアサギが使える魔法は、治癒・明かり・解毒など治療系・便利系だけに限られてしまう。魔法・魔術が使えるだけでも他のチームより優れているかもしれないが、接近戦闘力としては、アサギは、マイナス要因でしかない。秘薬も消耗品だし、採取できる物は、採取していこうか。

 スクワッシュも装備は、簡素でクロウと呼ばれる手甲に爪が3本ついた武器しかもっていない。ただ、虎一族の狩猟能力は、食糧確保や警戒活動で大いに役立ってくれるはずだ。ただ、スクワッシュは、辛抱できないのが、問題となるのだが、そこをうまく操作する必要があるだろう。


 チーム戦の授業があるたびにはぐれもんで、組んできたのだから息が合ってるとは言わないが、個々の能力ぐらいは理解しているはずだ。もちろん、俺がもっている異世界からの元勇者様がこの世界に持ち込んだ「血統能力」もこの2人は知っている。知らない人間が同じチームなら隠したいのだが、遠慮なく使える点でも助かる。


 装備・持ち物を確認し終えると先ほどまでゲートがあったところに新たなゲートが現れ、ランダ教師が現れる。その後ろには、強面の男やフードを深々とかぶった者、言い寄れば、叩き潰されそうな女戦士などが続いて現れてくる。


 「はぁ~い、こちら冒険者ギルド加入希望者でちゅ。しゃて、加入希望者しゃんも最大3人で一組になってくだちゃい。訓練所の生徒と混合チームでも問題ありまちぇん。組めた方は、リーダーさんが、私までおちえてくだちゃいね。」


 ランダ教師は、そういうと近くの岩に手を触れた。


 「キャスト・椅子と机になれでちゅ。」


 岩が、椅子と机に変わっていく。どれだけ魔術は万能なのだろうか、竜神種には、大工や鍛冶屋など職業的に存在しない理由が良くわかる。むしろ竜神種が1人いれば、子孫繁栄までやってのけるのではないか?と思ったことも多々ある、いっそ本人達にどこまで魔術で実現可能なのかと聞いてみるのがてっとりばやいが、ランダ教師以外の竜神種がどこにいるのか知らないし、授業中は私語厳禁を言い渡されているし、ランダ教師が授業前に待機している部屋すらどこにあるのかも不明で、質問をすることさえできなかった。


 椅子にミニスカートなのに足を組みながら座り、胸元を強調するがごとく大きく開いた服を着ているが、残念ながら5歳児にしか見えない彼女に誰もが魅力を感じることはないと思う。とりあえず、俺は感じなかった。


 座った彼女の前に数人が列を作って行く。スクワッシュが俺の背中を軽く押し、アサギも微笑みで繰り出してくれた。俺は、列に並び順番を待つのだった。


 「はいちゅぎぃ~。あ、アッシュ君でちゅね~。メンバーは、誰かな?」


 「同じ訓練生のスクワッシュとアサギ・ソウルの2名です。」


 「はいはぁ~い。じゃ、登録しまちゅねぇ~。」


 ランダ教師は、手にメダルを持つと魔力を込めていく。小さな手のひらに包まれた金属のメダルが一瞬輝いた。


 「はい。これが参加メダルでちゅ。命を捨てる価値まではないでちゅが、大切にしてくだちゃいね。」


 差し出されたメダルを受け取り、列から離れ、メダルをじっくり見てみると、片面に卒業試験ルールが彫られ、もう片面には、このメダルは、ギルド採用試験本部との直接通話魔道具として利用ができ、緊急時等には、使用すること、そして使い方が彫られていた。 


 2人の元に戻り、開始時間まで、それぞれ自由に過ごす、スクワッシュは、周囲の参加者を見回し、戦力分析だろうか、ときより、「殴りがいがありそうだ。」とこぶしを握りしてつぶやいているのを聞いていると戦力分析というか、獲物探しだろう。アサギは、最初は周囲を観察していたが、今は本を取り出し、忙しげにページをめくっていた。


 「集合でちゅ~。」


 ランダ教師の声が響き、全参加者が、ランダ教師を半包囲し、注目した。


 「もうすぐ開始するでちゅ。今からゲートをえっとでちゅね・・・。22個だちまちゅ。各チームは、これだと思うゲートに入ってくだちゃい。ゲートの先は、島のどこかでちゅ。そこからスタートとなりまちゅ。ゴールは、ここでちゅ。5日間で、メダルを2個にしてここを探し当てたチームが、合格としまちゅ。」


 「でちゅでちゅうるせーな。」

 「赤ちゃんプレイがすきなんだろ?」

 「訓練所の教師も堕ちたもんだぜ。」


 でちゅ言葉を失笑した傭兵風の男たちを訓練所の生徒は、驚愕と哀れみで見つめた。


 「サンドストームでちゅ。」


 男たちの足元の砂が舞い上がり、竜巻となる。強風のため悲鳴も聞こえないが、数秒後、砂の嵐のあとには、何もなかった。砂で削られて跡形もななったか、それとも天空高く舞い上げられたか、とりあえず、ライバルが1チーム減ったようだ。


 「ゲートは21個でよさそうでちゅね。いっぱいゲートでちゅ。ではみなさんがんばってくだちゃいです。」


 あいかわらずのでたらめな詠唱で、いくつものゲートが開いた。


 「スクワッシュ、勘で好きなゲートに入れ!!」

 「おう!!」


 スクワッシュが1つのゲートに向かって走り出した。考察が必要がないなら奴の野生の勘に頼るのもいいだろうと思ったのだ。スクワッシュは一番離れたところにできたゲートに早々に入っていく。

 アサギを促してそのゲートに俺も入っていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ