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第16話 ふられちゃったよ


『魔法因子』の写本は、すべての学生に義務づけられた。

 これが手っ取り早いんだよね。


 ただ書き写すんじゃないんだよ? 読んで理解しながら、自分なりの注釈をつけて書いていくんだ。

 そうすることによって、たぶんほとんどの学生は「気づき」を得られる。


「たとえば私の光魔法もそうよね」


 うーむと腕を組むアナ。

 威力が高すぎて手加減ができないってのが悩みだったらしい。


 まあ、彼女の雷の線(サンダーボルト)なんて、食らったら一撃で死ぬレベルだもんな。

 相手を殺さないって部分では、まったく向かない魔法だ。

 わざと外すしか手加減のやり方がないんだもの。


「この静電気ってのは良いわね」

「満足げだけどアナ、あんた髪すごいことになってるよ」


 さすがメグ姉御。俺たちが怖くてできなかった指摘を軽々とやってのける。

 そこにしびれる憧れる。


 アナの金髪はどういうわけか四方八方にピンピンと広がっていて、とっても前衛的なヘアスタイルになっているのだ。


「ちょっと面白すぎて突っ込めないよ」


 そういって梳ってあげようとするのは、メグの優しさだよね。


「あ、姉御、触らない方が」

「あ痛っ! ばちってきた!!」


 アナの警告もむなしく、メグが右手を押さえてうずくまってしまう。

 なんか一瞬、二人の体が光ったぞ。


「いたたたた……」

「だから言ったのに。これが静電気よ」


 上手く使えば相手を殺さずに無力化できるんじゃないかってアナが笑う。


 髪は元通りになっていた。

 静電気とやらを体にまとわせていたってことなのかな。

 でも、あんなふうに見た目で判ってしまあのはどうなんだろう?


「そこはまあ、研究の余地があるわね。びりびりくるぞーって見た目で判らせることで示威になるかもだけど」


 俺の表情を読んで解説してくれる。

 ともあれ、それぞれが『魔法因子』を読み解き、自分なりの解釈を加えて研究していく。


 教官たちは、それに対してアドバイスしたり、解釈の間違いがあった場合に方向を修正したりする。


 なんとなくなんだけど、往年の魔法学院ってこんな感じだったんじゃないかな。

 権威主義や魔力量絶対主義じゃなくて、本当に純粋に魔法を研究したい人たちが集い、日夜その可能性を追求し続けていた。


 もちろん魔族との戦いってのが大前提にはあるけれど、とにかく魔法が好きで好きでしょうがないっていう魔法バカが集まっていたんじゃないかと思う。


 それがいつしか国の中枢を担う人材を育成する場所へと変質していった。

 厳密な魔法学院ではなくなり、エリート育成所というか幹部候補生学校みたいな感じになっちゃったんだろうね。


「さて、そろそろみんな腕試しをしたくなってきたんじゃないか?」


 いつも通り、始業時刻ぴったりに教室に入ったサトゥーム教官が、開口一番に言った。

 戦いたかろう? と。


 魔法戦技の研究開発が専門というだけあって、とってもバトルマニアです。





 というわけで実習が行われることとなった。


 強制ではないが魔法騎士を志望する者はなるべく参加するようにというお達しだったので、俺はもちろん参加する。


 父が騎士だからというのもあるが、文官の道はあんまり考えてないんだよね。

 や、文官も大事な仕事なのはわかってるけど、やっぱり武勲を立てて出世していずれは城持ちにって野望を抱いたっていいじゃない。


「僕やリューちゃんが魔法騎士志望なのは割と当然としても、姉御やクライまで実習組に入るなんて意外だったよ」


 とはリンゴの言葉だが、俺も同感だ。

 メグはパン屋の娘だし、クライは地方役人の子供。

 あんまり武芸とは縁がないもの。


「そうだね。キミたちの武勇に憧れたからって言ったら、信じるかい?」


 くすくすと笑うクライだった。

 これは、絶対に本当のことは話さないな。

 俺は肩をすくめ、信じるよと言っておいた。


「ゆーて、クラスの半分以上が参加希望なんだから、たいした理由なんてなくていいのよ」


 どーんと豊かな胸を胸を張るメグ。


 新しいクラス編成で俺たちは一年三組である。前と違って成績順に分けられたわけではないが、ある程度はいままでのクラスを引き継いでいる。

 というのも、たとえば俺たちのことを劣等クラスと呼んで蔑んできた連中が同じクラスになったらどうなるかって話。


 逆のパターンでも一緒で、間違いなくトラブルに発展するだろう。

 なので、元D組のメンツはほとんどそのまま。そこにどうしても同じクラスでやりたいと強く希望する生徒たちが加わった感じだね。


 で、その三十人の中から実習参加を希望したのは十八人である。

 その全員が魔法騎士を志望しているかっていうと、そんなことはないだろう。


 みんな腕試しをしたくなっちゃったんだな。

 自分で編み出した魔法を使ってみたくて仕方ないんだ。どこまでやれるのか、どこまで通用するのか、それだけを知りたいって感じ。


「結局、バトルマニアばっかりってことか」

「もちろんリューちゃんもね」


 リンゴが苦笑いする。

 お前だってそうじゃないか。体を流れる血の温度は俺とたいして変わんないだろ。

 メグを乱暴しようとした獣どもを、二人で叩きのめしたんだから。


「今回も一緒に暴れようぜ」

「え? やだよ。僕はリューちゃんとは組まない」


 ふられた!

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