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自然詩文  作者: 足利直哉
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陰鬱の雲と爽やかな空

 実家のある福岡に帰省していたとき、晴れた日は一日にもなかった。ずっとどんよりとしていて、雨が降り続けていた。


そしてその際、陰鬱な気分に苦しめられた。そんな気分で上を見上げていると、どこまでも灰色の厚い雲の表面に、覆われていた。


自動車が通り過ぎていくときの騒音も、工場地帯の陰鬱な煙のたなびきのように、暗雲を背後にして静かに、かすかに消えていく。


とにかく、ものすごく陰鬱だった。


こんな気分でいると、自然と暗雲というものを、陰鬱にたとえたくなってしまう。陰鬱な気分でいるときには、雲の表面はどこまでも分厚い。



 しかし今日、久しぶりに、青空を見た。


東京に帰ってきてからというもの、翌日晴れ渡った空が現れた。


穏和な色をしつつも光をたたえている空が、今目の前に広がっている。この光を浴びることで、気力が湧いてきそうな気がする。


光という光が空の中を果てしなく揺蕩っていて、それがこのアパートの部屋の中に染み通っていく。そして、何もかもが爽やかな気分になる。


からっとした光が、生きていくうえでいかに重要であるかに気づかされる。


夥しい光を浴びて、街中のあらゆるものが輝いている。それは、宝石の輝きの断片のように、鋭い光を放って輝いている。


この輝きの鋭さがそのまま、生きていく力なのだと思う。


陰鬱な気分でいると、どうしてもくすんでしまう。それからは、光の予感が欠けている。


しかし、何かを跳ね返すようにして鋭く輝くものは、そもそも、陰鬱なものが自分の中に浸透してくることを許さない。今空を眺めていると、そんな気分になる。


ありがたい青空だ。久しぶりにこの青空を見ることができてよかった。


青空を見続けることはきっと、未来に進んでいくための希望だ。


この果てしなく広がる、そして果てしない奥行きのある青空を自分は眺め続けて、自分の視界は青空を切り裂いて進んでいく。


船が通るときに海でさざ波がかすかに立つように、空の上で波紋の波動が広がっていく。視界が青空を滑らかに切り裂いて、波を立たせて進んでいく。そして、そうして自分は、空をかき分けて進んでいくのだ。


やはり青空を眺めないことには、決して先に進むことはできない。



今回から、感想欄を開放しました。これからは自由に感想を書くことができます。しかしながら、感想に返信することは、ある事情により、できません。その点に関しては、ご理解いただけたらと思います。

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― 新着の感想 ―
ボードレールの「パリの憂鬱」を思い出しました。散文詩、いいですよね。 陰鬱に押しつぶされないように、これからも書き続けてください。
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