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第12話 急展開


 はたして、そこに立っていたのは当のアナだった。

 けど、学院の制服を着ていない。

 むしろこの服は……。


「馬脚をあらわしたわね、ローングリン。確証もなく生徒が不正行為を行ったと決めつけなど、教育者の資質なしと判断します」


 そう言って両手で広げた書類には勅印が捺してあった。

 まじかよ、勅命書じゃないか。


 それ以前の問題としてアナが王宮審問官の官服を着ているこの状況に、ちょっと頭が付いていかない。


「ばかな……」


 ローングリンのうめきに、残念ながら全面同意だ。


「上意に対して馬鹿とは不敬罪を適用しても良いところだけど、聞かなかったことにしてあげるわ」


 アナの笑顔が怖い!

 肉食獣の笑みってやつだよ!


 ともあれ、アナは勅命を帯びて動いている。ということは、彼女の言葉は国王陛下の言葉と同じってこと。


 つまり反論も質問も許されない。ひたすら平身低頭して聞かないといけないんだ。

 はっとして、俺たち四人は慌てて片膝をついて視線を床に落とす。


 あまりの事態におもわずぼーっとしていたけど、国王陛下の前で立ってるなんてあり得ないからね。


「昨今の卒業生の少なさを陛下は気に病んでおられた。それだけではなく、ここ数年間で王国各所に配置された幹部候補の質の低さにもな」


 唇をゆがめ、アナが説明を始める。

 どうしてこうなったのか知りたいだろうからな、と前置きするあたり、学院長に対する侮蔑がかなり強い。


 卒業生の少なさ質の低さは、あるいは魔法学院の教育に問題があるのではないかと考えた王国政府はエージェントを送り込んで調査することにした。

 それがアナ。


 わずか十三歳で王宮審問官に抜擢された超天才だった。

 魔法学院卒でもなんでもないのに。


 普通にやばいよ。

 なんでそんなことが起こりえるんだよ。


 もしかして、魔法学院って存在自体が疑惑の対象だったとかじゃないのか? それ。

 だから別口に養育機関をつくって人材を育てていたとか。

 しかも秘密裏に。


「乗り込んでみてびっくり仰天ね。魔力量でクラスを分けるなんて」


 両手を広げる。

 え? そういうもんじゃないの?


「そりゃあ強い攻撃魔法が使えるだけの役立たずが前線基地に得意顔でやってくるわけよね。肝心なことをなにひとつ教えてないんだもの」

「役立たずだと!?」


「上意だっていってんでしょ。誰が発言を許可したのよ。ローングリン」

「ぐぬぬぬぬ……」


 ふたたび学院長が黙り込む。

 この場合、国王陛下が許可していないのに発言したってのと同じ意味だからね。


 上意命令怖えぇ。

 アナも怖えぇ。


 ともあれ、魔法学院は王国政府が考えている以上に腐敗していた。

 D組に入れられた者に対する露骨な嫌がらせ、教育放棄、これだけでも大問題なのに、D組生徒を暴行したC組生徒がお咎めなしとか。


「報告を受けた上司が頭を抱えていたわ。どう国王陛下に報告したらいいのかって」


 本当はそこでローングリンを逮捕してしまっても良かったらしい。

 けど、D組の生徒である俺たちが面白い行動を始めたんで、すこし様子をうかがうことにした。


 なかなかの反骨精神。

 人類の剣であり盾である魔法騎士は、このくらいでなくては務まらない、とね。


「そしたら、また面白いことを考えたじゃない。技能試験の成績で放校処分とか、いつそんな権限を学院長が持ったのよ?」


 たかが一つの試験結果で退学というのはあり得ないんだそうだ。


 成績や生活、性格などを総合的に、少なくとも一年くらいは監察した上で、軍人にも文官にも向かないって判断された場合だけなんだってさ。

 放校なんて。


 万人に一人しかいない魔力をもった人間ってのはそのくらい貴重だし、そんな力を持った人間を簡単に野に放つのも良くないんだそうだ。


 それに、魔力なんかなくても宮仕えは普通にできる。

 簡単に放逐するするほど、どこの国だって人材畑も豊作なわけじゃない。


「とはいえ、魔法も教わっていないD組がC組に勝てるとは思っていなかったわ。だから放校処分を言い渡した瞬間をエックスデーにしようと考えていたのだけれど」


 なんとD組はC組を打ち負かした。

 圧勝だった。

 俄然興味を持ったアナは戦ってみたくなったのだという。


「だから、技能試験で私がD組と戦ったのは任務外ってこと。それよりずっと前にあなたの運命は決まっていたのよ。ローングリン」


 ぱちんと指を鳴らせば、パーシヴァルとデイタリュースが学院長室に入ってくる。

 二人とも審問官の官服をまとって。

 なんてこった。こいつらもなのか。


「連行して」

「了解」


 後ろ手に拘束されたローングリンが、うなだれたまま部屋を出て行く。

 これから厳しい取り調べが行われるだろう。

 教官たちも同様だね。


「まさか……リリーも審問官なの……なんですか?」


 丁寧に言い直すメグ。まあ、相手は審問官だしね。同輩の学生ではなくて。


「リリークローンは普通の学生よ。姉御」

「良かった。あんなちびっ子が審問官だったらどうしようかと……」


 ていうかメグさ、他に気にすることあるよね。

 いっぱいあるよね。

 そして、なんでアナがメグを姉御って呼ぶんだよ。


 どこからつっこんでいいのか判らないよ。


 救いを求めるように、リンゴとクライを見たら一方はついっと目をそらし、他方はひたすら床を見つめていた。

 完全に丸投げモードである。


 うらぎりものどもめぇ……。


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これは……姉御とリリーで男の娘おねショタ!?万歳!!
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