表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自然詩文  作者: 足利直哉
9/21

影を漉くみぞれ雪

 東京で夜、雪が降っていた。


みぞれ雪だった。


東京駅でずっと、その光景を眺めていた。


水気を含んだ雪が落ちていく。それ自体重い。不器用に落ちていく。決して軽快ではない。


そんなみぞれ雪が、丸の内一帯を包み込んでいた。


丸の内の高層ビルから放射している光が、みぞれ雪の霧に包まれて、茜が差したようになっていた。


鋭い光線が霧に吸い込まれ、柔らかく拡散し、朧な形になって広がっていた。景色全体にどこか、淡いものがあった。


そんなみぞれ雪は、この東京の夜の影を、漉き続ける。


どろどろの紙を伸ばすように、広がっている暗黒をみぞれ雪の降り続ける筋が、漉いていく。


夜の闇から汚れが落とされ、灰色がかった透き通った闇は一層、鮮度を持っていた。儚かった。


雪はレールの上に不時着し、すぐに消えていく。もはや波紋を広げることもない。


しんしんと、重苦しく降っては、瞬時に、儚く、消えていく。悲しくなる。


いつかこの命に、終わりがやってくる。その終わりに向けて、私たちの心はみぞれ雪となって、重く降りしきっている。


終わりはこの光景のように、暗くよどんでいる。そこに着地した後、息は切れ、すぐに消えていく。


それが、人間の一生なのか。


雪は儚い。温かみもなく、冷たさしか感じられず、儚い。


そんなみぞれ雪は、終わりに向かって降りしきり、全ての影を漉いていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ