表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

六甲山創作怪談 「メリーさんの館と仁川ピクニックセンターの闇」

作者: NKTK

なし

それは、友人たちと六甲山を夜中にドライブしていた時の出来事だった。仁川から有馬街道へ抜ける道は、街の喧騒から離れ、漆黒の闇に包まれていた。目的地は、都市伝説で有名な心霊スポット巡り。ナビに頼りながら山道を登り続けるうち、やけに大きな建物が見えてきた。

「あれ、摩耶観光ホテルじゃね?こんな山奥にあるって聞いてたけど」

一人が興奮した声で言った。摩耶観光ホテルは廃墟マニアの間で有名な場所だ。しかし、僕たちが目指していたのはそこじゃない。僕たちの本当の目的地は、さらに奥深く、この世のものとは思えない奇妙な噂が絶えない場所だった。

その場所の名は、「メリーさんの館」。

ナビが示す場所に着くと、そこには蔦が絡まり、窓が全て割れた洋館が建っていた。月明かりに照らされたその姿は、まるで怪物のようだった。車を降りると、ひんやりとした空気が肌を刺す。どこからか、女のすすり泣くような声が聞こえた気がした。

「おい、冗談だろ…まさか本当にいるのかよ」

一人が顔を青ざめさせた。その時、スマートフォンの通知音が鳴り響いた。着信履歴には「メリーさん」と表示されている。誰かがふざけて登録したのだろうが、この状況では笑えない。電話に出ると、受話器の向こうから、少女の声が聞こえてきた。

「メリーさんだよ。今、あなたの家の前にいるの」

僕は慌てて電話を切った。すると、友人たちも同じ電話を受け取っていたらしい。全員が顔を見合わせ、震え上がった。その時、館の2階の窓から、白いドレスを着た少女が僕たちを見下ろしていた。そして、ゆっくりとこちらに手を振った。

「やばい、逃げよう!」

誰かが叫び、僕たちは車に飛び乗った。一目散に山を下りる。しかし、道はどんどん暗くなり、見覚えのない場所へ迷い込んでしまった。カーナビは圏外になり、頼れるものは何もない。焦り始めたその時、前方に奇妙な岩の塊が見えた。

「あれ、もしかして西宮市の祟の岩じゃないか?」

そう言った友人の顔が、恐怖に引きつっていた。祟の岩は、古くからこの地に伝わる呪われた岩だ。この岩に触れた者は、不幸な死を迎えるという。岩の周りには、いくつもの小さな石が積み上げられていた。誰かが呪いを解くために積んだのだろうか。

僕たちはその岩を避けるようにして車を走らせた。すると、今度は目の前に古いホテルが現れた。看板には「ホテルFairly」と書かれている。ホラー映画に出てくるような、不気味な外観だった。その隣には「ホテル5thアベニュー」という看板を掲げた別のホテルも見える。どちらも廃墟のようだったが、なぜか明かりが灯っていた。

「もしかして、あの館に閉じ込められたのか…?」

そう思った時、後部座席に座っていた友人が、突然「メリーさん」と呟いた。振り返ると、そこには誰もいなかった。しかし、明らかに後部座席の空気が冷たくなっている。まるで誰かがそこにいるかのように。

「なあ、さっきからおかしいよ。僕たち、本当にここから出られるのか?」

運転していた友人の手が震えていた。有馬街道を走り抜けたはずなのに、なぜかまた仁川ピクニックセンターの近くに戻ってきてしまう。まるで同じ場所を無限にループしているようだった。

そして、再びメリーさんの館の前に戻ってきてしまった。さっきよりも、館の窓がさらに増えているような気がした。窓の奥には、白いドレスの少女が僕たちをじっと見つめている。その目は、憎しみと悲しみに満ちていた。

「メリーさんだよ。今、あなたの真後ろにいるの」

今度は、電話ではなく、車のスピーカーからその声が聞こえてきた。そして、後部座席の窓がゆっくりと開いていく。振り返る勇気はなかった。ただ、ルームミラーに映る自分の顔が、恐怖に歪んでいるのが見えた。

次の瞬間、後部座席に座っていた友人が、苦しそうにうめき声をあげた。僕たちが後ろを向くと、友人の首には、誰かの細い腕が絡みついていた。その腕は、まるでマネキンのように白く、冷たそうだった。

僕たちは悲鳴をあげ、車を飛び出した。闇の中、必死に走り続ける。どこへ向かえばいいのかも分からなかった。ただ、一刻も早くこの場所から逃げ出したかった。

振り返ると、メリーさんの館の前に立つ、白いドレスの少女が見えた。彼女は、僕たちに向かってゆっくりと手を振っていた。そして、その表情は、不気味なほど楽しそうだった。

六甲山創作怪談「メリーさんの館と仁川ピクニックセンターの闇」は、この恐ろしい夜の出来事を基に創作された物語である。この物語に登場する場所は、全て六甲山に実在する場所だが、物語は全てフィクションである。

六甲山にまつわる怪談や都市伝説は数多くありますが、あなたは他にどんな怖い話を知っていますか?

なし

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ