Act.19 旅立ち
あの後、時間が経過し現れたのは、たったの7チーム。訓練生は俺達とライトス達の計6人の2チームというのは優秀なのかどうなのか、それとも試験内容が厳しかったのかどうなのかもわからない。ゲートで5日前の講義場に移動し、簡単な説明と加入者証明カードを発行され、解散となった。
俺達3人も明日の昼に訓練所の食堂で待ち合わせを約束し、それぞれ家路に向かう。
が、俺は、まず雑貨屋そして、武器取扱店、魔道具屋と足早にまわり、最低限必要なものを買っていく。明日以降の出発となれば、気絶していたスクワッシュはわからないが、アサギがついて来ると言いそうだ。断ったとしてもついてきて、危険な目にあわせてしまうかもしれない。旅には危険が多い徘徊する魔物・野獣の襲撃。これは、宿を取ることで、回避できるが、今から向かうレギアス皇国は、北方領主の陣営に有利だ、そしてなにより、共に旅をしてるアサギにまた意味不明に襲われたら、宿でもどこでも危険であり、気が抜けないだろう。思いに応える!?それは選択肢にすらなかった。アサギのことだ、パーティーに私以外の女を入れた、だの、女店主に色目使っただの難癖をつけて、阻害行動に出るのは予測されることだ。だから俺は、準備が出来次第、自由都市を出る事にしたのだ。
「よし、こんなものかな・・。」
マジックポーチにさまざまなものを詰め込んで、準備完了し、俺は、街門へ向かった。この街で生まれて、この街で育って、旅立っていく・・。
「戻ってこれるかな・・・。」
「子供はぁ~ここでぇ~育てたいですぅ~。」
「戻ってこなくちゃだめなのか?」
「!?」
俺が振り返るとそこには、スクワッシュとアサギがいる。
「は!?なんでお前らいるの??」
「なんでっていっても・・。」
「ねぇ~。」「な~。」
と二人で顔を見合わせてかしげるが、確信犯的に笑っていやがる。
「この前の焼肉おごってくれるって約束したのに逃げられるのは、嫌だしな。」
「スクワッシュ・・。焼肉のために危険なたびに来るのか?というか、お前事情わかってないんじゃないのか?」
「お前の顔見たら、大変な事になってるのはわかるよ。それともなにか?俺が理解するまで、根気よく説明してくるのか?」
「・・・。それは断る。」
異能の説明するにも3時間かけたが、結局は理解してもらえなかったことを思い出した。今回のこともまずは、異能から理解させなければいけなくなるだろう。
「私はぁ~、アッシュ君がぁ~いるからぁ~いるんだよ。」
「・・・・。」
それは説明になってませんから・・・。
「おぅ、俺は、ラルに頼まれてしゃーなしで、監視だ。監視。」
「!?」
突然、スクワッシュのぼさぼさの頭の虎毛から10センチぐらいのピンクの熊のぬいぐるみが、現れた。
「スクワッシュ君~。そんなかわいいぃ~趣味がぁ~あったのね~。」
「ねえよ!!こら頭に乗ってる奴!!俺の耳は手綱じゃねぇ!!持つな!!さわるな!!」
「えっと・・。クリスタルがこの街でれんのか?」
「おぅ、俺は、クリスタルの欠片だぜ。本体は、この街にあるから大丈夫だぜ!!」
ピンクの熊は、親指代わりに一本の爪を出して、うっすら開けた口には、牙がきらんって輝いてるよ・・。魔術ってほんとどこまで再現できるんだろうか・・・。
「で、アッシュ、どこに行くんだ?」
「・・・。もういいや、お前ら死んでも責任とらんからな。」
「今朝のぉ~責任はぁ~とってくださいぃ~。」
「いや、俺なんもしてませんから!!」
「おぅ、ラブラブだったぜ(キラァーン)」
熊は、同意するように再び親爪を立て、アサギは、恥ずかしそうにうつむいているが、俺はなんにもしていないはずだ。うん、していない。絶対してない。というかアサギから逃げる手段を本当に考えておかないと将来が見える。ランダ教師のむちゃくちゃな魔力で守護された街で、子供に囲まれて、日々の暮らし、たまにスクワッシュ家が来て、ちび虎たちとうちの子達がはしゃいでる姿・・・。
「悪くないかもな・・・。」
「んん~?何がですかぁ~?」
「いや、なんでもない。とりあえず、レギアス皇国に向かって、情報集めるぞ。あと、旅中でも冒険者ギルドで依頼を受けて、路銀稼ぎだ。」
「3食肉食わせろよ?」
「宿はぁ~ちゃんと2部屋ぁ~とってくださいねぇ~?スクワッシュ君と熊さん部屋ぁ~と私たちの・・・・。」
「おぅ、毎日俺様を撫でろよ?」
「・・・。」
どんだけめんどくさいパーティーなんだ?とりあえず、悪くない未来にする為にも、最低、生還。これが目標だな・・・。
ん、そういえば冒険者ギルドの言葉にもあったな。
「命あっての冒険者。」って確かにその通りだな。
「とりあえず、このまま夜陰にまぎれて街を出るぞ。」
「おう」「はぁ~い」「Zzz」
スクワッシュ・アサギが答え、熊はもう寝てやがる・・・。
俺達は、慣れ親しんだ街を後にした。帰還することを胸に誓って。
豪華な執務室に1人の黒髪の老人が机に向かっている。書類に目を通し、判を押し、手紙をしたためと広大な北方領の仕事は、想像以上に多く、執務室を出るのは、いつも深夜になってしまう。
突然、部屋に置かれた植木が、動き出し、葉が、髪に幹に顔が浮かびあがった。
「父上、帰還しました。」
「ん、ご苦労。成果は?」
「3名捕らえましたが、どれも力が弱く、土台にしか使えません。ただ、」
「ただ?ただなんだ?」
「1人、成長さえすれば使えるかもしれない異能を見つけました。」
「ほぉ、連れてこれたのか?」
「申し訳ございません。ただ、シャトワールの力で、追跡を行っており、ただいま、皇都に向かっているとの事です。」
「そうか、シャトワールには引き続き、監視とあと他の異能も探索させよ。土台にしか使えぬものはいつもどおりに早急に儀式を執り行うようにな。もう夜遅い、お前も下がって休め。」
木は、顔をうつぶせて、礼を取ると木が、ゆったりと元の形に戻っていく。
「異能で対抗してもよいし、血族の力の結晶を使ってもよい、時間は限られておるが、手段はいくつあっても困るもんではないしの・・・。」
北方領主は、そうつぶやくとまた多忙な執務に戻っていくのであった。




