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自然詩文  作者: 足利直哉
11/21

ワームホール

 今日の東京の空は曇っている。雨が降っている。


少し肌に触ってひんやりとするような、霧のような雨がずっと降り続けている。


その雨脚は雪のようにさらさらとしていて、梅雨時の激しい雨の感触とは全然違う。


そんな弱い雨に、東京が包まれている。


そんな街中を歩いていると、ふと、ワームホールという言葉を思いついた。


これは確か物理学で出てくる言葉で、時空が捻じ曲がったときにできるものだったはずだ。しかし自分はそんな、時空の歪みについてはほとんど考えずに、ワームホールという言葉をずっと心の中でつぶやいていた。


なんだか、心の中が生暖かくて、それでいて今降っている霧の雨のような覚束ないものが、軽くくすぶっているように思えた。


そんな生暖かい陰鬱がずっと、心の中に滞留している。


それはちょうど、めのうの石のようだ。


この石は、ダイアモンドのようなはっきりとした輝きを持った石とは違って、濁りのあるくすんだ表面をしたものである。


めのうの表面ははっきりとせず、曖昧で薄く濁ったものがずっと弱々しく棚引いている。


自分は今そんな、めのうの石のようなワームホールなのではないかと思った。


冷たくて冴えたものがなく、湿気の多い生暖かさが充満していて、かといって心の中にある何もかもが陰鬱に薄汚れているような、そんな光景だ。


濁りのある空虚だ。


そんな曖昧な状態をイメージしながら、雨降る町を見上げてみると、なんだか悲しくなってくる。


どっちつかずで、どこか暗いものがずっとくすぶっているような予感を抱えて、これからも生き続けなければならない。


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