人間として避けられぬことのある一つを避けると
人間として避けては通れないことを、一つだけ避けてとおれるとしたら……
人として過ごす上で、避けられないものがいくつもある。
例えば、生きていくこと 老いていくこと いずれ生が終わること。要は死ぬこと
他にも上げれば沢山ある。だが、その多くを、まして上記したことも大して知らないような男が、
ある日、とある少女と出会った。
「ねぇ、人として生きていて避けては通れない事って、何があると思う?」
「へ? なにいきなり、てか、誰だ?」
「例えば、生き続けることとかなんだけど」
「無視かよ」
「その内の一つを、もしも避けられるとしたら……アナタならどうする?」
「え……?」
その言葉を聞いた途端、男の脳内では、
一つだけ避けられる? というか、今までの言葉を聞いただけなら、生き続けることを避けるような感じだけど、今生きている以上、それはもう避けられないから……つまり、
「死ぬことを避けられるってことか?」
「それは言わないけど、もしも私の言葉を信じてくれるなら、アナタはずっと人に知られることになるよ♪」
それは……つまりずっと世界にいるということよな?
やっぱり、それは死ぬことを避けることなんだ。
「分かった! 信じるよ!」
「おっけ~♪じゃあ、これをどうぞ♪」
少女は男にあるものを渡した。
「これは?」
「それを飲むと、人として避けられることを一つ、避けて通ることができるの。ただし、その一つは、アナタが自分で確かめてね。それじゃ♪」
そのまま少女は男に背を向けて歩きだ……
「ああそうそう」
す直前で再び男の方を向いた。
「もしも何かを試すのなら――――」
そしてあるアドバイスを残して、今度こそ少女は去って行った。
「……」
一人残った男は、思った。
何かが分からない? そんなの、死なないことに決まってるじゃないか。
それにあのアドバイス、明らかにそれを証明する以外のなんだと言うんだ。
試すまでもないが、せっかくのアドバイス、それに、ずっと人に知られ続ける第一歩には丁度いい。
良い物をもらったお礼変わりに、試してみようじゃないか。
だが、男には少しばかり、考える力が足りなかった。
建設中のタワーから飛び降り 男性即死
ある日の新聞、その一面は、新聞を読んだ、あるいは少しだけ見た人全ての人の記憶に残った。
そのタワーが、世に生きる人に完成を待ちわびる気持ちがあった中でのこの事件。
タワーが完成しても、その事件は知られ続けた。
そのタワーの中に、あの少女がいた。
そして、誰かに語りかけるように、言葉を発していた。
誰に語っているのか、それは誰にも分からず、誰もが分かった。
人として過ごす上で、避けられないものがいくつもある。
例えば、生きていくこと 老いていくこと いずれ生が終わること。要は死ぬこと
他にも上げれば沢山ある。
その中に、忘れられてしまうということがあるの。
人は記憶して、思いついて、そして忘れる。それらも避けては通れないんだけど、あれはその一つ。
忘れ去られることを避けて通れるものだったんだ♪
あのアドバイスは、その為の第一歩にして、ゴールへの一直線。
アナタは見事ゴールにたどり着いたんだよ。
まあ幸せなゴールじゃないけど♪
人として避けられないことを一つだけ避けたアナタは
アナタは、誰にも忘れられなくなったんだよ♪
生きること 死ぬこと 成長すること 老いること 知恵をえること
食物をとること 水分をとること 疲れること 呼吸すること
眠ること 起きること 欲求をえること 欲求を解消しようとすること
……このくらいでしょうか。
もしも他にもあれば、もしくは何か一言ありましたら、
お待ちしています。