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第42話:チカラ無き者の戦い方


今回は孝介の策が淡々ダラダラと続きます。

多分、読んでいて面倒になってくるかもしれません。

それを避けようと少し端折ったら、心情変化が若干不自然な気が……。

あれば指摘していただきたいです。本当、お願いします。






「んだよ。お前の話聞いてる暇なんざ……」


「そこをどうか抑えて下さい。損な話ではありませんから」


「だから、聞かねぇって言って……!」


「まぁ待て」


今にも殴りかかってきそうだった赤髪を、片桐が腕で制した。



「名前くらい聞いとこう。なんつー名だ」


「名乗るときは自分から、では?」


片桐は一瞬むっと顔をしかめたが、「片桐醍醐だ」と吐き捨てるように言った。


相手が誰であれ、いつ何時も強気でなければならない。


臆せば、負ける。



「二つ名は『紅い狂気マッド・ブラッド』」


「成程。僕は前園孝介です。二つ名は特にありません」


カッコいい二つ名が欲しいものです、と付け足した。



「で、話ってのは?」


「まぁ、交渉ですね」


「交渉?」


「取り引きとでも言い換えましょうか。僕は貴方たちにとって有益な情報を与える。その見返りとして、これ以上僕達に手は出さない、ということです。どうですか?」


「はん……」


僕の回答を聞くなり、片桐は鼻で笑った。



「そんな内容もわからない情報に飛び付くとでも思うか?」


「ふぅん……。それもそうですね」


僕は軽く肩をすくめ、額に手を当てて考える素振りをした後、「では一言で簡潔に」と前置きをし、



「凩やみよ――『冷たき烈風ブリザード』に、勝ちたくはないですか?」


「何ィ……?」


片桐以下、四人の不良たちが明らかに猜疑心のこもった目で僕を見る。


そりやそうだ。僕が仲間であるやみよを自ら売る、と宣言したのだから。



「……成程。俺らに対して有益ということはよーく分かった。で? それに対する、テメェ自身のメリットはどうなんだ?」


「ん? ……まぁ、自己保身ですね。見ての通り、喧嘩なんて生まれてこの方ほとんどしたことが無い身でして。ですから、自分の身は自分で守ろうと。他人に守ってもらった結果がコレですし」


「……本当にそれだけか?」


「んー、付け加えるとしたら……そうですね、こんなことに巻き込まれてしまったことへの腹いせ、も無くはないです」


そこまで答えた後、思い出したように「あっ、そうそう」と言う。



「僕を脅して聞き出そうなんてことはしない方がいいですよ? 勿論、拷問まがいのことも。僕は一般人カタギですが普通カタギではない人間ですから。その時は嘘偽りを端から端までずずぃーっと並べ立てて差し上げます」


「……………………」


……よし、言うべきことはほとんど言った。後は相手の出方を待つだけだ。


しかし、思ったより相手の反発が少ないのには驚いたな。下っぱ×3は何か言いたげだが、片桐がそれを制している。


この男、単に圧倒的な暴力だけでのし上がったのではなさそうだ。つまり油断は禁物。不良だからといって侮ってはいけない。


――その片桐はというと、先程から腕を組み深く考えている。しかし、突如その姿勢を崩したかと思うと、こちらに顔を向けた。



「……いいだろう。ただし条件がある」


「条件?」


何だろうか?



「テメェの情報がデマだった場合、そっちの約束も破棄する。いいな?」


「……僕としてはそれは暗黙の了解だと思ったのですが、口に出すものなんですね。勿論構いませんよ」


「交渉成立だ。早速あの烈風に勝てる方法とやらを教えてもらおうか」


「え? ああ分かりました。あいつ――凩やみよの弱点、ということで」


「どうでもいいから、さっさと教えろ!」


「そんなに急がなくても教えますって。あの『冷たき烈風ブリザード』の弱点は、ですね……















 僕が知ったこっちゃありません。無いんじゃないですか?」




「……………………」


ぷちっ、と。


何かが切れる音がした気がした。


実際は音なんて出なかっただろうけど、片桐醍醐は確かにキレた。



「…………っ!!」


気付けば、


気付けば握り締めた拳が目の前に迫っていて、


気付けば鼻あたりに鈍痛が走っていて、


気付けば宙に浮く感覚がしていて、


気付けば――僕はただの一撃で吹っ飛ばされていた。



「こーちゃん!!」


ナオの悲鳴に近い声が聞こえた。が、今は構っている場合ではない。


地面から半身だけ起き上がり、右手で鼻血を拭くと、僕は言う。



「ふぅ……。やっぱり痛い、か」


「前園――孝介。一つ聞きてぇ」


片桐が僕を見下ろし問い掛ける。



「なぜ最後、嘘をつかなかった? あの流れなら、デタラメを言ってこの場を乗り切ることもできたはずだ。なのになぜ逃げなかった? もう、テメェに逃げ場はないぜ?」


「逃げる……なぜ?」


ぱんぱん、と砂ぼこりを払いながら立ち上がり、再び片桐と対峙する。



「僕らがそんなことをする必要はありません。むしろ――逃げる必要があるのはあなた達のほうですよ?」


「何だと?」


「知らないとは思いますけど、僕ら、二人きりで遊びに来たわけじゃないんです。友達がもう二人いてですね……まぁトイレを借りに行きましたけど……その二人が――先程の場にいたのをご存じですか?」


「んだと……!?」


「より正確に表現するなら大通り側、つまりあなた方の後方、僕らから見て正面にいました。もう一つ付け加えるとするなら……携帯電話を手にしたまま去りましたよ? これが何を意味するか、分かりますよね?」


「…………………」


「ここには警察が来ます。交番からじゃない、葉桜本署から。その分、時間はかかりますが……いい感じに時間をかせぐことができましたし。その人達は、この状況を見てどう思うでしょうか?」


いかにも不良な集団。


鼻から血を流し、衣服が汚れている男子。


怯えて、男子の後ろで震えている女の子。



「時間的にはもう少しってところですね。早くしたほうがいいですよ?


 あなた方に・・・・・・逃げ場はない・・・・・・のですから」




――勝った、と思った。


下っぱ連中には明らかな動揺が走っている。


片桐も表情こそ崩さないが、内心は焦燥に駆られているはずだ。



やみよに対する敵意と害意を持っている奴らにとって、僕の言う情報は何としてでも手に入れたいものだろう。あとは適当に言い訳しておけば、猜疑心より欲望が勝つ。


詐欺師のやり方と同じだ。人の心の弱みに付け込み――――裏切る。


勿論相手は怒るだろうが、それも作戦通りだ。詐欺師のように逃げたりはしない。


怒りに任せて暴力を振るうのも予想済み。そこで現実を突き付けるのだ。『これは僕の策だ』と。


傷という動かぬ証拠。被害者以外の証人の存在。自分達の置かれた立場を理解した不良達は、逃げる意外の選択肢を失う。



そんな立場も、警察の登場も、不良達が今直面している現実も、友人という目撃者の存在も……僕の言葉の全てが――――偽りだというのに。



※孝介の策の説明です。興味の無い方はスルーでお願いします。


最初から凩やみよに対し苛立っている不良に、『都合の良い話を持ちかける、正面切って裏切る、殴られる』。そして最後に、『』内の流れが“策”だと主張するわけです。警察が来て、殴られた人間を見れば、そりゃ捕まえますからね。


で、上の話が全て“策”です。勿論警察は来ません。おわかりいただけたでしょうか……。


※さて、作戦成功とほくそ笑んでいる孝介ですが、本当にこのまま終わるのか。それともまだ一波乱が……?

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