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名字大戦争  作者: ぽっけ
3/5

藤原一族十六藤

敵の勢力とか

「それじゃあこれで私達6人の団結も示されたわけだし、いよいよ具体的なプランの話をしていくわ」

何か知らない内に今ので説得されたことにされていた。

俺が心ここに在らずの状態で話を聞き流していたことに微塵も気づかなかったのだろうか。

「私達の最初の標的は『進藤』よ」

途端に周囲にざわめきが起こる。

当然だ。よりにもよっていきなり『十六藤』の1人に挑みかかるなんてコイツは何を考えているんだ。

「お待ち下さい!」

鷹端(たかはし)と呼ばれた眼鏡の男が声を上げる。

流石はこの場で唯一の眼鏡キャラ。

知的でクールな雰囲気を漂わせてる癖に朱好と一緒に熱に浮かされやがってこの馬鹿野郎と思っていたが、今こそその姿に恥じない冷静な一言であの暴走列車の頭を冷やしてやれ!

「なぜ『進藤』などという木端者を攻めるのですか!?敵の首魁は『佐藤』のはず。そのような周りくどいことをしなくとも、直接大元を叩けば良いではないですか!」

熱に浮かされ過ぎて脳細胞全部沸騰しちまったのかこの大馬鹿野郎。

「良い質問ね。だけど残念ながらその案は採用する訳にはいかないわ。いくら私達といえど、いきなり『十六藤』トップの『佐藤』を相手にしては勝負がどう転ぶかわからないわ」

どう転ぶも何もねえよ。手も足も出ずに返り討ちに遭うのが目に見えてるわ。

「ここに集まった私達の団結は固く、そしてそれぞれが持つポテンシャルも並大抵のものではないわ。けれど私達にはいかんせん実戦経験が足りない。そこでまずは手頃な『藤原一族』である『進藤』を倒して、これからの戦いに勢いをつけようってわけ」

「いや待てなんだその突っ込みどころ満載のセリフは」

ここまで心の中の突っ込みに留めていたが、ついに我慢が出来なくなって声に出た。

なんでこんなトンデモ論を「なるほどー」みたいな顔で感心して聞いているんだよ。

「団結が固いも何も俺たちは殆ど今日あったばかりの初対面だし、お互いのポテンシャルはおろか能力も知らない状態で実戦経験に至っては当然皆無だし何より『手頃な藤原一族』ってなんだよ。そいつら最強格の集団だぞ?」

「今まで黙ってた癖に何急に早口で話してんだよ。キモッ」

綿鍋(わたなべ)と呼ばれたギャル風の女性に罵声を浴びせられた。

うるせえよ。こんなに突っ込み所を用意されたら嫌でもそうなるわ。

「まあ仮に『藤原一族』に目をつけて倒しに行こうとするまで良いとするよ。だけどいきなり『十六藤』はないだろう!そいつらは『藤原一族』の中でも更に選ばれたエリートなんだぞ!」

序列16位…春藤(しゅんどう)

序列15位…神藤(しんどう)

序列14位…新藤(しんどう)

序列13位…進藤

序列12位…武藤

序列11位…須藤

序列10位…内藤

序列9位…安藤

序列8位…工藤

序列7位…遠藤

序列6位…近藤

序列5位…後藤

序列4位…加藤

序列3位…斎藤(または斉藤、齊藤等)

序列2位…伊藤

そして序列1位…佐藤

この十六の名字が全部で30ほどいる藤原一族の中でも特に力を持つとされる存在であり、俗に『十六藤』と呼ばれ畏怖されている。

何の経験もなくいきなりそれに挑もうだなんて念を覚えたばかりの状態で旅団を相手にしようとするに等しい!

あるいは呼吸を使えるようになったばかりで数字持ちの鬼を倒そうとしていると言った方がわかりやすいか。

とにかくべらぼうに無謀な挑戦だ!

そして実はもう一つ、そこを無視しても(決して無視はできないが)気になる点があった。

「で、でも確かにちょっと不思議かも…です。戦いに勝って勢いをつけたいなら、どうして『十六藤』でも一番下の『春藤』じゃなくて、わざわざ13位の『進藤』なんです?」

那加群(なかむら)と呼ばれた小柄な少女が疑問を口にする。

確かにそれは俺も不思議に思っていた。

やるならやるで何事も徹底的にやりそうなこの女が、どうしてそんな中途半端な選択肢を選ぶのか。

「簡単よ。下位3名に関しては余りにデータが少ない。大して知名度があるわけでもないのに『十六藤』入りしているという異質な名字で…端的に言って不気味な存在なのよね」

ここまで熱狂の渦にいた教室が静まりかえる。

下位にすら得体の知れない集団がいるという敵の姿の大きさに今更ながら圧倒されてしまったのだろう。

そう、本来はその反応が正しい。

「だけどよお、結局そいつらは下位の連中なわけだろ?俺たちの目標は下にはねえわけだし、そんな奴ら無視しちまっていいんじゃねえのか?」

古囃(こばやし)と呼ばれた大柄な男がそう口にする。

バカタレ、お前みたいなキャラがそんなある種核心を突いたみたいな発言をするんじゃない!

「その通りよ!私達の目標はあくまで『佐藤』!下位の連中がどんな能力を持っていようが知ったことじゃないわ!そしてそこから先の相手は能力も戦法もわかりきってる!なら負ける要素はないわ!あの強欲な一族に私達の力を見せつけてやりましょう!」

ああほらもう。

お通夜だった空気が一気に加熱してしまった。

古来脳筋っぽい奴がまともなことを言うと周囲が乗せられてしまうというのはお約束で決まっているんだ。

こうなったらもうこちらが何を言おうとこの勢いを止めることはできないだろう。

であるならばしょうがない。

気は進まないがそれならそれで、やれるところまで付き合ってやろうじゃないか!

お前もそっちに行くんかーい

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