雪
雪が降るのは、どうしてあれほどまでに悲しいのだろうか。
雪はさらさらと降り続ける。暗い雲から、あるいは暗闇から、しんしんと降り続ける。
無音のまま、やがてすぐに消える運命を背負って、降り続ける。
その降り続ける姿が生きることそのものだとすれば、誰も保証してくれない人生のようだ。
重みもなく、桜の花びらが散るよりも無情の色をして、無機質に落ち続ける。
あらゆる感情が褪せて抜け落ちてしまったかのようだ。そんな雪がしんしんと、悲しく降り続ける。
泣いているかのようだ。褪せた感情が乾涸らびて、涙だけがこぼれる。何の意味もなく、こぼれ落ちていく。
そして音もなく、降り続ける。やがて積もっていくが、いつか消えてしまう。
そのさらさらとした、冷たい雪は、手に触れたら冷たく、無機質で、何の温かみも呼び起こさない。
雪は悲しい。
雪が降っているとき、きっとこの世では多くの人が泣いているのだと想像する。
誰にも聞き届けられることのないむせび泣きを発しながら、それは積もった雪が消えていくように、悲しく消えていく。
雪が降るのは悲しい。
雪が降っていると余計に寒い風を感じて緊張する。
だからせめて、雪だけは降ってほしくない。雪が降れば悲しい。