語る先はロボなのか
「誰か、いないか?」
何もない空間に向かって、呼び掛ける。返事はない。
「誰もいないのか?」
自分が一人だということを認めたくないのか、男は何度も呼び掛ける。
「ここにいますよ」
何度も呼び掛けて、なかば諦めかけた頃、突然暗闇から声が聞こえた。
「誰か、いるのか?」
声のあった方に目を向けると、そこには人型のロボットが佇んでいた。
「‐ここにいまスよ」
ロボットは虚空から眼差しを向けた。
「なんだ、ロボットか。探してるのはロボットじゃないんだよ。どこかに人間はいないのか?」
「‐あなたにはわたしがろぼッとにみエテいルのデスネ。まあみエかたはひとそレぞレだからそレはしかたないとしテ、そのらクたンブりにはきズツきまスよ」
「何言ってんだ、ロボット風情が。感情もないロボットが傷つく訳ないだろ」
「‐わたしにだッテ、こころがありまス。ひどいことをいわれればきズツクことだッテありまスよ」
ロボットには目がない。いや、多分ここに目があるべきなのだという場所は存在するのだが、そこには何もなく、どす暗い闇が広がっている。
しかし、男はその虚空から確かに視線を感じていた。
「ロボットに心がねぇ。最近のAIは自分に心があると思い込むまでになったのか。技術の進歩はすさまじいな。ただね、ロボ君。それは君の思い込みで、作られたアルゴリズムがそう反応をするように組まれているだけで、本当に感情があるわけではないんだよ。って真面目に話しかけてもしょうがないか」
「‐まあ、あなたがどうかンがエよウがじユウデスが。ここにはあなたがもとメルにンゲンはいまセンよ」
「そうなのか。何となくそんな気はしていたけど、この暗闇の中不気味なロボと二人きりってのも寂しいもんだな。まあいいや。暇だし、話相手になってくれよ」
「‐いいデスよ。わたしもひまをしテいましたのデ」