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第20話 VSメグリリ


 リリクロのアイシクルランス連弾も頭おかしいんだけど、それを回避しつつぐんぐん距離を詰めていくアナもだいぶおかしい。


 もちろんちょっとした種があるんだけどね。

 それはサンドアーマーの靴底。しっかりと地面を掴めるできるように摩擦力を高めてある。

 ずるっと滑ったりしないようにね。


 あとはもう純粋にアナの身体能力が高いってのもある。

 運動神経が鈍い人だと靴底が良くなった程度じゃたいして違いはないけど、アナのレベルだと機動力がバケモノクラスになるんだよな。


「ああもう! なんて機動だよ!!」


 リリクロがわめいている。


「落ち着いてリリー。アナの動く先を狙って」

「やってるよ! けどあいつ、予想の場所に行かないんだよ!!」


 メグのアドバイスすら逆効果だ。

 実際、アナの機動は変態的だからね。


 リリクロがこう予測するだろうってことまで予測してその裏じゃなくて、斜め裏あたりの行動をする。


 読んだつもりで「取った!」って攻撃したら、じつはアナは動いてなくて、何もないところを虚しくアイシクルランスが飛んでいったりね。

 その事実が、またリリクロをいらつかせるんだ。


「リリー! リューを狙って!」


 手綱を取ることを諦めたメグが叫ぶ。

 そうきたか。


「わかった! リュー! かくごしろ!」


 いうが早いか、俺に向かってアイシクルランスが雨あられと飛んできた。


 くっそ!

 相変わらず頭おかしい連射だ。

 これをくらっちまったら話がそこで終わってしまう。


砂網(サンドネット)!」


 ぶわっと目の前に広がった砂の網に氷の槍がぶつかり、一瞬にして氷の網に変化させた。

 最初に触れたものを瞬時に凍てつかせるというアイシクルランスの特性を利用した防御法である。

 網なら刺さろうと突き抜けようと受け止められるしね。


 けど、何発もは防げない。

 次々に発射されるアイシクルランスを後退しながら防ぐが、リリクロの魔力より、俺の腰にさげた砂袋の方が先にカラになってしまいそうだ。


 それまでにアナが決着をつけてくれないと、勝算は限りなくゼロに近くなってしまう。


「たのんだぜ。アナ」


 俺は口の中で呟いた。





「アナの相手はあたしだよ」

「望むところよ! 姉御!」


 フェイントを交えつつアナが接近する。

 肝要なのは視線を通さないこと。


 メグの水魔法は好きな場所にコップいっぱい程度の水を出現させる、という恐ろしいことができる。


 リリクロはそれでやられたんだよね。

 人間はコップ一杯の水で溺れちゃうんだそうだ。


 ただ、いくら恐ろしいとはいっても万能ではない。

 メグが見えている場所にしか水は出せないのだ。

 喉を水で塞ぐって技も、相手の口の中が見えてないと使えない。


「まずは、そのやっかいな機動力を封じさせてもらうよ!」


 言った瞬間、アナの足が濡れた。

 地面に付いた足がずるりと滑る。


 砂で滑らせることもできるし水でも氷でも滑らせてバランスを崩すことができるんだ。

 つまり人間の二足歩行って、けっこうバランスが悪いってこと。


「姉御ならそうすると思った。装甲解除(パージ)!」


 まとっていたサンドアーマーが一瞬にして砂にかわり、アナとメグとの間に敷かれた道となった。


「水は滑る。砂も滑る。でも、ちょっと濡れてる程度の砂は滑らないわよ。姉御」


 即席の道を駆け、一気に距離を詰める。


「でも、厄介そうな鎧は剥ぎ取ったよ!」


 唇をゆがめるメグ。

 たしかにそう見えるだろうな。あれだけ思い入れたっぷりに装着したんだから。


 でも、サンドアーマーはそんなご大層なものじゃない。ブーツの靴底を強化するためだけの装備なんだ。

 いかにもすごい魔法のように見せたのはただのハッタリだよ。


「そして、目にかすり傷はないのよ。アナ!」


 アナは口を閉じているから喉を水で塞ぐことはできない。

 だからメグが狙ったのは目。


 ただの水でも、いきなり目に入ったらびっくりして目を閉じてしまう。

 普通は。


「それも予測済み」


 咄嗟に頭をさげ、メグの視界に額を入れる。

 結果としておでこにべちゃっと水が当たっただけという結果に終わらせたのは、まさにアナの勝負勘だ。


「く!」


 危機を感じたメグが距離を取ろうとする。

 だが、アナの突進の方が速い。


「いくよ姉御! デンジブレイカー!!」

「んぎゃああああっ!」


 静電気をまとった拳がメグを襲い、一瞬ものすごい光を放った後、崩れ落ちる。

 なぜか服もあちこちビリビリに裂けてるね。


「姉御!?」


 俺への攻撃の手を止め、パートナーの心配をするリリクロ。

 素晴らしいパートナーシップだ。


 だけど、この局面では一番やっちゃいけなかったな。

 アイシクルランスが飛んでこないなら、簡単に距離を詰められる。


「てい!」

「ぐえ!」


 当て身を入れれば、リリクロはカエルが潰れたみたいな声を出して崩れ落ちた。

 いやあ、こんなちっちゃい子を叩くのは気が引けるんだけど、勝負だからね。

 仕方ないね。


「ぼくとおまえは……同い年だ……」


 そう言い残してガクッと気を失った。

 なんで俺の考えてること判ったんだよ。

 ていうか、最後のセリフがそれってどうなのよ?


「リュー!」


 たたっとアナが駆け寄ってくる。

 俺は右手を高く上げて待ち構え、アナが思い切り手のひらをぶつけた。

 ぱぁんと景気のいい音がバトルフィールドに響き渡る。



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