第七章 薫子の追跡
表参道のカフェで、橘薫子は吟子からの連絡を待っていた。もう一週間も音信不通だった。吟子のマンションを訪ねても、大学の研究室に行っても、彼女の姿はなかった。
薫子は不安になり、警察に相談することも考えた。しかし、大人の女性が一週間連絡を取らないだけでは、警察は動いてくれないだろう。
彼女は吟子の研究内容について調べ始めた。美術史家としての知識を活かし、ヴォイニッチ手稿について詳細に調査した。すると、過去にもこの手稿に関わった女性研究者たちが、不可解な失踪を遂げていることを発見した。
薫子は決断した。友人を探し出すために、自分も吟子の足跡を辿ってみよう。
彼女は吟子の研究室で、焼け残った資料の断片を見つけた。その中に、地下鉄の廃線に関するメモがあった。薫子は美術館の仕事で東京の地下構造について調べたことがあり、その知識を活かして吟子の行き先を推測した。
薫子は友人の身を案じながら、地下へと向かった。彼女もまた、ヴォイニッチ手稿の呪縛に巻き込まれていくことになる。しかし、それは吟子を救うためだった。
女性の友情は、時として運命をも変える力を持っている。