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自然詩文  作者: 足利直哉
16/21

裾を引く予感と、雷の迸りのような樹影

この文章も前回の文章と同様に、二月末にそこに行ったときに書いたものです。


自然のある街を包む春の陽気を感じていただけたらと思います。

 その街で一人、青空を背にして立つ木々を眺めていた。


まだ、緑が芽吹く予感は感じられない。


冬は確かに過ぎ去ったが、木々は冬のままだ。全て剥き出しで、何もかも晒されている。


その印象を元に、夏のあの、枝葉が濃い緑を輝かせる夏を思い出すと、緑は木々にとっての単衣だと思った。


宮中の美女たちが着る単衣は、そのしだり尾の長い裾を床で引き摺り、さらさらと音を立てる。


そのように、夏の間木々は、深くもあり爽やかな緑色の単衣を、風に靡かせながらさらさらと、音を立てて輝きながら揺れていた。


しかし木々が纏っていた緑の服は季節の移り変わりと共に全て取り払われ、剥き出しだ。


しかしそこに恥はなく、むしろ力がある。



 無数の枝が空に向かって伸びている姿は、雷の迸りのようだった。


湿気の多い夏、厚い積乱雲が空を覆う中、繊細で力のある、無数の稲妻の筋がギラギラと輝き、空を覆う。


天は力で満たされ、やがて轟音が響く。


稲妻は繊細でありながらも、人の心の弱い繊細さとは違って、強い。そんな雷の有様を、剥き出しの木々から感じた。


そしてその無数の枝の伸び広がりが、他の樹影と重なって錯綜し、その全体が霜が降ったように細かい。


その木々の霜には、雪の結晶に似た繊細な体系があった。


枝が幾重にも重なる光景は、雷が暗い空で迸る力強い印象がありながらも、霜氷の緻密な全体を想起させるものでもあった。


力強い細かさも重要であると、この時直感した。



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