第5話:罪を憎んで、人も憎む
シリアスです。ものすごく。
「嘘だろ……」
帰宅後。
なんとなくソファに倒れこみ、なんとなくテレビをつけると、夕方のニュースでこんな見出しがおどっていた。
『野原見市連続通り魔事件初公判』
勿論僕だって野原見市に住んでいたわけで、この事件を知らないというわけではない。
だけど犯人の名前なんて覚えようと思わなかったし、実際覚えていなかった。
でも、今は脳にしっかりと焼き付いている。
『柴村廉人 被告(43)野原見市在住』
柴村廉人。
柴村――――柴村琢人!!
「こういうことだったのか……」
やみよくんの言っていたことは。
テレビから流れてくる。
傷つけられた人の怒り。
傷つかなかった人の恐怖。
残された人の悲しみ。
そして
殺された人の『これまで』と、
今は無き『これから』
「親が人を殺したから町に居づらくなって引っ越した、が理由としては一番わかりやすいな」
犯人が逮捕された日から1週間ぐらいはテレビもこの話題ばかり取り扱っていたけど、それ以後はこの犯罪大国日本の流れに押し流されフェイド・アウトした。
テレビからは。
だけど、現実は続いている。
「だから僕と距離をとっていた」
同じ野原見市出身。
気づかれることを恐れた。
でも、
隠し事は、いつか、露見する。
「明日の新聞にも大きく出るだろうな…」
もしかしたら、ただの偶然かもしれない。
これだけの情報では、断定することは難しい。
ただし、疑うには十分すぎる。
「でもなぁ…」
柴村君が悪い人ではないのはわかる。
悪いのは、柴村廉人だ。
それを、他の人がどう思うか。
明日か…
前回・今回と少し短かったかもしれません。次は少し長いかも、です。