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「さあ、何から話そうか?」

公一が切り出した。


あの衝撃の告白から一夜明け、今日は公一夫婦に自宅近くまで迎えに来てもらっていた。

昨夜の帰り際、公一と由美子に話しが聞きたいと申し出た。

今日は美帆が退院する日なので、それではと車で一緒に行くことにしたのだ。

「美帆の思い出の場所というのはありますか?」

「思い出の場所かあ。」

運転しながら公一は考え込んだ。

「まずは鎌倉だな。今でも鎌倉の話はよくするし。」

「・・・実はもう行ってきました。」

「ん?そうか・・・早いね。」

公一は笑った。

「とても素敵な家でした。小さい頃の美帆が見えた気がしました。」

「そうか・・・。」

そう言って公一の視線がやや遠くなった。


「あとは私たちの実家かしら。」

由美子が切り出した。

「ただ、神戸と北海道だから・・・。」

「と、遠いですね・・・。」

高校生の分際で連れていけるような場所ではない。

「でも、私の実家の近くに広いひまわり畑があってね。美帆はそこがすごく好きで、夏休みになると必ず行ってたわね」

「ひまわり畑ですか。」

「美帆の一番好きな花はひまわり。知ってた?」

そういえば、夏休みのある日のデートで花束をせがまれた。

確かひまわりの花束を贈ったことを思い出す。

「むりやり買わされました。」

笑いながら答える。

それを聞いて由美子もクスリと笑いながら

「花言葉知ってる?」

由美子がいたずらっぽく質問する。

聞き方が美帆そっくりだ。

「いえ。」

由美子は後部座席の浩輝に向き直って

「ひまわりの花言葉は”あなただけを見つめています”。」

「・・・。」

そういえば、花束を渡したときの見つめ方がいつもより念入りだった事を思い出した。

そういうことだったのか。

「・・・親父としては複雑だなあ・・・。」

少々拗ねたように公一が口を挟む。

それを聞いて三人はクスクス笑った。


美帆の両親は強い人たちだと思う。

悲しみや辛さを乗り越えて、今は美帆の幸せを叶えることに全力で当たろうとしている。

そんなことを考えてると、由美子が考え込むような仕草で

「でも、ひまわりはもう季節終わっちゃったのよねえ・・・。」

もう10月半ばである。どちらかというとコスモスや彼岸花ってところだろうか。

「なにか考えてみます。」


そんな美帆の情報を聞きながら、昼前に病院に着いた。

病室に入ると、すでに私服に着替えた美帆がベッドに腰掛けていた。

「ヒロ、学校は?」

浩輝の顔を見るなりそんなことを聞いてくる。

「今日は中間テストが終わって秋休み。うちは二期制だからな。」

美帆はにっこり笑って

「そっか!」

と、うんうんと頷いていた。その仕草が可愛らしい。

遅れて公一たちが入ってくる。

「なによ美帆、私たちが来るまで何もしないで待ってなさいって言っておいたじゃない。」

由美子が声をかける。

「だって朝ご飯食べてから何もする事がないんだもん。」

少々口を尖らせながら答える。

「まったく、少しは世話焼かせなさいよね。」

「まったくだ。俺なんかもっとやることがない。」

そう言うと、3人は微笑み合う。

素敵な家族だなと浩輝は思った。


そこへ神山医師が入ってくる。

私服の美帆を見て

「おやおや、回診がまだだってのにもういつでも退院できる状態だな。」

笑いながら神山は美帆の側に行く。

「先生、お世話になりました。」

美帆はピョコンと頭を下げる。

「まあ、元気そうだから大丈夫かな?」

そう言いながら公一たちに同意を求めるように振り返る。

頷き合うと、神山は改めて美帆に向かった。

「美帆ちゃん。君の病気はまだ完治というわけではない。これからまだ治療が続くという事を忘れないように。」

「はい。」

「うん。学校は来週から通っていいけど、運動は禁止。いいね?」

「はい。守ります!」

「2週間おきに診察に来ること。調子が悪くなったらすぐに先生のところに来ること。わかった?」

「はい!」

「いい返事だ。」

大きな声で笑いながら美帆の頭をポンっと叩き、神山は出ていった。



看護師さんたちに見送られ美帆は無事に退院した。

一緒に帰らないのかとブーブー文句を言う美帆の乗る車を見送ったあと、浩輝は図書館へ向かった。

以前どこかの本で季節外れのひまわり畑の写真を見たことを思い出したのだった。

風景写真の写真集を片っ端から広げていく。

10冊目の本を開いたとき、そこには画面一杯にひまわりが咲いていた。

その写真の説明を読む。

静岡県袋井市とある。

その本を持ったまま、今度は地図や観光本のコーナーへ向かい、静岡県の本を片っ端から読んでいく。


静岡県袋井市に、季節外れのひまわり畑があるという。

その数25万本。

10月下旬から11月にかけて満開を迎えるという。

その本をコピーすると、本を片付けて図書館を出た。


辺りはもう暗くなっている。

美帆たちはもう自宅に着いただろう。

浩輝は公衆電話を探し、美帆の家に電話をかけた。

電話には由美子が出た。

「あら、浩輝くん。どうしたの?美帆?」

「はい、お願いします。」

電話の向こうで美帆を呼ぶ声がする。

すぐにドタドタと足音が聞こえた。

「ヒロ!なんで一緒に帰ってくれなかったの?」

いきなり説教から始まるとは・・・。

浩輝は苦笑しながら答える。

「ごめんごめん。ちょっと調べなきゃいけないことがあってさ。」

「しょうがないなあ。で、ご用件は?」

「用件がないと電話しちゃだめ?」

「あ、そーゆーいじわる言う?」

少し拗ねた口調が可愛かった。

「わかったわかった。用件は、デートのお誘い!」

「キャー!ホント?行く行く!!」

ものすごく弾けた反応に変わる。

「まだどこに行くって言ってないだろ。」

「だって、デートならどこでもいいもん!」

そんな風に言ってくれるのは嬉しいが

「行き先くらい聞きなさい!」

「はーい。で、いつ、どこに行くの?」

「再来週の土曜日。行き先は静岡県。」

「えー、何しに行くの?」

それは言えないだろう。

「内緒!」

「ずるい!」


翌日、教えてもらっていた公一の会社に電話をかけて、今回の旅の説明をし、了承を得た。

美帆との思い出の旅、第一弾が決定した。


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