金婚式 パート2
結婚五十周年を迎える、夫勝と妻葉子・・日頃の事や旅先での事・・を書いて居ます。
①
我が家にも・・結婚五十年目のご褒美かなと思う出来事があった。ご褒美は思い掛けない事であった。金婚式は計画して居ても・・出来ないものは出来ない。神仏にお願いして居ても・・叶わない事が多い・・。五十年もの長い間一緒に暮らし、支え合って一緒に生きて居なければ・・金婚式は迎えられない。その上に丁度ご褒美かなと思う事があったのである。あるバス会社の創立百周年のお祝いとして、企画されたものである。葉子は土佐高知ご褒美旅と題しての募集チラシを見ていた・・。二泊三日のバス旅行で、日数も価格も手頃であった。夫勝は決まって、何処であろうと行かないという人である。まぁ最初だけであるが・・。一応~「安くていいバス旅行があるんだけどね」と伝えた。案の定・・夫は行かないという。「一人でも行きますよ。植物学者牧野富太郎博士の生誕160年特別企画展を見たいから。高知県立牧野植物園よ。来年の連続テレビ小説(NHK)『らんまん』のモデルになる人よ。それとね前日にはモネの庭も見れるんよ・・モネが描いた水連が咲く池があるというんよ!一人でも行きますよ・・」畑にして10年、ハーブを育ててグッツを作りボランティアしたから、ハーブからのご褒美かも知れん。と思ってしまう・・「そおせい・・」夫はあっさりという。たまには一人旅もして見たいものである。三度三度の食事の支度、そして片付け!うんざりする日もある。それに探し物・・夫は脳梗塞をしてからと云うもの・・何かと手が掛かる人になった。見た目には何ら普通の人と変わらないのであるが・・。家の中の仕事、家の外の仕事、夫勝は何もしなくなった。テレビを見て居るのかと思うと、居眠り・・。べらべら喋った後は・・二階に行くのである。6時頃起きたので9時頃には眠くなるのであろう。ちゃんと手も動くのに・・歩く事も出来るのに・・只、脳の回線が傷ついているので、指令が遠回りするのであろうか?(私葉子流解釈)ちょっとした事でも大仕事と感じて・・後回しにするのであろうか。葉子は逆もあると思っている。手を動かせば・・脳の回線が楽になる。足を動かせば・・連動して脳が良くなると信じている。そんな意味もあり用事を頼んで居るのであるが・・夫に任せていると仕事がはかどらない。結局・・庭の木を切る等の力仕事も私葉子がしている状態なのである。愚痴を零す事が多くなった・・葉子も体の節々が痛いからである。葉子迄病気になる訳にはいかない!何とかしなければと思う・・。ヨガとかストレッチ教室に行こうかな。水泳は如何かな?まだ体力あるかな?等・・思ったりして居る処。そのような日々・・バスツアー予約センターに予約の電話を入れたのである。只・・「このバスツアーの予約はご夫婦揃ってとなって居ます」との事だった。受け取る側のニュアンスかも知れないが、夫婦でなければ予約出来ないという。一部屋二人での価格設定であろうか。友達を誘ってもいいと思うのだが、気を使う事になるから・・やっぱり夫勝を引っ張り出そうと思った。「高知までは・・もう私達車を運転して行かれないよ。体がきついよ・・。バスだからビール飲めるかもしれんし、居眠りも出来るし、オシャベリも出来るし・・行って見ませんか。体の調子・・最近良さそうね。今の内に行って見ましょう」という事で、夫勝はシブシブ承諾したのであった。(ついでに言って置こうかな)何時もの事であるのだが・・・旅の支度、そして旅先で、とても嬉しそうに楽しんで居るのは夫勝なのである。
②
二泊三日の旅の支度も済んだ日の事だった。息子洋輔が言うのである。「これから二週間位、惑星が勢ぞろいするそうだよ!実際には遠く奥にあったり、近くにある星もあるけれど・・地球から見ると並んで見えるんだよ。以前見る事が出来たのは一千年位前かな?とにかく大変な事だよ・・次に勢ぞろいするのは470年後だそうな。もうこの辺の人皆・・お母さんも俺も生きていないよ。大変だよ!凄い事だよ!双眼鏡買って来るよ。東南の空・・明け方三時から四時頃起きて見よう。只雨か曇りかもしれん・・。南の空に月が見えたら(国立天文台による)・・少し東に土星・・海王星(肉眼では見えない)木星・・火星・・少し北東へ天王星(肉眼でぎりぎり見える)金星・・水星・・と惑星が勢ぞろいして見えるというんだ」「空気のきれいな田舎で、星空がきれいに見える処でないと・・それに梅雨時よ。見えない事の方が強いよ!」「うぅ~ん!残念!・・凄い事なんだよ!千年に一度位に凄いんだよ!」と息子洋輔が偉い力説する。「ニュースであんまり聞かないね。梅雨時だから見えないから?」「星が並ぶと・・占いで、何か言うよね。良い事があるとか・・不吉な事があるとか・・だからかね?テレビのニュースであまり聞かないよね」
「近くのホテル予約したんだけど・・お父さんお母さん明日一緒に見ませんか?海の見える部屋の東南の部屋!予約してある。旅行に行く一日前だよ・・」如何いう訳かと聞いて見ると・・。彼女と一緒に天体ショーウを見る積りで予約して居たらしい。彼女は都合が付かないのか?天体に興味が無かったのか?キャンセル料を払うよりもと云う訳で・・親に回って来たのであろう。又は孝行をしょうと思って呉れたのかもしれない?二泊でなく、三泊四日の着替えをキャリーケースに入れたのであった。その日の夕食は・・美味しいワインに豪華洋食のディナー・・あんまり贅沢は我が家の性に合わない、勿体ないから・・。息子の奢りであるが、何だか心配・・破産という事は無いよね!家でステーキの時は、いつもお父さんが係りで、上手よ・・美味しいのに。
「朝三時半に時計をセットしたよ・・早く寝よう・・」という事で、久しぶりに親子三人揃って一部屋に寝たのである。朝・・空は曇って居て、星は見る事が出来なかった。朧に月が見えたり隠れたりしていた。
③
タクシーの迎えを頼んでくれて居た。お言葉に甘えて遠慮なく広島駅へ・・。息子洋輔はもう少し寝ると言った。「明け方迄ホテルの外で星を探していたから眠い・・」と言った。うとうとしている。
広島駅新幹線口・・7時30分発バスツアーの始まりである・・。
先ず運転手さんそして添乗員さんの紹介・・。皆で拍手をして宜しくお願いをしますという。二泊三日の旅の安全を祈願。天候は曇り空で、なんとか三日間持ちそうであった。我が夫婦はバスの中頃の席であった。始終この席に座るのである。この方法も要らぬ気を使わなくて済む・・良いかも知れない。コロナ禍であるため二席に一人・・お互いに窓際に座る事になっていた。夫とも離れて居て、話もあまりできない。飲み物も水かお茶程度・・ビールは飲めない。お菓子も・・自重気味である。添乗員さんは優しい声の持ち主であった。名所の説明も聞きやすく、よく分かった。小太りの人である。只・只・・黒いベストの制服が小さくてきつきつである。体に合わせると・・何処までも太くなるので・・会社も止めて居るのかな?それから嬉しいお知らせがあった。コロナ禍の旅行で、クーポン券4千円分とお金一万円・・トク割キャンペーン適用による返金なのである。とてもとても嬉しい!!二人分で8千円のクーポン券と二万円の現金を頂いた。お土産代は殆どこれで済ませるぞ!と思った。口座から下ろしたお金は固く閉まって持って帰ろう・・!途中福山IC で休息を取り、岡山から瀬戸大橋を渡り高知自動車道に入り、高知ICで下りて高知市内へ・・。12:00前に到着。自由行動・・15時30分迄にホテルに帰る事であった。昼食はひろめ市場にカツオのたたきを実演販売する美味しいお店が在るという・・。店の配置図を貰う。日曜日のお昼時、市場は混雑して居た。ガヤガヤしている。迷わない様に一緒に歩いて、お土産を物色する。一番最初に買った品は・・辛口のお酒・深海に耐えた酵母を使っているという。おつまみにカツオのたたきの燻製あれこれを買う。市場の中頃にある、カツオのたたきの美味しいお店は此処かな?と思った店で昼食を済ませた。生ビールとカツオのたたき丼を注文。落ち着いて頂くと尚美味しいだろうと思った。年を取るとトイレが近くなる。念のために早めに行こうとするからなのである。そさくさとトイレを済ませて夫を探すと・夫勝は、鰹節と鰹節削り器を買い求めていた。良い事に気付いて呉れてありがとう。長い間欲しかった鰹節削り器・・この機会に(クーポン券は使えなかった)我が家の一員になったのである。後何年使えるか(生きているか)が、問題であるのだ。高知中心部のMAPを見ると・・名所旧跡が目白押しである。流石高知だ!元気だったら、半日掛けて歩いて見たいものである。私、昔は歴女だったから・・ウフフ。今この足腰では・・夫勝は杖をついて居るし、無理と云うものであろう。中江兆民誕生地・武市半兵太邸跡・はりまや橋・板垣退助誕生地・後藤象二郎誕生地・旧山内家下屋敷長屋・坂本龍馬誕生地・・・ホテルはこの近くであったので、龍馬記念館をじっくり見て早めにホテルに入った。高知城の近くには山内容堂誕生地・大町桂月誕生地・大川筋武家屋敷資料館・寺田寅彦記念館・植木枝盛旧邸・・・。東部地区安芸市には岩崎彌太郎の生家があるという。凄いな・・広島は原爆で焼け野原になっているから・・名所旧跡の現存は少ない。それに土地柄か武勇伝魂を育んで居るのだろうか。忖度とか言う言葉は、この地には無かったであろう。太平洋の荒波に突き進む小船のごとく、厳しい世の中・封建というその時代に日本の夜明けを担う人々が育っている。民衆の幸福のために・・たとえ我が命狙われようとも、突き進んだのであろう。イゴッソウ(異骨相)快男児・進歩主義・頑固で気骨のある男を意味する土佐弁。そして高知県男性の県民性とある。夜・・此処でも曇り空の為・・夜空の星は見えなかった。
④
9:00ホテル発・・北川村「モネの庭」モルモッタン・・クロードモネの愛した風景・・フランス・シヴェルニーの庭の再現を許された、世界で唯一つの庭園であると説明を受けた。他には静岡にも現地から指導を受けた庭もあるが・・庭の再現を許され「モネの庭」と名付けられたのは此処だけであるという。色彩に包まれた「花の庭」モネの代表作「睡蓮」が美しい「水の庭」地中海の光の中で描いた作品から発想した「ボルディゲラの庭」(案内付き散策)案内の人は若い男性で・・説明もとてもよく分かる、ゆっくりと話して後に・・ウフフと付ける。長閑な時間を感じたのである。黒い三角帽子を被り・・マスクの下には顎髭を生やしているらしい。モネの影武者をイメージしての企画だそうな。夫勝はこの人に杖を借りて園内を歩いた。とても助かったそうである。睡蓮の庭はまさに絵画であった。池の中ほどには柳の木・・アーチ型のツル薔薇のゲート・・さり気なく手入れされている小さな花達。モネが栽培したブルーの睡蓮・・土地に合わなかったか?失敗・・そのブルーの花は、この地には根付いているという。モネも見たかったであろう、ブルーの睡蓮の花。只・昨日までは咲いて居たという。今日は小さくなっている。「どこどこ?私・・見えないんですけど・・」「あの向こうでしょうね・・1・2・3・3番目の蓮のグループ。ピンクの花の向こうかな?ブルーと言っても紫掛かっているかな?」と誰かに教えて貰う・・「あれですか・・多分あれですね」「蓮の花ちょっと小さいですよね。鉢植えしているからでしょう。池の底に大きな鉢を置いて、手入れし易くしているのでしょうか?」
12:40~13:30遠洋漁業の基地のホテルで昼食 まぐろ定食
15:30 高知市の奥座敷・・オーベルジュ土佐山・・着 テレビのない静かな一夜を・・。フランス生まれのオーベルジュ。ただ泊まるだけのスティではなく、とびきりのごちそうに出会い、満ちたりた時にひととき浸る場所。したたる緑と澄みわたる流れに抱かれた。至福の味わいと、極上のプライベート空間を用意してお迎えします。と栞にあるように・・。宣伝以上に満ちたりたひと時であった。沢山の豪華メニューの上にサービスのアマゴの塩焼き・・食後のデザート・・。テレビと!思う暇もなく、お腹いっぱいで、深い眠りに入ったのである。
土佐の皿鉢料理・・種々の魚介・野菜などを高級大皿や大鉢に盛って出し、銘々が取り分ける。土佐の名物料理である。土佐では、酒宴のことを『おきゃく』というそうである。自由で楽しく、にぎやかで分け隔ての無い・・。土佐人堅気・・まさに豪快に、どっさりと、おもてなしを頂いたのであった。
⑤
雨・・昨夜はぐっすり眠っていたから分からなかったけれど、どしゃぶりであったようだ。朝方は小雨になっていた。バス旅行は雨の時も、戸口から戸口へと行けるから・・いいかも知れない。9:00 ホテル発 10:00~12:00 高知県立牧野植物園 ☆牧野富太郎生誕160年 緑に包まれて…☆と題して案内付き散策と昼食(季節のお弁当)回廊を歩きながら説明を受ける。
植物園を訪れるにはやっぱり・・晴れの日がいいかな。バス会社の透明の傘を借りた。会社はちゃんと用意して居るんだ。ありがたいお蔭で助かった。葉子は傘だけは準備して無かった、三日間は降らないだろうと自分勝手に思って居た・・失敗の巻である。高知が生んだ「日本の植物分類学の父」牧野富太郎の業績を顕彰するため(S33年4月)に開園・・高知市五台山の起伏を活かした約8haの園・・博士ゆかりの野生植物など3000種以上が四季を彩っている。人と自然の関係を大切にした安らぎと憩いの空間・・豊かな土佐の自然を再現している。と案内にある。本館周辺~回廊に降る雨は集められて、植物園の水やりに一役買って居るのだそうだ。8ha・・3000種以上の水やりは労力も費用も大変である、雨水を利用出来るように設計してあるのだという。薬用植物区とふむふむ広場にも行って見たいと思うのだが・・雨も降って居るし止めて置こうかな、少し心残りである。このバスツアーに参加したきっかけは、薬草・ハーブの育て方、手入れの仕方・・を見てみたいと思ったからである。ハーブからのご褒美かも知れんとは、大袈裟かな?関心があったからであろうか・・世の中の繋がりとは、こうしたものかも知れん。1・2・3と繋がるように、コツコツと努力したものである。折詰弁当の昼食も余り欲しく無い、疲れたのかな?ハンバーグ等こってり系は残す事にして・・。
⑥
12:00・・牧野植物園発・・又という機会は無いであろう。このバス旅行に参加したお蔭・ニュアンスで夫婦でなければ参加の予約受付ないと受け取ったお蔭。牧野植物園の触りだけでも見る事が出来た・・良かった。この地に巡り会えて良かった。ありがとうございました。尚・高速乗り合いバス往復代宿泊セットプランもある・・元気で生きてさえ居れば又という事もあるかな?添乗員さんが何度も言った。「クーポン券は高知で使い切って下さいよ。帰ってからでは・・只の紙切れになります!何度も言いますよ。使い切れないなら、私に言って下さいね」途中ICで休息を取りながら・・お土産を買い足しながら帰路に就いたのである。帰りのバスの中での事、葉子のスマホが鳴った。夫勝の末の弟からであった。「兄さんはスマホになかなか出て来ないから。それで・・」「すみません・・私が伝えますから。夫はスマホ上手く使えて無いんです」「今朝・・孫が産まれました。男です。安産で母子ともに健康です。可愛いです嬉しいです!」「それはおめでとうございます。孫は可愛いですよね。健やかにと祈りますよ。19時には家に居りますから・・又ね」「良かった・良かった」うとうとしながら考えた・・。お祝い要るよね・・如何しようかな?何処から出そうかな?そうそう・・トク割キャンペーンの返金があって、それは使ったけれど・・鞄の底に固く閉まって居たお金があった!あるある・すぐ出せるお金・喜んで出せるお金である。トク割キャンペーンの帰って来たお金はありがたい。お蔭で再び・・ありがとうが生まれる。コロナ感染無くなっても・・特割キャンペーン有るといいのにな。うふふ・・。夫勝は残って居る僅かな脳の回線を使って・・手足・口・心を動かして我が家族を思い遣っているのが分る。弟達にも気遣い、また反対に思って貰って居る。そして私葉子も、腰や膝が痛い痛いと言いながら・・家の用事をして居る。夫勝・息子洋輔の為にせっせと家事をこなして居るのである。愚痴を零す相手がある事は有難い事である。もしも居なくなったら・・どんな文章を書くのだろうか?どんなお話が出来るのだろうか?多分書けなくなるだろう・・。私達夫婦は、このように結婚五十周年を迎える事が出来たのである。先ごろ娘詩織と孫、かおりが三年ぶりに帰って来たので・・金婚式の家族写真を撮って置こうという事になった。ご馳走はお好み焼きでいいから、家族写真をと・・私の家族(血筋)を証明する一枚となったのである。「お父さん、そろそろ遺影を撮って準備して置かなければ・・。ちょっと若いうちにね・・ウフフ」「そうじゃの・・エヘヘ」偉いあっさりとカメラの前に立ちニッコリしている・・。あの~旅行の相談の時の、あの抵抗は何?いつも苦労するのにな・・。 終わり
なるべく暗く、硬くならないように書きたいと思いました。普通に書けたでしょうか。