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ショートショート6月~

こうなるといいな日記

作者: たかさば

僕は毎晩、日記をつけている。


その日に起こったことを書くのでは、ない。

こうなったらいいなと思ったことを書くのである。


その名も、こうなったらいいな日記。

日記に次の日の日付と、三行ほどの出来事を、書き記す。


たとえば、5/5の日記は、こうだ。


ウォーキングに行ってウシガエルの鳴き声を聞く。

コンビニでおいしい食べ物を買った。

大笑いした。


その下に、実際に一日を過ごしてみて関連したと感じた出来事を記す。


ウォーキングに行ってウシガエルの声を聞いた。

コンビニでコラボおにぎりを買ったらうまかった。

10本グランプリがめっちゃ面白かった、ざこ先生最高。


僕に予知能力はないけれど、少しだけ予知っぽいものを感じてうれしくなるというか。

コツはさ、なるべく外れなさそうなものを書くことなんだよ。

ド外れすると、人生を間違った感がハンパないというかね。

あと、悪いことは書かないことだね。

自ら自分の人生に暗い影を落としにかかるとか、もったいないじゃん。


今日は6/30。

もう11時を過ぎている…、明日の分の日記をつけて、眠る事にしよう。


……たまにはちょっと冒険してみるか。


6/31

ちょっとすごいものを拾う。

大声を出してすっきりできる。

晩御飯に大満足する。



翌朝、僕はいつも通りにウォーキングに出かけた。

気持ちのいい朝、いつものようにすれ違う、顔なじみの皆さん。


「おはようございます。」

「おはよう。」


公園を一回りして、階段を下っていると…あれ。なんか、ポーチが落ちている。辺りを見回しても、誰もいない。どうするよ。待ってたら、落とした人が来るかな?でもここで落としたことに気が付いてなかったらまず警察行くよね…。幸い交番が歩いて10分ほどの所にある。よし、いくか。


念のため、拾う前に動画を撮って、撮りながら交番へ向かう。拾い物をしたら、中を確認するのはやめた方がいいんだって警察の知人が教えてくれたんだよ。開けずに撮影しながら持っていくといいんだってさ。


「すみません、これ拾ったんですけど。」

「ああっ!!それは!!ありがとうございますぅううう!!!」


中年の奥さんが騒いでいる。この人のかな?


「ええと、撮影しながら持ってきたんですけど、落とし物で…。」

「ああそうなんですね、ちょっと確認しましょう。」


お巡りさん立会いの下、中身を確認して、問題なかったので僕は釈放?された。まあ、急いでないし、よかったよ。


「あの、これ、お礼です!」


差し出されたのは、ミニロトくじ。


「これ、今日抽選あるやつなんですけど、同じの二枚買っちゃってて。昨日エオンのくじコーナーで買った奴なんだけど、ポーチ見つからなかったらなくなってたやつだから。当たらなかったらごめんだけど、もらってください。ごめんね、このポーチの中、お金、入ってないのよおおおお!!!」

「いえいえ、そんな、もらえないですよ。」

「お願い!!もらって!!絶対返してって言わないから!!!」


無理やり、押し付けられてしまった。


そのあと、家でのんびりゲームしたりパソコンしたりして、夕方6時半。そういえば、朝貰ったミニロトの抽選が終わってるはずだな。確認してみるか。


・・・。


「はあ?!」


同じ、数字が、ここに、ある。何度見ても、同じ数字。

何回も見すぎて、数字を暗記してしまったじゃないか!!


「あ、わ、あああああた、あたたたたた!!!!!!!」


普段物静かで通っている僕の口から、信じられないような奇声が発声された。

こんなでかい声、出せるのか。


ヤバイ、当たってることを隠すのか、公表するのか。とりあえず、財布に当選券を隠す。


ふわふわした気持ちでリビングに行くと、ふわりとうまそうなにおいがする。


「ちょっと駿ちゃん!!今日さ、蟹もらっちゃったのよぅ!!すごいよ。見てみ!!!」

「うっわ!!マジか!」


見たこともないような、いや初めて見るドデカい蟹、蟹、蟹!!!


目を瞠っていたら、姉ちゃんと父ちゃんが帰ってきた。


「うお!!何これ!!!食っていいの!!!」

「清くんがくれたの!!食おう食おう!!!」

「一人一個?!わあ!!!酒!!酒!!」


もうてんやわんやの乱痴気騒ぎとはこのことか。


すっかり蟹臭くなって、風呂に入った後、日記を書いた。


ちょっとすごいものを拾う。

大声を出してすっきりできる。

晩御飯に大満足する。


ウォーキングでポーチを拾ってミニロトをもらった。

当たりくじを見て歓喜の雄叫びをあげた。

晩飯が蟹で大満足。


よし、明日の日記を書こう。


7/1

元気のいい挨拶ができる。

新聞を読む。

買い物に出かけて満足できる。


翌朝、僕はいつも通りにウォーキングに出かけた。

気持ちのいい朝、いつものようにすれ違う、顔なじみの皆さん。


「おはようございます。」

「おはよう。」


あ、昨日の奥さんだ。


「おはようございますぅうう!!」

「おはようございます!!!」


当たったことを知っているからか、めっちゃテンション高い挨拶を交わす。いいね、こういうの!!


ご機嫌で帰宅した僕の目に、ソファの上に出しっぱなしになっている新聞が映った。


……そうだ、当たった番号!!

記念にカットして取っておこう!!!


新聞なんて久しぶりに見るなあ、最後に見たのは…夏休みの宿題の…。

…ええと、ミニロトの当選番号ってどこに乗ってるんだっけ?


……あれ?

のって、ないぞ‥‥?


ちょっとまて。そんな馬鹿な。

昨日、ちゃんと当たってたじゃん!


慌てて、財布の中を確認するも、ミニロトの券が…ない!!

そんな馬鹿な!!

誰もこの財布は触っていない。


慌ててパソコンを立ち上げ、昨日見たミニロトの当選番号のページを確認する…。


あれ……?


なんだ?


抽選日は、7/1だと…?


昨日は???


6/31…?


あれ。

なんか、おかしいぞ。


ちょっと待てよ……。


6月に…31日は…ない!!!


慌てて、日記を見返してみる。


昨日かいた部分が、ないだとおおおおおおおおおおおおお?!


昨日は!!!

昨日の出来事はっ?!

蟹食ったじゃん!

ミニロト当たったじゃん!!


6/31日って書いて、6/31日に起きたこと書いて!!!


「ちょ!!かーちゃん!!昨日さ!!蟹食ったよね、食ったよねえええええ?!」

「おいおいどうした珍しいな、何テンパってんの、ウケる!!」

「食った、食ったじゃん?清くんからもらってっ!!」

「食ってねーよ!!そもそも私は蟹アレルギーだよっ!!!」


あきれ果てるかーちゃんに、もうこれ以上何も言えなくなった僕は。


エオンに出かけて、まだしっかり覚えているミニロトの番号を、買ってきた。

買えた、買えたぞ、同じ番号の、ミニロトがああああ!!!


今日の夜僕が書く日記は決めて…。

決めて、いいモノかどうか。


迷っている僕が、ここにいるんだけど。



どうしたもんかね。



どうしよう!!!!

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[良い点] すごい。勢いとドキドキと既視感入り混じるドタバタストーリー。 [気になる点] こわいわー。物欲センサーこわいわー
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