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森のヤンヤ 短編

作者: マルタ

森のヤンヤ


 大きな屋敷に住む毛並みが綺麗なふくよかな猫は、今日も一日目が覚めると主人である少女に甘える。

 今日は遠出するからと、身支度をし猫を抱き抱えて外に出ようとしたとき、猫が甘えるような声で鳴き足を止めた。

 猫は少女の腕から降りると、机に置いてある赤い色のヘッドドレスを見ている。いつも少女に付けてもらうこの猫にとっては大切な物だ。

「あ、忘れてた。ごめんね。」

 少女は猫の頭をひと撫ですると、ヘッドドレスをつけてあげる。猫は上機嫌になり、にゃあと鳴くと少女の腕に戻って抱き抱えられた。

 外では執事が待ち、少女が馬車に乗ると目的地まで馬車を走らせた。







ーーーー

 覆い茂る長い木々のおかげで、太陽の光は地上まで届くことなく薄暗い森では小鳥の囀りが静かに響き渡る。

 10メートルほどの長さの木で、真ん中辺りの幹の位置に穴を開けて暮らしている生物がいた。その生物は2頭身の体を持ち、2速歩行で生活している。頭から生えた柔らかく羊の毛の様なモコモコとした髪の毛をウサギの耳のように左右に生やし、短い手をお腹の上に乗せて眠っている。

「……ヤ……、ヤンヤ……?」

 生物は何かに反応して目を覚ますと、目を擦り木の幹から体を出した。


「…………きゃああああ……………、たすけて…………」

「ヤンヤ!」


 誰かの悲鳴を察知すると急いで木から飛び降り、悲鳴が聞こえる場所に向かった。








「いやー!!! こっちに来ないで!! 醜い生き物!!!!」

 森の木々に張られた巨大な蜘蛛の巣に引っかかった1匹の獲物は宙ぶらりんになりながら騒ぎ立てる。

『ほほう、これはこれは随分と丸くてデカい獲物だ。この森の奴じゃないな。久しぶりのご馳走だ!』

木の枝を軋ませ、巨大な蜘蛛が騒ぐ獲物にゆっくりと近づく。獲物は糸にへばりついた手足は動かすことができず、口で罵倒し抵抗するのが精一杯だった。

『……ほう、お前人間に買われてた生き物だなぁ。少しばかり魔力を感じるぞ。飼い主は魔法使いだったか。』

「それが何よ!! いやー!! お嬢様!!! 助けて!!!」

 『馬鹿め、この森に人間は入ってこん。何せ、"墓場の森"と呼ばれているからなぁ。お前も素直に自分の人生の最後を受け入れてろ。……さてさて、太った獲物だ。ゆっくり針で溶かして吸ってやる。』

 蜘蛛は口から針を出し、一歩一歩近づいてくる。

「いやいやいやー!!!!」

 首を振り、目をつぶって覚悟したとき、どこからか

「ヤーーーッッッ!!!」

 と声が聞こえてきた。

 それと同時に、蜘蛛の巣が張られた木が大きく揺れ

『なんだ?』

 と蜘蛛が木に視線を向けると、ふと木の棒が蜘蛛の顔に当たる。

『イタ!!』と蜘蛛が怯んでる隙に、生物は左右に生える髪を鋭い鎌の形に変えて「ヤヤーー!!」と獲物の周りの糸を切って解放させた。

  獲物は下に落ちると、「もう最悪!!」とその場から逃げ去ろうとする。

『……くく、逃すか!!』

 痛みがある頭を撫でながら蜘蛛が獲物に向かって糸を吐くと、「ヤンヤ!!」と生物が間に入り辺りに落ちていた木の棒に糸を絡ませ防ぐ。

  「ヤヤン!!」

 その一瞬に、生物は髪を5本指の手の形に変えて獲物を持ち上げると、騒ぐ獲物をよそに急いでその場から逃げ去った。






――――

「おろして!! おろしなさいよ!!!」

 暴れる助けた獲物を、「ヤン!!」と生物はもう安心だろうという事で髪から離した。

「いた!! もっと優しくおろしてよ!!! ああ〜、私の綺麗な毛並みが台無し……。」

  獲物だった猫は舌で毛繕いを始める。生物は猫を突くと目の前の一本の木を指差した。

「? なによ?」

「ヤン!」

「……まさかあの上の方に開いてる穴があんたの家?」

「ヤヤンヤン!!」

「きったない木ね〜。」

 猫は無関心に毛繕いを続ける。その時ふと猫の赤いドレスヘッドが、生物の目に留まった。

 

「ヤン……?」

「何ジロジロ見てるのよ。あんた馬鹿そうな顔してるから言うけど、私は高貴な"ラディキャット"よ。あんたみたいな汚いヤツが、私の体に触れる事自体おこがましい事なんだから。」

「ヤン……。」


 猫に悪態をつかれても、生物はジッと頭につく赤いドレスヘッドを見ていた。そして猫に近づき、「ヤヤンヤン!!」と手を出しドレスヘッドを取ろうとする。

「ちょっ、ちょっと何すんのよ!!」

「ヤヤーッ!!!」

「私の宝物に触れないで!!!!」

 生物はそれを聞くと手を止めた。その隙に、体に思いっきりタックルし、生物を引き離す。

「ヤン…………。」

「はあはあ…………、最低、私に近寄らないで。」

「ヤヤン……!」

 生物は何かを言おうとしたが、猫は背を向けそのまま森の奥に姿を消した。

「……ヤンヤ…………。」

 残された生物は落ち込み、その場に足をつけて座り込む。森の上を見上げると、いつもは静かな森だが今日はやけに動物の鳴き声が聞こえる。

「……? ヤン?」







 ――――

「全く、何よこの森は! 早く抜け出してお嬢様のところに帰らなきゃ!! きっと心配してるわ!」

  猫は出口か分からない方角を走り続ける。木の上からは薄く暗闇を走る赤い色はよく見えた。

 木の枝に止まる鳥は声を上げて仲間に知らせる。そして準備が整うと一斉に猫に向かって攻撃を始めた。

「きゃあ!! いたい!! やめて!!!」

 鳥たちはクチバシと翼で猫の体を攻撃し、獲物を弱らせていく。毛繕いした毛並みはもはや見る影もなく荒れていった。

「いや!! 来ないでよ!!」

  前方に巨大な木の幹が割れた穴がある。その穴に一目散に飛び込み体を隠すと、鳥たちは諦めたのか森の上空に上がって行った。

「……酷いわ……、こんなの……。」

 幹の中から外の様子を伺っていると、突然5本指の鋭い爪を伸ばした腕に掴まれ外に引きづり出される。

「いたい!! なに!?」

「ははぁ……、これまたうましょうなエモノだなぁ……。」

  掴んだ正体はゴブリンだった。猫のふくよかな体を舐め回すように見ると、よだれを大量に流す。腰に巻いた汚い布と、大きな血走った眼球は猫にとって醜悪な生き物だった。

「いやー!! 離して!! 気持ち悪い!!!」

「うるしゃい。」

 猫を地面に叩きつけると、左手に持つ石でできた棍棒を猫の頭の前で振り下ろす。

「ひっ…………。」

「なかまといっしょにおまえをクウ。うるしゃいとあたまをくだく。」

 異様なゴブリンの目に睨まれ言葉を失い、猫は担がれてゴブリンの住処に連れて行かれた。







 ――――

「なんだこの毛並みのエモノは?」

「みないエモノだ。」

 ゴブリンは仲間の洞窟で猫をおろすと体を抑えながら、2匹のゴブリンに見せる。

「みつけたのはおれ……、毛はもらう……。」

「じゃあオレたちは身と骨だけか? たまたまおまえがみまわりでうんよく見つけただけだ。もしオレが見つけてたら3人仲良く毛を分けたぜ。」

「オレもそうする。」

 2匹のゴブリンに言われ、猫を取ってきたゴブリンは渋々頷いた。

「よーし、じゃあ毛の部位を決めよう。オレが体、お前は頭、そして捕まえたお前は尻尾だ。」

「ああ、それでいいぜ。」

「……おれ、少ない……。」

「身は綺麗な3当分してやるからよ。なっとくしろや。」

 話しているゴブリンは猫を持ち上げると、「ああ、くっせぇ。おまえ、人間に飼われてたな。」と顔をしかめる。

「そうよ!! 私に手を出したら私のお嬢様が黙ってないわよ!!!」

 それを聞いたゴブリン達は顔を見合わせ、大笑いした。


「ウヒャヒャヒャ!! お前、なんで自分がこの森にいるか理解してないようだな!!」

「のうてんきなヤツで!!」

「何よ!! 馬鹿のあんた達に笑われたくないわ!!」

「ハハハ!! 教えてやるよ、お前は捨てられたんだ。」

「そうだ。この森に来る飼われていた生き物はみーんな捨てられた生きもんなのよ。」

「……!! 嘘よ!! 嘘!! あんた達の言う事信じないわよ!!!」

「じゃあ聞くが、お前の主人魔法使いだろ。」

 「そ、そうよ!! それが何!?」

「この森に捨てられる奴らはみーんな主人が魔法使いだ。だからよ。オレ達も気になってずーっと前によ、捨てられたヨボヨボの犬のジジイに聞いたんだ。そしたらそいつは主人の話を盗み聞きしてたみたいで、『魔法使いの側で飼ったペットはこの国では森で捨てることに決まったいる。街で捨てると、魔法力を宿して手に負えなくなる可能性がある』からだそうだ。分かったか?」

「……!? …………。」

「あのジジイ、骨と皮だけだったな。まじかった。」

「じゃあ毛からヒキ剥くか。」


 猫は信じられなかった。しかし追い打ちをかけるようにゴブリンは猫からヘッドドレスを取ると、「こんな派手な色のもん身につけさせられるとは、よっぽど嫌われてたんだな。赤なんてこの薄暗い森じゃあ目立って標的の的よ。」と投げ捨てる。


「…………!! か、返して私の大切な物なの!!!」

「もう必要ねぇだろ。お前は俺たちの腹に入るんだからよ。」

「毛のついてる生きもんなんて久しぶりだぜ。森にはいねぇからな。」


 その言葉を聞いたとき、猫はふと助けてくれた生物を思い出す。

「……い、居るじゃない!! やんやんいってる毛の長い生き物が! もりに!!」

「あ? なんだお前、あいつを見たのか?」

「あいつは俺たちもめいわくしている。食事の邪魔しやがるからな。始末してぇが住処側からねぇ。」

「うん。」

 ゴブリン達が頷いていると、猫は「す、住処なら私知ってる!! さっきまであいつといたの!! 案内するからた、助けて!!」と提案した。それを聞いたゴブリン達は顔を見合わせニヤリと笑うと、「よーし、じゃあ案内しな。」と猫の首にロープを結び、洞窟の外に出た。

「あ、私の宝物も持ってきて……。」

 恐る恐る猫が聞くと、「ちっ。」とゴブリンは悪態をつきながら捨てたドレスヘッドを拾った。







 

 あたりは暗くなり、先ほどより視界が悪い。鼻が効くわけではないので猫は広い森であの生物の住処を探そうにも闇雲に探すしかなかった。しかし、ただウロウロしているとゴブリンに紐を強く引っ張られ首が痛むので、「……ここだったはず……。」と適当な木の前に立つ。   

 すると2匹のゴブリン達は石の棍棒を気に叩きつけ、木を薙ぎ倒した。

 あまりの暴力的な行動に猫が怯んでいると、「おい、先端の方には穴あるか?」「ないな、ハズレだ。」と猫を睨む。

「次外したらお前の尾を食いちぎってやる。」

 ゴブリンに脅され、震えながら猫は先に進む。自分は助けてくれた生物を売っただけでなく、森に危害を加えることに加担していると考えると罪悪感で足がふらつく。そして殺気に堪らなくなり、木をあてずっぽうに指した。ゴブリン達は先ほどと同じように、石の棍棒を木に打ち付けて倒そうとする。気が傾き始めたとき、「ヤンヤーッ!!!」と聞き覚えのある声が耳に入った。先ほどの生き物が上からゴブリンに飛びかかると、髪の形を拳のグーに変えて紐を持つゴブリンを殴る。

「こ、このチビが!!」

「向こうから来やがった!!」

 1匹のゴブリンは不意打ちで気絶させ、猫の前に立ちゴブリン達を睨むと「ヤヤンヤーッッ!!!」と左右に分かれた髪を拳の形に変えゴブリン達に向かって行った。

 石の棍棒を防ぎ、ゴブリンの顔を殴る。後ろから攻撃してきたゴブリンを避けようとした時、足元にあった枝に引っかかり背中を思いっきり殴られてしまった。

「死ね、チビが!!」

 ゴブリンは背を向ける生物を何度も石の棍棒で殴りつける。それを見ていた猫は、震えながらも「や、やめてー!!!」とゴブリンに体当たりした。

 不意をつかれたゴブリンが、「このやろー。」と猫を睨むとミシミシと嫌な音が響く。後ろを見ると、傾きかけていた木がゴブリン達に向かって倒れてきた。

「う、うぎゃあああああ!!!」

「ヤ、ヤンヤ!!!」

 生物は髪を手のひらの形に変えて猫を持ち上げ、放るとその木に巻き込まれて潰れてしまった。

「はあはあ………………、え………………。」

 あたりが静かになり、木に押しつぶされて死んだゴブリン達が視界に入ると猫は鼓動が早くなった。すぐそばで自分を助けた生物も横たわり、「あ、あなた……。」と涙を浮かべながら呟くと「ヤン!」と起き上がる。

 どうやら、この生物は運良く木に挟まれなかったのだ。しかし、左右に伸びる髪の毛の片方が木に押しつぶされて「ヤンヤン!!」と焦りながら引き抜こうとしている。

  「ちょっと! 無理に引き抜くのはダメよ!! 穴を掘るの!!」

 猫は生物に近寄りアドバイスすると、「ヤンヤ!」と頷き小さい手で穴を掘り出した。猫も一緒に手伝いなんとか髪を引き抜くと「ヤンヤー!!」と生物は喜ぶ。

 しかし潰された影響で、左右に伸びていた髪の左側はウサギの耳が垂れるように生物の顔に倒れた。

「ヤンー!」

  あまり気にしていなさそうな生物に猫は、「……なんで助けにきたの……。あんたに酷いこと言って……、あんたの事売ったのに……。」

  下を向きながら話しかける猫に生物は首を傾げながら、「ヤンヤン。」と猫の体につく葉や泥を払ってあげた。それを見ていた猫は涙を浮かべて、「うわ〜ん!! ごめんなさ〜い!!!」と大声で謝り、生物は猫の頭を撫でた。

 猫は泣きながら、「わ、私、ロイスマティーナ。あ、あなたの名前は?」と聞く。生物は「ヤンヤ!」と返す。

「やんやんばっか言ってて分かんない……。ヤンヤでいっか。よろしくね、ヤンヤ。」

「ヤン! ヤヤン〜。」

 ヤンヤと呼ばれた生物は照れているのか両手を両頬に触れて喜んだ。

「……変なヤツ……。……でも満足してるならいっか。」

 

 




 ――――

  木に潰されたゴブリンの1匹の腰にかかっている赤いヘッドドレスを猫は見つけると「あった!!」と声を上げ、口に咥えて回収する。一緒に探していたヤンヤは赤いドレスヘッドを咥えるロイスに近づき、「ヤン……。」と困った顔をした。

「ねえ、悪いけどこれ私の頭に結んでくれない?」

「ヤヤン……。」

 ヤンヤがずっと困った顔をしているのでロイスは理由を察したが、「……大事なお嬢様から貰った私の宝物なの。お願い。」と頼む。ヤンヤもそれを聞くと頷き、ドレスヘッドをロイスにつけ紐を結んだ。

「ありがと。」

「ヤン!」

 ヤンヤはゴブリン達に目を向けると、死体の下の地面を掘り出した。

「あんた何やってんの?」

「ヤヤヤン!」

 ヤンヤの言うことが分からず、ロイスは見ているとゴブリン達を木から引き摺り出し運ぶ。そして、何もないところを堀り、大きな穴を作るとその中にゴブリン達をそっと入れ穴を埋めた。どうやら埋葬していたようだ。

 ロイスは呆れながらも仕事が終わったヤンヤに質問した。

「……ところでこの森の出口ってどこにある……」

 ロイスがヤンヤに質問している時、ロイスの腹の虫がなりヤンヤは頷く。

「ヤンヤ! ヤヤ!!」

 ヤンヤはすぐさま走り出し、「ちょっとどこ行くの!?」と聞くロイスは1匹残されてしまう。30秒ほどでヤンヤは腕いっぱいにきのみを抱えて持ってくるとロイスの前に広げた。

「ヤン!」

「あ、ありがとう。」

 きのみをかじり、お腹を満たすと先ほどと同じ質問をヤンヤにする。

「ヤヤ?」

「だから出口よ? この森にあるでしょう?」

 「ヤヤー、ヤンヤン。」

 ヤンヤは首を横に振った。ロイスは一応言っていることが通じての返事だと感じたが、疲れもありその場で寝てしまう。ヤンヤはロイスの体を揺らすが起きないため、自分の住処に運んで行った。



 この森は外から来たロイスにとって敵ばかりだった。ヤンヤと行動しないととても生きられず、出口を何度も目指して進むも薄暗い森からは決して出られなかった。

 長い年月が経ち、いつしかロイスは出口を探すことを諦め森で一生を終えることを決意する。飼い主に再び会えないことはひどく落ち込んだが、どんな時でもヤンヤがそばで支え守ってくれたことに感謝した。

 そして自分の死が来るまで、決してお嬢様から貰った赤いヘッドドレスを外すことはなかった。







 ――――

  いつものように朝を知らせるわずかな光が森を差し込む。ヤンヤは、歳をとり体が弱り歩くことができなくなったロイスをおんぶして柔らかい木のみを探していた。



「……や、……ヤンヤ……。」

「ヤン。」



 ロイスに呼ばれ立ち止まると、「……い……いままで……ありがとうね…。」と小さく囁く。



「ヤヤン……。」

「さ、さいごに……わ、私の……宝物……、あなたにあげる……。……私のせいで……垂れた前髪……これなら……支えれるから……。」




  ヤンヤはゆっくりロイスを下ろすと、涙を浮かべてロイスを見る。ロイスはにこっと笑い、「さあ、つけてみて……。」とドレスヘッドに手を当てた。



 ヤンヤはロイスからドレスヘッドをはずし、自分の頭につける。ドレスヘッドは垂れていた左側の髪を支え、元のウサギの耳のように左右真っ直ぐ立った。




「ふふ……、あなたなら似合うと思った……。」





 ロイスは笑顔で最後の言葉を伝えると、ヤンヤはロイスの体を抱きしめ大きな声で泣いた――。







  赤いドレスヘッドを頭につける生物は、この森で何十年と生き続け暮らしていく。"死の森"と人々に呼ばれ、決して足を踏み入れない彼らはこの生物の存在を知らない。




               森のヤンヤ 終

 

 

 

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