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第47話:わかっていても怖いものは怖い



「キャハハハハ!! ハハハハハハッ!! キャハハハハげほげほ!! ハハハ!!」


「………………………」


廃病院から必死の逃走を成功させ、満身創痍の僕を出迎えてくれたのは、ひのでちゃんの盛大なる爆笑だった。正直、自分の置かれている状況が理解できない。



「えーと……タク。説明ぷりーず」


隣で一足も二足も早くに逃走したタクに訊いてみた。その苦笑いからはなんとなーく想像できなくもないけど……。



「あー…つまりな……」


「たっくんが説明せんでもええよ」


まだツボっているのか、若干頬をぴくぴくさせながらひのでちゃんは言う。



「とりあえず後ろを見てみぃ」


僕は言われるがままに百八十度回れ右。と、そこには、



「……委員長!?」


もう一人の(目立たない)委員長、榎木武彦が、そこにはいた。



「かっこの中は余計ですよ。それを言うなら前園さんだって目立ってないじゃないですか」


「いつの間にそんな毒舌キャラを……じゃなくて!! なんでここに!?」


ここに・・・、という表現は適当ではありませんね。僕は……」


「集中治療室におったんや!! 気付かんかったやろ!!」


「………………………」


ああやっぱりあそこに人がいたのか、と嘆息しつつ、委員長は出番が少ないんだから決め台詞を横取りするなよ、とちょっとだけ委員長に同情した。もちろん、後半の思考が場違いなのはわかっている。



「置いてもらおう思ったんはホンマなんやけどな? ただ置いて終わりやったらおもろーないやん?」


面白いのは確実にひのでちゃんだけだろう。委員長にしたって、あんな気味悪い所に隠れているのは相当怖かったはずだ。


それより何より、委員長が人形を置けばそれで済む話ではないか。



「僕も結構楽しかったです。前園さん達が必死の形相で走り去って行く姿は見物でしたよ?」


……どうやら本当に毒舌キャラを確立してしまったらしい。なんということだ。



「まぁ、昼でもこんだけ怖いんやから、夜はもっとおもろい事になりそうや。明日の夜にやる予定やから、孝くんたっくん、良かったら来てなぁ!!」


「誰が行くか!! 二度とごめんだ!!」


「……いや、行くぞ。タク」


「へっ……?」


途端に惚けた表情をされた。完全に『バカかお前?』の顔である。そんな顔をしている方がバカに見える、というのはさすがに黙ってはいるけれど。



「今回昼でこれだけ怖かったのに夜は……」


「ただし!!」


僕はタクの言葉を遮り、強引にひのでちゃんへ話を向けた。



「僕らは仕掛け役ってことで。いいよね?」


「ん? 何? 仕掛けは孝くん達がやってくれるん? おおきに!! 面倒やったんやてー!!」


面倒事が一つ減って心底嬉しそうなひのでちゃん。


うーん……。こーゆーのは正直久しぶりだけど、まぁできないことはないかな。


僕が“策士”と呼ばれていたもう一つの理由を、身をもって教えてやろうじゃないか!!


……あ、はい。格好つけました。素直に認めます。すみませんでした。











「ふぅ……。怖かった」


「………………」


タクと海梨ちゃんが出てきたところで、最後のペアとなった。


ひのでちゃんが結構人を集めたようで、ここにはクラスの3分の1程度の人がいる。人脈が広いって本当に羨ましい。


ていうか海梨ちゃん、タクの後ろで今だにガクガクブルブル状態だ。あんまり怖い仕掛けにしたつもりはないけど、まぁこんな不気味なところ、仕掛けがなくともお腹一杯なのだろう。人のことは言えないし。


そのおかげで海梨ちゃんがタクの背中にしがみ付いて離さないのだから、結果オーライだと思う。



「で、最後はひのでちゃん。……本当に独りで大丈夫?」


「ん。なんとかなるやろ」


「……そう。じゃあこれ、地図と懐中電灯」


「あんがとさん!」


一人きりで行く勇気は凄いと思う。でも、判断を間違ったんじゃないか?



「ゴールにイルカか何かのぬいぐるみがあると思うから、それを持って帰ること。おっけぃ?」


「おっけー!!」


親指と人差し指で丸を作ってウインクをしてみせるひのでちゃん。本当に“怖い”という感情があるのかどうか疑うよ。



「んじゃあ行ってくるでー」


ひらひらと背を向けたまま手を振って、ひのでちゃんは夜の闇に溶けていった。








バタァン!!


後ろのドアが音をあげて閉まった。



「なんやぁ、結構怖いやん」


まだまだやけどな。たっくんが後ろから閉めたんが丸分かりや。こんなんじゃあつまらん。


懐中電灯渡されたけど、非常口のランプなんかが点いとって思ったより明るいわ。



「……っても、願うべくもないことか」


ウチん時はヒコが手伝ってくれたけんええけど、見た感じこの中に協力者がおるとは思えん。たっくんも外におるし。


それに他の人が先に行っとるけん、トラップ類もほぼ使い果たしたやろ。


……おっ? 今ウチめっちゃ頭使ってへん? たっはー!! 孝くんみたい!! 頭脳派や頭脳派!!



ガシャァァァン!!


「んー……?」


なんか、割れへんかった? 気のせい?


がらららららら……



「………………………」


……なんで? なんでストレッチャーが勝手に走っとん? なんでウチに向かって来よんや!?



「ちょっ、危な!!」


ぶつかるぶつかる!! ぶつかるって――――


……………………。



「あれ?」


止まって、る……?


閉じた目を開くと、ストレッチャーは廊下の真ん中で静止していた。


喜ぶべきなんやろーけど、喜べるわけないやんか。何もないところでいきなり止まるわけないやん、普通……。


等速直線運動とか慣性の法則とか、飛び出すな車は急に止まれないとか、そこらへんのはどこ行ったんや!! えーこら!!



ガタン!!


「っ……!!」


つ、次は何やぁ? どうせ孝くんのトラップ……なんやろぉ?


…………………………。



「うん?」


何も起こらん? あっ、そっか。いくら孝くんのトラップでも、ウチが動いて引っ掛からんことには起こらんのやな。よし、今日のウチは冴えとるでー!



「……って」


じゃあさっきのは・・・・・・・・一体何なんや?


孝くんのトラップやない。聞き間違えなんてもっとない。さっきの物音は確かに……。



「いくらウチでも、ちぃと気味悪ぅなってきたな」


でも、あんだけ大見得を切っといて尻尾巻いて逃げ帰りましたー、じゃあ格好つかん。とにかく目的地を目指さ


ぴとっ



「ひゃぁっ!!」


冷たいんが首に当たったって!! もう無理!! 早く、早く行こ!! 走ろ走ろ!!


次は右? で、左! って階段どこやー!? あっちか!! あー、さっきから割れる音とか叫び声とか、ドアが勝手に開いたりしよるけど、そんなを知らん!! 見えん聞こえんそんなもん!!



「はぁ……はぁ………はぁぁぁ………」


着いた……ここ。院長室? 遠いっちゅうねん。


で、ええと。イルカか何かのぬいぐるみっと……。



がこん



あっ、何か蹴ってもーた。


「すまんすまん。下を見よらんで……」


拾い上げてみる。



「………………………」


ウチの渡した市松人形。


人形と目が合った一瞬、それが自分に向かって、笑った気がした。



「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァアアアアアあああああ!!」











「市松人形?」


「そや!! 孝くんはイルカのぬいぐるみを置いとるって言ったやん!!」


「いや、確かにイルカ、だったよな? タク」


「俺らが院長室に行ったときにだって、そんな市松人形なんて無かったぜ?」


「ひのでちゃんに渡した地図は、他の人と違うルートだし」


「………………………」


「そういや、その市松人形は?」


「持って帰れるわけないやろ!! 置いて捨ててきたわ!!」


「ふーん」



次の日の昼。僕らは廃病院の院長室を調べてみた。


しかしそこに市松人形の姿はなく、可愛いイルカのぬいぐるみが一つ残されていただけだった。



なんで僕は大晦日に肝試しの話を書いているんでしょうか? 季節外れとはこのことです。まぁ、半袖半パンで部活をしている人間の言葉じゃないですけど。意外に体育館の中ならいけます、半袖半パン。


更新が遅いんですよねぇ……。本当は夏休み中に第二長編を終わらすつもりだったんです。なのに延びに延びて今に至るわけです。申し訳ない。


来年こそは更新スピードを上げます!! ……と、宣言したいのは山々なんですが、今現在も冬休みの宿題が非常にヤバい状況です。はてさて、どうしたものか。


でもまぁ、来年のことを今言っても仕方がありません。明日は明日の風が吹く、そんな言葉を信じて来年も頑張ることにします。


それでは、よいお年を!!


……年越しうどんウマー。

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