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闇と同化する連続殺人鬼
都会の夜は、闇に沈む静寂の中に隠れた狂気を孕んでいる。ビル群の谷間を縫うように煌々と輝くネオン、車のヘッドライトが織りなす光の筋。見下ろせば、蟻の行列のように行き交う人々。その喧騒の裏で、一人の男がひっそりと息を潜めていた。
ーービースト
世間を震撼させる連続殺人鬼に付けられた名だ。
しかし、日々世間を騒がせ、いまや総理大臣よりも有名になった彼の存在に、誰一人として気づくことはない。影に溶け込むようにして、通りの片隅に立つその姿は、まるで異質な闇そのものだった。夜風が微かに吹き抜ける中、彼の目は次の獲物を探していた。
街灯の明かりが一瞬、その顔を照らし出す。その表情は冷たく無機質で、感情の揺れは一切ない。そこからは、彼の内に潜む常人には理解しがたい執着と目的を推し量ることはできなかった。