第4話:注意事項は守るべき
2時間目、僕・海梨ちゃん・ひのでちゃんは、まぁ大方の予想通り遅刻した。
その時のひのでちゃんの言い訳が――
『前園君のためにガッコをを案内してたら遅れましたっ』
……僕がいいように使われたカタチ。
ぎじゅちゅし……あ、いや、技術室がこんなに遠いとは思わなかった。
というか、初日からこれで大丈夫か? 僕の内申。
で、
「前園、バイバイ!」
「あ、うん。また明日」
授業・掃除も終わり、放課後。
今日だけで話せる友達(海梨ちゃん・ひのでちゃん以外)ができ、なかなかいい出だし。
「孝くん、部活には入らんの?」
「え? あ、まぁ」
GHQ希望、ってことで。
……意味が分からない?
Going Home Quickly(家に早く行く=帰宅部)ですよ。誰もマッカーサーになるとは言ってないです。
どーでもいいけど。
でも、部活に入らないということは友達の幅も減るし、ついでなら柴村君と仲良くなりたいなぁ、と思い話しかけてみることにした。
「柴村君はどこか部活に入るの?」
「ん。ああ、俺は前の学校でサッカーしてたから、ここでもやろうかなぁって」
もうココにも慣れたと思っていたが、意外にぎこちなさが残る柴村君。
まぁ、今日転校してきたばっかだりだし、当り前か。
僕? これでも緊張状態なんです。
「じゃあ、俺はこれで」
運動場へと向かっていった。
…あんまり話せなかった。
なんか少し距離を感じるなぁ。
「柴村と友達になるのは難しいかもしれない」
……ん?
さっきのセリフは僕のものではない。
いくらなんでも、少し距離を感じただけで、そんな根拠もない事を言ったりはしない。
とすると、
「やみよくん?」
振り返ると、やみよくんが壁にもたれかかって腕を組み、クールな雰囲気をかもし出していた。
こうやって正面から見ると、目つきが怖い。
「――柴村琢人。野原見市出身。先月下旬に引越して来た」
「……それが、どうかしたの?」
僕も同じようなもの(というか全く同じ)だが。
「引っ越してきた理由。『柴村』の苗字。
……気をつけておいたほうがいい」
それだけ言うと、やみよくんは去って行った。
「どういうことだ? 気を、つける?」
夕日が差し込む僕一人しかいない教室で、その言葉は吹奏楽部の練習する音でかき消された。
僕がやみよくんの言った意味を知るのは、この1時間後だった。