ヲタッキーズ133 エリア52.5
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第133話「エリア52.5」。さて、今回は極秘実験場との噂がある空軍基地跡にUFOが飛来、落雷に撃たれた女性が死亡します。
落雷を放つUFOを追うヲタッキーズは、超兵器開発を担うスタートアップの闇、国家レベルの駆け引きへと巻き込まれて逝くのですが…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 アキバのエリア51
深夜の神田リバー。黒い川面。静かな流れを横目にフェンスを越え廃格納庫に忍び込む男女。
神田リバー水上空港に近い河岸には、飛行艇の格納庫が散在スル。だが、この廃格納庫には…
"航宙自衛隊 アクマ秘密基地"
とローマ字で描かれ、その横には、
"侵入・撮影禁止"
と描かれたサイネージが錆びている。
「おい!フラッシュを焚くな!」
「ごめん。でも、この辺で地元の人は2度も光を見たって」
「ネットによると、この基地では、ナチスの超兵器を継承したスタートアップが、極秘にUFOを開発してたって噂だ」
すると、この手のグループに必ずいる顔は凡庸だけど生まれて初めてチヤホヤされて居着いた"紅一点"が文句を逝う。
「え。亡霊だって聞いたから来たのょ。アタシ、帰る」
「ま、待ってょアケミちゃん。第二次大戦中に死んだUFOパイロットの亡霊って線もアル。アメリカのUFO基地"エリア51"みたいにきっと何か見つかるよ」
「じゃココが新しいパワースポットになるのね?リアルに近いから"エリア52.5"と命名しよ?」
簡単に納得して一斉に夜空を見上げるUFOヲタク達。
双眼鏡で目をこらすが何も起きない。時間は過ぎる…
「ねぇ今、4時20分ょ。日の出まであと2時間だわ。アタシ、帰る」
「ま、待て。アケミちゃん、密かな軍事行動にとってはコレからがゴールデンタイムだ」
「私、コーヒー飲みたい」
脈絡なく"ヲタサー姫"がワガママ発出。直ちに、ヲタク達が自分の魔法瓶からコーヒーを注ぐ。
マグカップがいくつも差し出される中、凡庸な顔の持ち主は鷹揚にラテ入りのマグを選びススる。
「聞こえた?雷鳴?」
「ただ、君の心臓の鼓動だけを聞いていたい」
「バカ。何か…飛んでる?」
全員で空を見上げると夜明け前の深い闇に…突然の雷鳴w
「嘘?」
「まじ?」
「落雷だっ!落雷が…近づいて来る!」
暗闇から迸る青白い落雷が地面に激突し爆発スル。しかも、その爆発はドンドン近づく。閃光。爆発。巻き起こる噴煙。
「何だょアレ?」
「人ょ!命の始まりを見る」
「space runway?おい!危ないぞ!コッチへ!」
1人の金髪女子が落雷の合間を縫うようにして必死に走る。金髪ポニテと逝うヲタク心を鷲掴み系だ。
ポニーテールを揺らしながら必死に逃げる彼女を、まるで追いかけるように青白い落雷が大地を撃つ。
ついに落雷は追いつき、彼女の背中を直撃。絶叫w
「アレは何?鳥ょ!」
「飛行艇だ!」
「いや…UFOだょな絶対」
みんなが見上げる漆黒の空に、光の点が2つ浮かんでいるw
茫然と立ち尽くす"姫"とヲタク。その間に光は飛び去る。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌朝。僕はSATOに呼ばれ、現場にケッテンクラートで乗り付ける。万世橋のパトカーに混ざり軍用トラックと兵隊←
「テリィたん。こっちに来て」
「ラギィ!UFOにやられて死人が出たって…」
「被害者の熱傷がひどく身元の確認には時間がかかりそう」
南秋葉原条約機構は、アキバに開いた"リアルの裂け目"からの脅威に対抗する防衛組織だ。
ラギィは、万世橋警察署の警部で、僕とは彼女が"新橋鮫"と呼ばれてた頃からの付き合い。
「ココは?」
「ずいぶん前に閉鎖された基地らしいわ」
「YES。ココ"佐久間ベース"は1986年に閉鎖されてる。新型軍用機の試験場として1903年と1986年の2回閉鎖されてる。開設は1938年。基地の名前は、神田佐久間河岸町からとってる。因みに、この地は単成火山の噴火で750万年前に誕生。正確には760万年前だけど」
良くしゃべる女子だ。黒髪に黒メガネ。委員長タイプ。
「貴女は?」
「これは失礼、第44課のフロイ・メポンです。貴方はテリィ宙将?」
「第44課?何の?」
率直な疑問を口にスル。
「防衛総省」
「IDを見せてくれ」
「宙将、第44課の職員は、IDを携帯しておりません。理由は申し上げられませんが、何なら電話で確認を」
僕に名刺を差し出す。角の丸い名刺?昭和のキャバかょw
因みに、キャバはキャバレーの略。キャバクラじゃナイ←
「あの、ココは警察の仕切りナンだけど、アンタは市ヶ谷の人?第44課って何の担当?」
「ラギィ警部、貴女に任務の内容を話す事は許されていない。だが、部署の沿革は話しておくわ。第44課の設立は、1600年、関ヶ原の戦いの最中、東軍内で武器の盗難や横流しが横行したコトにさかのぼる…」
「何か大河ドラマの予告編みたいな壮大な展開だけど、横流しって、食料とか物資とか車輪とか?ってか、なぜココに?」
ラギィ警部のもっともな疑問。
「軍の施設で起きた事件だから。所轄はともかくSATOの捜査を見せていただくわ」
「え。後で報告スルょ」
「エイリアンが光線を浴びせたとか、パイロットの亡霊だとか。ヲタク達は完全に理性を失ってる。仕事柄、私は理性を保ち続けるのが難しいのょブツブツ」
フロイ・メポンは、軍用トラックにハリボテの兵隊の人形を載せ走り去る。荷台には大きく"秘密部隊"と描いてアルw
「思い切り怪しいな」
僕はつぶやく。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋に捜査本部が立ち上がる。
「その通り。"佐久間ベース"は1986年の閉鎖後、全く使われていなかったらしいわ」
「で。UNIQLOから抜け出たようなファッションのこの方々は何者?」
「清く正しいUFOマニアです。ネットで、かなり話題になってるらしい」
僕が近づくと彼等は一斉に立ち上がり喋り出すw
「我々は、証拠を探しに来たんだ!」
「何の?」
「首相官邸の極秘UFO計画さ!」
そんな計画がアルのか?!
「彼の聖地はネリスと呼ばれ…」
「リリス?」
「ソレはヲヴァンゲリオン。エリア51にある空軍基地ですにゃ。知らないの?」
面倒臭い連中だ。長くなりそう。溜め息をつく僕←
「でもさ。僕は絶対Xファイルのマネごとはしないぞ」
「我々が基地で撮った動画がある。プリキュアショーもビックリな出来映えだ。是非イイねを」
「ん?何だ今の?もう1回」
落雷が金髪ポニテを追いかけてる?え。背中を直撃?絶叫!
「どう思います、モルダー捜査官?」
僕は、口をポカンと開けているw
第2章 蒼き雷を撃つ者
とりあえず、UFOヲタク達から事情聴取…いや、話を伺うw
「墜落したUFOの解体は"悪魔ベース"でやってるんだ。君達も知らされてナイだろう。だから、アメリカのUFO開発の秘密基地エリア51には別名がある。すなわち"ドリームランド"だ」
「なるほど。夢を見に基地へ来たのか。ソレからアソコは佐久間河岸町にあるから"佐久間ベース"と呼ばれてた。"アクマベース"は聞き間違い…」
「不思議な光の噂を聞いた!3度目の正直で真相を確かめに来た。昨晩はホントにラッキーだった!」
小鼻を膨らませ力説するUFOヲタク。暑苦しい←
「ラッキーって何だょ。人が死んでるんだぞ」
「悲劇だ。ソレはヲタクでもワカル。しかし、エイリアンの侵略兵器を画像で記録出来たのは初めてのコトだ。国連に提出したい。緊急安保理を招集してくれ」
「ムリ。自然現象じゃないと言い切れるかな?」
広いオデコに汗が光る。あぁ見てて暑苦しいょw
「確かに幽霊っていう線もあるからな。アケミちゃんは霊媒系の地下アイドルだ。彼女には、フーファイターのテスト中に死んだパイロットの…」
「真面目に答えてくれませんか」
「巨大な光の魂が空から降って来たんだ。ソレが自然現象と言えるのか?宇宙戦争が始まったンだぞ。何も知らないだけだ。君達が」
僕を指差す。確かに一理アルw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋に捜査本部が立ち上がる。
「テリィたん、改めて紹介スルわ。フロイ・メポンさん。政府関係者だって」
「防衛総省の第44課所属です」
「第44課?」
ホントに聞いたコト無いが、UFOの専門チームかな。
「私達とSATOの合同捜査のお目付役ナンだって」
「今、私達は尋常じゃない圧力の影響下にアル。あ、気圧の話ょ。駿河台に見下ろされる秋葉原は気圧が高まり、熱風が生まれる。その風が外神田に吹き込むわ」
「だから?」
何だか話が妙だが…委員長タイプなので許す。巨乳だし←
「だから、気温は上昇、空気は乾燥。ゆえに、腐女子が集まるようになり"リアルの裂け目"の影響でパワーが覚醒、スーパーヒロインが大量発生している」
「…テリィたんと気が合いそうね。任せるわ」
「貴方がテリィたんね?あの国民的ヲタクの。語り合いたいわ。超古代も大好物です。確か宇宙作戦群の宙将で…」
あぁヤバいw
「マリレ。フロイさんをSATO司令部にお送りしてルイナと会ってもらってくれ」
「マリレ?おばあちゃんと同じ名前だわ。最高」
「CEO、ちょっといいですか?」
今度はヲタッキーズの妖精担当エアリだ。ヲタッキーズはスーパーヒロイン集団でSATO傘下の民間軍事会社だ。
フロイと出かけたマリレもヲタッキーズ。一方、僕は第3新東京電力の社員だけどヲタッキーズのCEOでもアル←
「何だょエアリ」
「テリィたんのアドバイスが欲しいの。私は、今後どんなキャリアを目指すべきかな」
「何だょ引き抜き話でも来たのか?」
ちょっち心配したが、エアリは首を横に振る。
「うーん現場に出るのか管理に回るのか、とか。ミユリ姉様は両方やってるし…TOもいるし」
何だか恨めしそうに僕を見る。何で?
「僕とミユリさんは…成り行きだょ?」←
「テリィたんの意思じゃナイの?」
「僕の人生は、基本的に受け身ナンだ。頼まれたコトは断らズ、目の前のコトに追われるウチに今日が来て…」
呆れ顔のエアリw
「ミユリ姉様ともあろう方が何でテリィたんに…」
「良く逝うだろ。TOに学び、良きTOになれ」
「マズい人生だと思うコトはナイの?…あぁ答えなくて良いわ。ミユリ姉様のTOだモンね。万事受け身で生きて来ただけナンでしょ?」
僕は胸を張る←
「YES。だから、僕に計画性はナイ。所詮は人生だ」←
「ソレで大丈夫かしら」
「多分。じゃOK?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋地下の鑑識。
「今のトコロ、歯型の照合では該当者ナシ。とりあえず、前科は無さそうね」
「被害者のプロファイリングをお願い」
「20代から30代の女性。テイクアウトの中華料理が最後の晩餐だった。テニスかソフトボールで、膝と右肘の腱を酷使してる」
監察医は、ラギィと同期だ。
「死因は?」
「心停止。火傷がヒドいの。相当な熱源に接触してるわね。まるで落雷に撃たれたみたいょ」
「当夜は快晴。嵐じゃなかった」
面白そうにクスクス笑う監察医。
「いよいよエイリアンの死の熱線みたいね」
「キラーゴーストかも」
「でも、1つヒントがある。ネックレスかIDカードを首にかけていた痕がアルわ」
ラギィは、初めて身を乗り出す。
「え。現物は?」
「残ってないわ。現場に落ちてなかった?」
「誰かが持ち去ったのかしら」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「高密度トロイド?」
ラボで画像を見ていたルイナが振り向く。
「ルイナ?私はアウゼ・ヴァン。プラズマ物理学が専門ょ」
「聞いてるわ、アウゼ先生」
「Autobahnはアダ名でもアルわ。その映像はどこから入手したの?」
ルイナが見ていたのは…アクマベースで目撃された球電だ。
「首相官邸からょ。アウゼ先生、機密アクセス権は?」
「問題ナイ。でも、この映像じゃ大きさがわからナイわ」
「そうね。直径1〜3mと仮定してるけど」
車椅子のルイナの肩に手を置くアウゼ。
「問題は死者が出たコトね。殺人事件だからコレ」
「雷の発生源は?」
「アッチ」
天空を指差すルイナ。
「そうなの。神秘的ね」
「あら、こんにちわ」
「彼女は防衛総省のフロイ・メポン。彼女はプラズマ物理学者のアウゼ・ヴァン」
首に手をやりながらフロイが現れる。
「はじめまして。きっと共通の知人がいますね」
「いいえ。いませんょ」←
「…球電の可能性について検討した?」
つっけんどんなフロイに質すアウゼ。
「球電は証明されてない。リヒマンが嘆くわ」
「誰?」
「ゲオルグ・ヴィルヘルム・リヒマン。18世紀の物理学者ょ。1753年、光の球に脳天を直撃されて死亡した。嵐の中で実験中にね。その500年前の1271年、日本では日蓮が処刑寸前に飛来した球電により命拾いしてる」
ルイナの相棒ハッカーのスピアの質問にスラスラと答えるフロイ。なかなか博識のようだw
「目撃したUFOヲタクの証言によると、被害者は雷に狙い撃ちされたらしいわ」
「電撃で狙いを定めるナンて、スーパーヒロイン以外は不可能。雷って雷雲の中で雨粒がぶつかり合って電荷が蓄積されルンだけど、陽子は雲のてっぺんで生成され、電子は雲の底で生成される。互いに引きつけ合うから、雷雲の下の地面には陽子が蓄積される。そして、地面から上がって来て、雲からの電荷と引き合って雷が発生スル。つまり、大掛かりな静電気システムね。電撃ナンて好き勝手に撃てるモンじゃナイわ。誰もが電撃を操れればスーパーヒロインは要らないわ。ヲタッキーズも廃業」
「ポイントは、撃てる電撃ってコトか」
まとめながら失業したミユリさんを想像するスピア←
「その通り。ところで、プラズマ兵器と言えば、今は空軍系のスタートアップが開発中のプラズマステルスが旬だわね」
「開発中?」
「あ。表向きは計画中止となってるけど…」
業界人らしく裏情報ぽく話すアウゼ。しかし…
「ちょっと待った」
フロイが立ち上がり…スマホで通話のフリw
ん?透明なスマホ?正直者にしか見えない?
「計画の中止を今、確認したわ」
「はい?どうやって?」
「スマホで」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。エリア52.5←
「ABの閉鎖後は、ずっと自分が管理しておりました。施設の破損や盗難がないか、週に1度巡回しています。でも、もう何年もココで人を見かけていない」
実直そうな軍曹だ。荒れた格納庫の前で直立不動←
ヲタッキーズのエアリとマリレの現場調査に同行。
因みに2人はメイド服。軍曹は軍服。朝からコスプレ大会。
「事件の時はどこに?」
「夜は無人です」
「何か物音を聞いたコトは?」
笑い飛ばす軍曹。
「まるでアニメの"弱虫クルッパー(いぬアニメw)"ですね」
「軍曹、犬には見えないわ」
「次の格納庫も開けましょうか?」
肩をスボめてみせるエアリ。
「ホテルニュージャパンの地下変電所みたいに女の子のすすり泣きが聞こえてきたりして…あら。コレは何?」
「パウチ?空のPTPシートだわ。薬を飲んだ痕ね。スクラルファート?」
「ステロイドだわ。粘膜の保護薬」
エアリは拾ったパウチを良く見る。
「YES。放射線治療で使用スル奴。がん患者も使う…有効期限は2023年6月?」
「誰かが最近ココに来たのょ」
「胃潰瘍を直しに?」←
エアリとマリレ(と軍曹w)は顔を見合わせる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の和泉パーク。赤外線双眼鏡を覗くヲタッキーズ。
「結局、夜の公園に張り込むコトになっちゃった。痴漢に襲われちゃうわ」
「…光が。何か光った。今のは何?」
「また光った。駅の向こう側!」
JR秋葉原駅上空に球電が出現w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
全面がミラー装甲のシステム指揮車。
「C3PO、異常なし」
「システムはどうだ?」
「良好」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「エアリ、全面鏡張りのエッチな車を発見!」
「ホントだ。何か音がスル。中に人がいるの?」
「わからないわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
システム指揮車内は緑の照明だ。
「電光射撃、準備」
「プラズマ臨界まで90秒。現在14万ギガボルト」
「ターゲット補足」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「お肌がザワザワする。何かしら?」
「メイド服がチクチクするわ。おニューの下着のせい?」
「何か変ね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「CQコンクエスト、電光射撃!」
「フロンティアにメガジュール150キロボルト」
「…基準値を超えた?システムが暴走w」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「中で何をやってるのかしら」
「車内の状況はわからない。人の出入りもナシ」
「突入すべき?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「電光射撃を優先」
「ダメだ。コントロール不能」
「全員、速やかに退去w」
ヘッドセットを投げ捨て後部ドアを開ける←
「車から逃げろ!」
「出ろ!早く!」
「でも、データが…」
天空より蒼き電光。指揮車のミラー装甲を直撃し大爆発w
第3章 涙のカンダードーム
翌朝の爆発現場。
「遺体の損傷が酷い。身元確認が出来るかどうか…」
「そんなにひどいの?」
「ほとんど人体の形を留めてません」
駆けつけた鑑識から報告を受けるラギィ警部。
「車の中は?」
「焼け焦げたハイテク機器がドッサリです。恐らく最先端のメカだと思うけど、見事に黒焦げ」
「驚きの展開だわ」
率直な感想を述べる…フロイ?いつの間に?
「貴女、何か知ってるのね?」
「いいえ。謎は、ますます深まり闇の中」
「いいわ。どーせ1種のエネルギー兵器でしょ?何でも知ってる超天才に聞くから」
超天才のワードに敏感に反応するフロイ。
「ルイナね?彼女は、恐ろしく優秀ょ。早速質問してみましょう。私も行く」
「あらあら。私達を差し置いて」
「何しに来たの?彼女」
陰口を叩くメイド服(黒焦げw)のエアリとマリレ。
「彼女の目的がわからないわ」
「にしても、車内は最新型のコンピュータを駆使した解析装置っぽいわね」
「UFOハンターの車かしら」
"アクマベース事件"以来、アキバはUFOブームだ。
「マニアとはお金の掛け方が違うわ。最先端のシステムょ」
「何のシステム?」
「さぁ」←
フランス人みたいに肩をスボめるエアリ。
「複雑なのは確かね」
「あら?コレは何?ネバネバしてるわ」
「ソレは…人体の1部ょ」
慌てて手を引っ込めるメイド達。手袋を投げ捨てる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
再び万世橋地下の鑑識。
「今回は、全員の身元が確認出来たわ。3人とも同じ会社の社員よ。ネヲス産業。ダエル・スマヤ、ジョエ・バンス、リゼズ・ウィツ」
「死因は?」
「爆死。ただ、全員が放射線による熱傷を負い、強力なX線を浴びてる」
同期の監察医の話を聞くラギィ。
「ねぇX線で…ぶっちゃけ車を爆破できる?」
「うーん集中照射すれば…放射線科で聞いてくれる?ただ、前回と同様何か強烈なエネルギー源が存在してる」
「ネヲス産業ってどんな会社なの?調べなくちゃ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部のモニターに免許証の写真が写っている。
「恨めしそうな顔ね…タレコミ情報だと社員のシシア・アボトが行方不明らしい。アクマ基地で見つかった遺体とDNAを照合して」
「了解、警部。あの遺体の3人と同じ会社ですね。そして、4人とも技術者だ」
「サイトだと、彼女の専門は特殊防衛技術の開発となっています…要するに新兵器の開発担当ですね。しかし、捜索願を出さないなんて」
席から立ち上がるラギィ。
「今からオフィスへ行きましょう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ネヲス産業。
「ダエルとジョエとリゼズが死んだ?Ωチームが全滅じゃないか!ナンてコトだ!」
天を仰ぐダレン・ドルゥ。技術開発の責任者らしい。白のVネックTシャツに黒ジーンズ。ココはシリコンバレーかょ?
「間違いナイわ。所持品と歯型で確認しました」
「なんてコト?家族に知らせなくては」
「何を今更…彼等は何をしてたんですか?」
ラギィの問いに答えはニベもナイ。
「首相官邸と機密保持契約を結んでるから喋れない」
「我々は警察ですょ」
「警察も例外じゃないと契約書に描いてアル。機密保持法に従うまで」
ラフなファッションな割には頭が固い。
「協力してょ!もう4人も死んでるのょ!」
「4人?Ωの3人だけじゃナイのか?」
「別件で1人死んでる。シシア・ボットも社員でしょ?」
ダレン・ドルゥは絶句スル。
「シシアが?ありえない。彼女は"カンダードーム"とは関係無いハズなのに」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部に1人の男が出頭スル。電撃死?したシシア・ボットと半年前から同棲していたらしい頭の弱そうなヲタクだ。
「シシアの身に一体何が起きたの?」
「調査中。彼女はネヲスでどんな仕事をしてたのかしら?」
「知らないwでも、彼女には専門知識があった」
間抜けな答えだw
「どんな?」
「知らないw何かのプロジェクトから外されたと怒っていたけど」
「シシアの最近の写真は?」
スマホの待受は…げ。セーラー戦士のコスプレ画像w
「優しい人なんだ。ボランティア活動にも熱心に取り組んでいる。何があったの?心配だ」
「彼女のPCは?」
「マンションにあるよ。いつも開いてる」
この子を事情聴取スルよりPCを解析した方がマシかもw
「預からせて。あと歯ブラシも」
「歯ブラシ?」
「DNAの鑑定用」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。SATO司令部に併設したルイナのラボ。
「佐久間河岸のスタートアップが官邸と契約し、超兵器を開発してルンだって。ルイナ、知ってた?」
「うんまぁ。でも国家機密だから喋れないわ」←
「さすがは、史上最年少の官邸アドバイザーね…あっ!」
ルイナの相棒スピアは息を呑む。
いつの間にかフロイが座ってるw
「フロイ?!」
「大事な質問がアルの。そこの店のチリドッグの味は?」
「え。チリドッグ?」
ルイナもスピアも胸に手を当てて驚いている。
インバウンドみたいに"オー"と後退りスルw
「角のホットドッグステーション?"マチガイダ・サンドウィッチズ"のコト?」
「だったかな?」
「もぉ最高ょ。オーナーがセネガル人シェフからレシピを盗んだチリが絶品なの!」
しかし、フロイは怪訝な顔をスル。
「最高なのは納豆ドッグだって聞いたけど?」
「"ネバー"ね?根強い人気がアルわ…で。貴女は、ホットドッグの評判を聞くために、地底深くにあるSATO司令部まで来たの?」
「いいえ。ドッグの話はまた今度。スタートアップに関して新情報がある。役に立つカモ」
ルイナとスピアは一斉に不満の声だw
「貴女、防衛総省の職員でしょ?極秘兵器を開発中のスタートアップを知らないハズがナイ」
「第44課の役目は1つだけ。事業の進捗状況の確認ょ」
「フロイさん?私、お会いしましたっけ?」
車椅子の超天才が声をかける。
「いいえ、首席アドバイザー。でも、衛星テレメトリーの研究は存じ上げています。素晴らしい技術ですね」
「ありがとうございます」
「スタートアップですが、殺傷力の高くない超兵器を開発中というコトになっています」
ルイナは首を傾げる。
「でも、4人も死んでる。十分に殺傷力がアルでしょ?」
「マイクロ波レーザーを使うエネルギー指向性の兵器カモしれません」
「エイリアンみたいな生物兵器だったりして」
相棒のスピアが軽口を叩く。彼女はハッカーだ。
「防衛総省は、エイリアンや亡霊を兵器としては認めてナイのょ私の知る限り、まぁあくまで現時点では、だけど。ところで!このラップトップは、万世橋が手に入れたネヲス社員シシアのモノょ。スピアさん、貴女は昭和通りのストリートギャング達ご用達のサイバー屋さんナンだって?ちょっと見てくれるかしら。防衛総省は、今回の事件の最初の犠牲者は、この人だと思ってる…あら。何か問題でも?」
「いいえ。こーゆー仕事は初めてじゃナイし」
「まぁそうでしょうね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。マチガイダ・サンドウィッチズ。
「で、エアリ。結局何が聞きたいのかな?」
「だ・か・ら!テリィたんは、人生の岐路では決断が必要だったかってコトょ」
「人生の岐路ナンて未だ来てないからワカンないょ」
その瞬間エアリはメイド服の背からバーンと羽根を広げるw
「テリィたん、真面目に聞いて!」
「わ、わかったから羽根をしまえょ。お客さんが入って来れないじゃナイか!出禁になるぞ…うーんソウだな、大学進学は意思だけど、ミユリさんとは偶然出会った。推し活は意思だけど、TOになったのは自然の流れ。エネルギー経済を学んだのは意思だけど、第3新東京電力に入ったのはメシのタメだ」
「じゃあミユリ姉様との出逢いは偶然なの?誰でも良かったのね?そーね?そーなのね?」
ソンなコトは逝ってナイだろw
「いや、ミユリさんとは必然だ。だから、推した…ってかエアリ、自分の決断に後悔してるのか?」
「ソンなコト無いわ」
「僕自身、大きな決断って、した覚えがない。第3新東京電力だってSF作家と両立出来そうだから入った」←
ココで僕は胸を張る。
「だから、僕自身、自分は無計画だって思ったコトすら無いンだょ」
「重症ね。結局テリィたんの人生に必要なものは何?」
「そりゃ色々アルさ」
チリドッグを頬張る。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ラボではハッカーのスピアが大きな成果を挙げる。
「シシアのPCにはUFOプロジェクトに触れたメールが2通あった。システムが不備なママ、フライトが強行される、テストをこの目で見に行くって描いてあった」
「そして、彼女は空から一撃された。つまりUFOからね」
「新型飛行機に関する情報も良く出て来る。どーもUFOの正体は、円盤の形をしたエネルギー指向性兵器搭載の小型無人爆撃機って感じね」
今回、ルイナは官邸アドバイザーとして国家機密を知る立場にあるので、迂闊に口を挟まないようにしているw
「ダークウェブの"死の商人サイト"とかにログインしちゃダメょ」
「大丈夫。アウゼの存在を教えてくれた掲示板だから。ねぇシステム指揮車が爆撃された時、何処から落雷したか調べてみたいンだけど」
「はいはい。いってらっしゃいませ、お嬢様」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
再び夜の和泉パーク。
「ラギィから見せてもらった鑑識のレポートだと地面に落雷の大きな跡があるハズ。そこから計算出来ないかな…ぎゃ!フロイ?何度も驚かさないで。また貴女なの?」
「失礼。一体ココで何を?」
「だから、超兵器の手がかりを探してルンじゃナイ。貴女こそ何してンのょ?」
口を尖らせるスピア。
「夜の事件現場がどんな雰囲気か確かめに来た。ねぇ私も役に立ちたいわ。手伝わせて」
「良いけど…ライトは持ってるの?」
「持ってるわ」
もう点灯してるw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
スピアとフロイは、和泉パークをナイトハイク。
「待って。何かいるわ」
「血を抜かれた羊?干からびてるw」
「まさか、チュパカブラ?伝説の吸血動物にヤラれたのかしら?…あ、タダの冗談ょホンキにしないで。恐らく高エネルギー兵器の直撃を受けたのね。ねぇアレを見て」
捨てられた洗濯機に数字が殴り描きされてる。
「139771…コレ、座標じゃナイ?」
「コッチにもアル。モノや生きている動物を落雷で狙う実験をしてルンだわ。ココは実験場」
「向こうでライトに何かが反射した」
確かに照らすと何かがキラリと光る。
「何?アレは、UFOの模型か何か?」
「無人爆撃機MK-15"ナイトシャドー"だわ。2022年にロールアウト。ホントはメイドインジャパンだけど国籍を隠して、闇市場に出したらベストセラーになっちゃってw今では主な納入先はアメリカ空軍。センサー込みで1機当たり単価は1250万アメリカドル。そもそもローンチカスタマーが全米民主主義基金」
「…で、ソンなアメリカ思い切り忖度の極秘機体が、何で秋葉原の児童公園に墜落してるワケ?」
さすがのフロイも肩をスボめてお手上げポーズw
「とにかく…持ち帰りましょう。拾った者勝ちだから」←
「そうね。あら?レーザー誘導によるプラズマチャンネルを装備してるwプラズマの通り道を大気中に作り出す技術ナンだけど…完成してたの?コレで的を射るように落雷を落とすコトが出来るカモ」
「え?…とゆーコトは、私達、殺人兵器を見つけたの?」
第4章 レーザートラップ
捜査本部は大騒ぎだ。
「コレが4人を殺したUFOなの?しかし、秘密兵器とは言えドローンでしょ?流行ってるとは言え"放置"はナイでしょ」
「墜落したか、逮捕されてオペレーターが逃げ出したか」
「警部!ネヲス社の召喚が却下されました。防衛総省が機密情報を盾に圧力をかけてるw」」
腕組みして唸るフロイ。
「全く不適切な判断ね」
「そーゆーアンタも防衛総省の人間じゃナイの!」
「お恥ずかしい。でも、部署が違うから」
恐るべき縦割り文化だw
「隣の課は宇宙人と同じ」←
「とにかく!手を貸すか、出て行くか。どっちかにしてょ」
「ソレなら…命令に従いますょ」
ヘラヘラ笑いながら、フロイは出て逝く←
「何なの、あの人?4人も死者が出てるのに」
「準ナショナルプロジェクトでしょ?多分数千億円の利権が絡んでる。理性も無くすワケょ」←
「電撃死したシシアは、そうした背景を知ってたのね。そして、自分も犠牲になった…」
ラギィ警部とヲタッキーズの2人のメイドが状況を整理。
すると、ラギィ警部とは同期の監察医が飛び込んで来る。
「ラギィ!あの遺体はシシアじゃなかった!DNA鑑定で判明したわ!」
「ええっ?!じゃ、あの黒焦げ死体は誰なの?ってかシシア
は何処?神田リバーに浮いてるとか?」
「うーん第44課さんなら知ってルンじゃナイの?」
ラギィの鋭い勘に応え?再び顔を出すフロイ。
「みなさんに御報告があります」
「何ょ?早く教えて!」
「実は…あら?ちょっとお待ちを。もしもし」
フロイはスマホを手に…ん?スマホしてるフリ?
「あら?また透明スマホだわwバカにしてんの?」
「きっと正直者にしか見えないスマホなのょ。確かに良く見たらウッスラとスマホが…」
「みなさん、驚きの新情報です!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ヲタッキーズ!open the window!」
神田花籠町のタワマン24F。樹脂ガラスを粉々に砕いてヲタッキーズが飛び込む!シャワールームに飛び込み隠れる女。
「シシア・アボト?貴女、殺人UFOの開発責任者ね?」
「だったら何?こっそりホテルに泊まると逮捕されるの?」
「今の内にシャワールームから出て!万世橋SWATが来たら武装警官の前で全裸逮捕になるけど?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。空を飛べない人々はフロイを囲む。
「なぜ貴女がシシア・アボトの居場所を知ってるの?」
「彼女は、プラズマ物理学者であり、極秘の兵器開発を請け負うスタートアップの技術開発の責任者。官邸との契約により、実は頭にマイクロチップを埋め込まれ、心臓の鼓動もモニターされてる」
「…冗談でしょ?」
みんな絶句スル。
「マジかょ…」
「真面目です」
「じゃ…彼女はなぜ隠れようとしたの?」
すると、フロイは何をバカなコトを聞くのだと逝う顔←
「裸だったからでしょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部にシシア・アボトが"任意出頭"して来る。
ラギィ警部自ら取調べ…ではなくて、事情聴取スル。
「私はUFOドローンのテストフライトを見に行っただけ。まさか現場で人が死ぬナンて」
「全て目撃したのね?じゃ被害者は誰?」
「知らない人。多分プチ家出の上京腐女子だと思う」←
まさか"人間狩り"じゃナイだろーなw
「何で警察に届けないの?」
「貴方達は、私達を守り切れない。国家機密に属する数十億のプロジェクトだもの。でも、恐らく納品は無理ね」
「アンタと同棲してた彼氏は嘘を?」
頭の弱そうなヲタクのコトだw
「いいえ、彼は何も知らない。カラダだけの人だから」←
「つまるトコロ、貴女達が開発中の新兵器って何?」
「"レーザー誘導プラズマチャンネル"。つまり、好きな場所に落雷を誘導するシステム。C-RAMをレーザー迎撃システムに進化させた防空システムょ。迎撃ミサイルに代わってUFOドローンが放つ落雷が、秋葉原に飛来スルあらゆる脅威を撃墜スル。貴女達スーパーヒロインさえもね。まさに"雷の盾"通称…ンダードーム!」
え。何?肝心のトコロが聞こえないw
「だから"雷の盾"通称…ンダードーム!」
「え、サンダードーム?カッコいい!マッドマックスね!」
「…いや"カンダードーム"。あ、命名はSATOだから」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
パーツ通り地下にあるSATO司令部。いつも沈着冷静なレイカ司令官が、ヲタッキーズのメイド2人相手に防戦一方だw
「レイカ司令官!裏で私達スーパーヒロインを落雷で撃墜するシステムを発注してたのね?民間武装会社は使い捨て?消耗品だと思ってる?!」
「しかもシステムの名前が"カンダードーム"ってどーゆーセンス?私達、ソンなシステムに撃墜されたくないわ!」
「わかった!わかったわ!ごめんなさいってか防衛総省が勝手にやってるコトで私も詳しくは知らないの。だってホラ、人の頭にマイクロチップを埋め込む防衛総省ょ?困った人達ょね。あ、おまわりさん!この人、防衛総省です!」
レイカ司令官は、またまた現れたフロイを指差す。
「司令官、脳髄へのチップ埋め込み手術は、私とはラインが違います」
「ラインが違うって、同じ課でソンなコトやってんの?!ってか、話をハグらかすな!」
「だから、確認が取れた情報だけをお伝えしましょう」
マズい。フロイのペースだw
「つまり?」
「98FVと呼ばれる歩兵戦闘車ですが、当初は1台3億円で開発を依頼した。17年後経費は倍になり、最終的には1台6億5000万円まで膨れ上がった。愛称は"ライトタイガー"だけど"ブライトタイガー"に変更。追加の"ブ"は財務省がつけたブ男のブょ」
「設計変更は防衛産業の常套手段ょね。しかし、倍以上とは驚きだわ。しかも、どーせ試験データは捏造だらけ。業者はもちろん防衛総省の幹部もグルなんでしょ?」
慌てて視線を逸らすフロイ…なぜかレイカ司令官までw
「ま、まぁ経験則では、恐らくそーゆーコトもアリかもね。うん、そーゆー筋書きもアリエール薄型」
「アンタ、今後知ってるコトは何もかも話して」
「どういう意味ょ?」
エアリは、背中の羽根を孔雀みたいに広げて睨みを利かす←
(彼女は妖精で、その背中には遥か未来目指すための羽がw)
「ネヲスの社員名簿を見せて」
「わかった。やってみる」
「やってみろナンて言ってナイ。見せろと言ってるの」
何とエアリの羽根がネオンサインみたいに七色に光るw
「OH…OK。I'll keep my fingers crossed for you」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
マチガイダ・サンドウィッチズ。
「あれ?エアリ、また羽根を広げたか?メイド服からハミ出てるけど」
「え。あ、ゴメンね。ちょっと興奮して…で、突然のお呼び出しは何?ヲタッキーズCEOとして?まさかレイオフ?」
「実は、渡したいモノがある」
僕は、エアリに古いネックレスを渡す。
「何コレ?昇進祝いは無しって約束ょテリィたん」
「いや、違うんだ。ある人から渡すように頼まれたんだ。つまり、僕の"元推し"ナンだけど。彼女が心を病んでアキバを去る時に譲り受けたネックレスだ」
「え。私がこんな」
戸惑うエアリ。
「また思い切り"推せるメイド"が出来たら、あげたいと思ってた。僕達は、家族だから。そーだろ?」
「なぜ今日なの?」
「今日が彼女の誕生日だから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
結局、フロイはネヲス社の社員名簿ゲットに失敗←
「だから、最初から私に任せてょ」
「いや、恐れ入りました。以後よろしくお願いします」
「もっと信じて。私、テリィたんの元カノ会の会長だょ?」
ルイナのラボ。スピアのPC画面に"機密情報アクセス許可"のサインが明滅スル。あ、スピアは凄腕のハッカーだw
「ネヲス社の社員名簿ゲット…あら?副社長サンが行方不明になってるわ。テリィたんが好きそうな金髪ポニテ」
「金髪ポニテ?!あのさ、佐久間町のアクマベースで殺人UFOの電撃を喰った女子もヲタク殺しの金髪ポニテだった。行方不明の副社長サンのお名前は?」
「アリソ・アムズ。ネヲス副社長」
リモートで聞いてたラギィが刑事達に尋ねる。
「アンタ達、何か聞いてる?捜索願は?」
「出てません。でも、制服組が近所の人に聞き込みかけたら飼い猫が空腹で泣いてるって」
「典型的な失踪パターンじゃナイの。スタートアップ側は何て説明してるの?」
刑事達は、慌てて手帳をめくる。
「休暇中だとか何とか…彼女は殺人UFOプロジェクトの契約のまとめ役だったそうです」
「つまり営業のトップってコト?あの黒焦げの遺体、アリソだわ多分」
「至急DNAで鑑定してみる!」
ラギィと同期の監察医が席を立つ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したら居心地良くて常連が沈殿。回転率が落ちメイド長はオカンムリw
「ミユリさーん、負けそうだ。助けてょ」
「ダメですょテリィ様。エアリ、3次元チェスが強いでしょ?私も時々負けちゃいます。ね、エアリ?」
「3次元チェスは、強いから楽しいというモノでもナイわ。ただ、姉様だと少し物足りなかったかな」
カウンターを挟みメイド同士が微笑む。素敵な絵だw
「テリィたんは、エアリがヲタッキーズの中で昇進してから良く一緒にいるょね」
相棒のマリレがやっかむ。
「妬くなょマリレ。僕は昔から娘は2人欲しいなと思っていたのさ」
「テリィ様は"推し"の私より"娘達"と仲良しなのですね」
「ええw今度はミユリさんまで」
メイドが3人とも美人だと御主人様はタイヘンだ。
「おっと。今度は美貌のプラズマ学者からお呼び出しだ」
「エアリ。私が3Dチェスのお相手ょ」
「え。また姉様ですか?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ルイナのラボに駆け込む。
「アウゼ・ヴァン。何かわかったか?」
「スピアがハッキングした"カンダードーム"のプラズマドライバーだけど、試験データを分析したら問題だらけだった」
「え。落雷システムは完成してたンじゃないの?」
てっきり、システムは完成してると思い込んでいたが…
「特に環状体を生成するシステムに欠陥がアル」
「え。人型ロボット?マリアみたいな…」
「ソレはアンドロイド。X線を浴びせて電子機器を使えなくしたり、スーパーヒロインの運動能力を奪ったりスル兵器ナンだけど"自動調整"に不具合がアル。電圧が高過ぎるのね。システムとしてコントロールし切れてナイ」
"カンダードーム"は未だ実験段階だったのかw
「そもそも、この"カンダードーム"って、リクエストが多過ぎて技術開発が間に合ってナイ。人手を介さず、フルオートで脅威を見つけ出し、落雷型のプラズマ兵器で攻撃する全天候型の防空システム。発注者はSATO…佐藤さん?この人、かなりの欲張りね」
いいや。謙虚な人だ←
「防空システムの大先輩は、太平洋戦争末期、久我山に配備された新型15cm高射砲。余りの威力に東京空襲のB-29が上空を避けて飛ぶホドだった。最近では、採掘したマントルエネルギーを光弾にして撃つレーザー高射砲がアル。コレは、件名だけ知らされてる極秘プロジェクトに流用されたらしい」
「フロイ?ホントに神出鬼没だなwそのプロジェクト名は聞くと抹殺されちゃう奴か?」
「多分。でも、教えてあげる。"高天原プロジェクト"ょ」
あぁソレは…僕の関わってるナショプロだw
「アメリカ陸軍は、イラクでC-RAMを広域運用した。全自動でロケット弾、迫撃砲弾などを迎撃するシステム。そして"カンダードーム"は、同様に"リアルの裂け目"から飛来するスーパーヒロインを撃ち落とすシステムなの…ただし、放出するエネルギー量の調整に未だ問題がアル」
「そーゆー防空システムって実効性がアルの?」
「イラクのC-RAMの1発目は味方ヘリへの誤射だった…幸い難を免れたけど」
スピアが割り込む。
「ダークウェブの闇UFO掲示板に"アクマベース"の側に謎の飛行体が駐機しているとの書き込み発見!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田リバー沿いサイクルロードを逝くケッテンクラート。
「もう4時間も走り回ってる」
「ネット情報はアルアルばかりで当てにならないわ…あら、フロイ?また正直者にしか見えないスマホで通話中?」
「いいえ。夜の河音に耳を傾けているだけ」
ドライバーのマリレが振り向く。前を見ろ、前をw
「何か聞こえる?」
「何も」←
「あ、音の正体はアレょ!」
後席のフロイが指差す先。
光点が夜空に浮いている。
「殺人UFO?」
「私達に反応して出没したの?」
「スーパーヒロイン専門の殺人UFOナンだわ!」
ライトで照らし出される2人。
「残念ながら見つかったようねw」
「高エネルギー反応!カラダがヘンだわ。メイド服がチクチクする。お肌がザワッ」
「プラズマチャンネルが出来つつある?落雷が来るわ。空襲!ヤーボょ!車を捨てて側溝に逃げて!」
ケッテンクラートは急停車。エアリとマリレとフロイは、ケッテンクラートから飛び降り、側溝に身を隠す!ところが…
「ライトが消えた?」
突然、殺人UFOは飛び去る。ケッテンクラートに飛び乗る。
「SATO司令部。ターゲットバード、視認」
「SATO司令部了解。現在トラッカーシステムが追跡中」
「コチラ"量子コンピュータ衛星シドレ"。ターゲットバードの目的地判明。ハートタワー飛行船空港のNo.8格納庫。なお、現場に対スーパーヒロイン用電磁波の展開を確認」
続々出撃するヲタッキーズ&万世橋SWAT。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ハートタワー飛行船空港は、東秋葉原のど真ん中に立つタワマンの頂上部にあり、常に飛行船が発着している。
関東平野を見下ろす、吹き曝しの空港の一角はキャンプ村と化しており、最新鋭システムの間をケーブル這う。
ソコへ…
「万世橋警察署!万世橋警察署!全員、動くな!」
「何ゴトだ?UFOドローンの搬入急げ!」
「その場で両手を上げ膝をつけ!抵抗スル者は射殺スル!」
拳銃を目線で構え突入スル警官隊。両手を上げ、続々投降スル白衣の技術者。中に1人、往生際悪く逃げ出す白衣←
「ダレン・ドルゥ!動くな!」
「合法的な試験をやってるだけ!犯罪行為じゃない!」
「人が死ななければね。おとなしく手を頭に」
取り押さえられた開発責任者は、歯ぎしり←
「無理だ。逮捕なんて出来るモノか!国家事業だモノ。そんな権限が…ダメ。やめろ!何するんだ!」
「貴方には、弁護士を呼ぶ権利が…」
「ソンな権利より、時間をくれ!あと少しでシステムは完成スルんだ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部。連行されたダレンの取調べ。
「3人を殺したのは誰?」
「殺した?アレは事故だ。誰も笑って死んだワケじゃナイ」
「アンタのチームの人間を取り調べた。チームの中で泥沼の責任なすりつけ合いが始まってる。全員、アンタのコトを悪く言ってるけど」
勢いよく否定するダレン。
「ウソ。そんなワケない。技術屋の結束ってのは固いのだ。事務屋にはワカラナイ」
「勝手な思い込みね」
「コレは社運をかけた大事業だから!」
ラギィは鷹揚に構える。
「ホント?人を殺しても良いくらい?」
「もちろん違う」
「じゃあ何故4人は死んだの?」
俯くダレン。
「みんな私の友人だった。小さな会社だから家族も同然。原因はわからないけど…殺人じゃナイ」
「真実か否かは誰にもわからなさそうね」
「…まさか、プロジェクトの責任者が?」
逆にダレンが絶句しているw
「でしょ?」
「待ってくれ。私は単なるアクマベースの責任者」
「エンジェルは別にいる?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。ラボでは解析作業が佳境を迎える。
「アウゼ・ヴァンは、スタートアップの連中の100倍データ分析に長けてるからね。乞うご期待」
「よし!コレで絶対イケるわ!あとは微調整すれば…磁化標的核融合でプラズマを圧縮させるコトが出来る!」
「そう!良かったわ!で、ソレ美味しいの?」
スピアの言葉に笑い出す車椅子の超天才ルイナ。
「もし完成品が必要だと言われたら、2週間後に"カンダードーム"を納入出来る。ただし、そのために必要なのはMJコンデンサ、磁気コイルと高Z金属材…少しリスクはあるけど、そこそこの技術者」
「少しリスクですって?技術者はみんなプロょ?」
「とにかく、あと2週間で問題の多い技術プロジェクトを試作品大会まで持って行くとしたら…そうか、わかった。こうやって直ぐ突っ走るから、私はAutobahnと呼ばれるのね」
思いがけない大発見って顔のアウゼ。最高速度で疾走してた新幹線が急停車した感が漂うw
「つまり、全ての元凶は"暴走した技術者達"だとおっしゃりたい?」
「殺人じゃなくてね」
「火のついたエンジニア魂は、もうソレだけで罪ってコト?でも、新技術を確立する時のブレークスルーには、絶対的に必要なモノだわ。技術者の悪口を言わないで」
全てを知る超天才ルイナのまとめ。
「貴女1人のせいじゃない。技術者全員のせいょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
場所も逝えない世界の何処かw
「貴国の投資基準は仕事の速さ。だが、ソレが人命を損なっている」
「とにかく時間が必要だった。北京にせっつかれて」
「アリソは、人体実験だった?」
性別も逝えない誰かはうなずく。
「YES。ただし、彼女自身が名乗り出た」
「彼女は、自社兵器だから安全だと考えたのか?」
「人体実験には資金と時間が必要だ。納期を守るため、彼女は自ら実験台に買って出た」
抑揚のない声で真実が語られる。
「貴国は、彼女の死を隠した」
「当然だ。人体実験がバレた時点で事業プロジェクトは頓挫する。だからIDも隠した。あと少し謎の事件でいてくれたら…スーパーヒロインであるアリソの死を無駄にせズに済んだ」
「3人の技術者チームは?」
一瞬の間がある。
「彼等のチームは、私の許可を取らずに実験を強行した」
「競争環境の中で追い込んだのではナイか?」
「彼等は、アリソに遅れをとるコトを極端に恐れていた。私は、やり遂げたかった。いや、今でもやり遂げたい」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
和泉パーク。初夏の日差しは穏やかで大気は心地良い。
「杜の都に2年。アキバを離れると?」
「感謝します。もし私の立場だったらどうします?」
「またソレを僕に聞くのか?」
エアリは、何処か楽しそうだw
「テリィたんが良きヲタクだから聞きたいの」
「知ってるだろ?僕には"推しゴト"は向かない。現場の守るべき規則は破る。破るべき規則にばかり従って来た。確かにミユリさんのTOは適職カモしれない。でも、動機が不純な気がする。わかるか?」
「全然」←
だろーな。僕にもわかんないょ笑。
「テリィたん、1つ言わせて。貴方は自分に甘過ぎる。ソレに直ぐ厨二病を気取りたがるのが厄介」←
グゥの音も出ない。大笑いだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
真昼の"潜り酒場"。
「今回は、驚異的な技術を、大陸資本に流出するトコロを…失礼。余計な話でした。この度は"神田ドーム疑獄"の解決に御協力をいただき、防衛総省を代表して御礼を申し上げる」
「やんやー。まるで国家を代弁してる」
「みなさんの才能を浪費し、国家の安全を損なった」
フロイを常連で囲む。
「確かにあのママじゃさらに数十億の血税が浪費された」
「ネヲスの背後に隠れているのは、防衛総省とAMC、即ち"秋葉原ミリタリークラスター"との腐敗の構図。そして、ソレに乗じた大陸資本の国家的陰謀の影だった。幸い、全ては国家間の政策的対話の枠組みの中で穏便に処理された。コレも、お節介な秋葉原のヲタク達のおかげだ。改めて、国家に成り変わり、御礼を申し上げる。ありがとう、テリィたん」
サングラスをかけ去って逝くフロイ・メポン。
意外とカッコ良い奴だったカモ。女子だけど。
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"UFO"をテーマに、UFOの追っかけヲタク、UFOの謎を追う防衛総省の秘密部局メンバー、落雷兵器の謎を追うプラズマ学者、UFO開発スタートアップのCEO、開発責任者、技術者チーム、投資家、電撃死した女子の謎を追う超天才と相棒のハッカー、ヲタッキーズに敏腕警部などが登場しました。
さらに、主人公と悩めるヲタッキーズメンバーとの微妙なやりとりなどもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、すっかりインバウンドに占領され、ヲタクが慌ててマスクをヤメ始めた秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。