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「なんか最近美帆がすごく明るいんだけど、気付いた?」

由美子は公一に話しかけた。


どうやら3ヶ月前に美帆に彼氏が出来たらしい。

おかげで夏休みは毎日のように出かけていた。

由美子は母として嬉しかったが、かたや公一は父親として複雑だった。

「まあ、ね。」

ちょっと不機嫌そうな公一の態度に由美子は笑った。

「あら、美帆に早く彼氏連れてこいって言ってたじゃない。」

由美子に笑われて少し不機嫌な公一は、それを隠すように新聞を広げた。

「美帆は?」

「朝シャン中。」

公一の空いたカップにコーヒーを注ぎながら答えた。


今日からお彼岸の連休で、公一の実家の神戸に3日間帰省することになっていた。

向こうへ行ったら美帆とデートの約束をしていたのだが、出掛けにそんな話をされて多少虫の居所がよくなかった。

「まあ、しっかりした相手ならいいんだがな。」

咳払いをひとつして、公一は言った。

かなり虚勢を張ってるようだ。

「いい子みたいよ?」

「知ってるのか?」

「毎晩美帆とはお話するもの。」

自分は蚊帳の外かとなおさら公一は不機嫌になる。

「仕方ないじゃない。あなたは美帆の寝る前に帰ってこないんだから。」

それはそうだが、小さい頃には「パパと結婚する!」と言ってた娘だ。

面白いはずがない。


そんな公一に追い打ちを掛けるように

「いいじゃない。美帆ったらすごく幸せそうよ。彼の話をする時なんか特に!」

なおさら面白くない。

ムスッとしながらコーヒーを口に運ぶと、美帆がリビングにやってくる。

「テストはどうだったんだ?」

「大丈夫ですよ!私、優等生ですから!」

髪の毛をタオルで拭きながら、美帆が得意げに答えた。

いつもながらよく出来た娘だ。

そんな可愛い自慢の娘が、自分だけ知らない男と交際していることに多少苛立ってくる。

「ねえ、お父さん。神戸はどこでデートするの?」

「ん?うーん、それはだな・・・」

不意を突かれて狼狽えた。

そんな二人を見て由美子がクスッと笑う。

それを見て。公一は意を決したように美帆に聞いた。

「美帆。彼氏が出来たってお母さんから聞いたぞ!」

美帆はムスッとした顔で由美子に食ってかかる。

「お母さん、まだ内緒って言ったじゃない!」

「あ、忘れてた。」

「もーっ!」

「ゴメンゴメン。」

由美子はふくれっ面の美帆の頬を突っついた。

美帆はそのままくるりと公一の方を向くと

「別にお父さんにだけ黙ってたわけじゃないよ。デートの時にちゃんとお話しようと思ってたんだ。」

公一は由美子にコーヒーのおかわりを促しながら

「名前は?」

「遠山浩輝くん。ヒロって呼んでる。」

「年は?」

「同い年。」

「いい男なのか?」

「うん。かっこいいよ。男らしいもん。」

「どんなヤツだ?」

「私を守ってくれる、お父さんみたいに強い人!」

「それで・・・」

美帆が立ち上がって質問を遮った。

「続きはデートの時!ね!」


公一は自分から可愛い娘を奪おうとするその男に少し興味を抱きだした。

それを見つめながら、由美子はしてやったりという表情で頷いていた。

公一はそんな由美子を見て、わが妻は策士だと悟った。

時計を見上げ

「さあ、そろそろ出発しないと間に合わないぞ!」

「きゃー、待ってー!」

美帆が慌てて自分の部屋に支度に向かった。



東京駅に向かい、新幹線で神戸に向かう。

今日は山崎家親族一同が集まり、おそらく大宴会だろう。


グリーン車の中程に家族三人が向かい合って座った。

東京駅で買った駅弁を仲良く食べ回しながら楽しい道中だった。

「おい、美帆。どこ行くんだ?」

立ち上がる美帆に公一が問いかける。

「トイレ!レディーにそんなこと言わせないでよ。」

「さっき行ったばかりじゃないか。」

「なんかトイレが近いんだもん。」

由美子がたしなめるように

「さっきから美帆はジュース飲み過ぎなのよ。」

「お腹もちょっと張り気味なのよね。」

まだまだ子供だなと公一は笑った。

「あと少しで神戸に着くから、早く行っておいで。」

「はーい。」

美帆はいそいそとトイレに向かった。



新神戸から電車を乗り継いで、三人は山崎家の実家に着いた。

案の定、一族合わせて20人が大集合、その日の夜は宴会となった。


山崎家は飲食店のチェーン展開をする実業家一族で、次男である公一は東日本支社の支社長を任されていた。

元々は横浜に支社があったのだが、東北への展開を視野に入れて大宮へと支社を移転したため、鎌倉から大宮へと引っ越したのだった。


ちょうど5年前の彼岸の時期に父親がガンで他界した。

そのため毎年彼岸の時期に合わせて一族が集合することになっていた。


公一は社長である兄や二人の妹たちと杯を交わしていた。

由美子は母や兄嫁となにやら会合中。

美帆はといえば、昔から快活で一族中の人気者で、どこへ行っても頭を撫でられていた。

そんな宴会も12時を回る頃にはお開きとなり、めいめいが部屋へ散会していった。

「お父さん。明日のデート、楽しみにしてるよ!」

そういって美帆は布団に潜り込んだ。



明日は娘と久々のデートか。

楽しみとためらいとが入り交じる、不思議な思いの中で公一は眠りについた。



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