【SFスリラー短編小説】禁断の写本 ～美しき言語学者の末路～

　世界最大の謎とされるヴォイニッチ手稿。600年間、誰も解読できなかった謎の写本に魅せられた美しき言語学者・紅林吟子。東大卒、28歳、エレガントで知的な彼女の人生は、この一冊の本によって狂気の渦に呑み込まれていく。
　手稿に描かれた不可解な植物図が、なぜ現代東京の下水道網と一致するのか？天体図がなぜ監視カメラの配置と重なるのか？偶然では説明できない符合の数々。吟子は恐るべき真実に気づいてしまう——この本は600年前の予言書なのだと。
　しかし、彼女の研究を阻む謎の組織の影。盗聴される電話、監視される日常。追い詰められた吟子は、親友の美術史学者・薫子にも相談できず、一人地下の迷宮へと逃げ込む。
　そこで出会ったのは、35年前に同じ道を歩んだ元歴史学者の老女・孝子。彼女が告げる衝撃の真実とは？そして地下深くに隠された「カオス・ジェネレーター」の正体とは？
　女性研究者たちを次々と呑み込む、永遠の連鎖。美しき知性が狂気に変わるとき、言語学という学問の根底が揺らぎ始める。