鏡面の月
東京の夜空を見上げてみると、満月が浮かんでいた。
辺りは全て真っ暗で、そのただ中に満月が浮かんでおり、その輝きがものすごくまぶしかった。
その輝きが際立つあまり、周囲から星の予感が完全に消えていた。
もちろん東京でも、時々一等星をいくつか見つけることができるが、この満月の輝きに気圧されると、星もきっと息を潜めるのだろう。
そんな満月は、鏡面のように思えた。
鏡の表面を徹底的に磨き上げると、このような眩しさが生まれてくるのではないかと思った。その鋭い輝きによって、夜空全体に黄色い月光がほんのりとにじむ。
そしてその鏡は光を鋭く反射して、その表面に投影されたものが、見るものに向けて眩しく映るのである。
その結果として、この鏡面のような輝きによって、この世界の何かが、ギラギラと表面で輝いて投影されているように思えた。
それは、龍なのだろうか。
月の表面には、何か不思議な模様が浮かんでいる。それが、一匹の龍に見える。
まぶしい輝きの背後で龍の息吹が息を潜めているような気がする。
月の世界を龍が緩やかに舞っていて、その姿態が満月の鏡面の輝きにかき消される。
そして月は鋭く輝き続ける。そんな印象を、夜空を見上げていると感じた。
月は面白い。
普段だったらほんのりとした黄色い光を発するというのに、完全に満月になった頃にはこうして、鏡の表面のような鋭い表面でもってまぶしく輝く。
こういった光景からは、威厳が感じられる。
この世の中はどうも、くすんだものが多い気がするものの、この鏡面の眩しい輝きによってそれらは掻き消える。
とにかく、もう何もかもが朧だ。この世の中に棲息しているあらゆるくすんだものには、汚れとか卑しさといったものが混じっているような気がする。
しかし、この鏡面の月は、そんなものに比べて遙かに明晰で、威厳がある。
こういったものを、威光、と呼ぶのだろうか。
この威光がある限り、夜空は確かな力でもって、この人間の世界の上で君臨することになるだろう。
その君臨する力に対して、世間の曖昧さを取り払ってくれるのではないかと、望みたくなってくる。




