表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自然詩文  作者: 足利直哉
10/21

オルゴール

 商店街を歩いていたときのことだった。オルゴールの音が聞こえてきた。


どこかで鳴っている。どこなのか分からない、でもずっと聴いていた。


いつの間にか立ち止まっている。懐かしい。


故郷って、こんな感じなのだろうかと、思った。


この、跳ねるような、鋭い音でありながらも、どこか包容力のある音色が、そのまま故郷の靄となって、自分を包み込んでいくような気がする。


故郷の記憶を反芻する。そして淡く蘇る。



 都会の外れにある標高の高い住宅地で生まれ育った。森があり、空があった。


森の木々はいつも風に吹かれて、ゆっくりと揺れていた。


近くにある大きな公園には大きな草地があり、陽を浴びて薄緑に輝く芝生がどこまでも広がっていて、その広がりが青空の果てしなさをくっきりと際立たせていた。


遠くに都会のビルの小さな陰影を一望でき、その向こうには海がある。


視界を広げてみれば、両手を伸ばすよりも遙かに広大なものがこれほどあると思えた、そんな故郷だった。



 でももう、帰っていない。帰れない。


もうあの頃とは、変わってしまった。人として、根本的に変わってしまった。


今でもあの瑞々しい光景が故郷の面影としてこの心の中に住み着き、それがこのオルゴールの優しい音色にかき立てられ、そしてもう帰れないと自覚し、急に泣きそうになる。


そう、もう戻れない。


きっと、生きていて、何かを失ってしまった。昔あったはずの、新鮮でまだ曇りのない日々には、戻ることはできない。


心が汚れているわけではないが、視界が冴えない。


悲しいことだろうか。


オルゴールの音はいつまでも鳴っている。いつまで聴き続けるつもりなのだろうか。


今しばらくは、ここから動きたくない。

タイトルを変更しました。タイトルに綺麗という言葉を入れるのを忘れていたので、盛り込みました。自分は基本的に文章を書く際、綺麗な文章しか書けないのですが、綺麗なものを書くのは良いことだといろいろな人に言われてきたので、普段綺麗な文章を書いていることを強調するために、この言葉をタイトルに含めました。文章の中にある詩情によって、文章の基礎となっている綺麗さがより際立つことでしょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ