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第36話:Remember My Past....last the last

またまた更新が遅れて申し訳ないです。




「……っていうことがあったんだ」


いつからか降り出した夕立。


その大きな雨粒がアスファルトに打ち付けられる音に邪魔されながらも、なんとか最後まで喋り切った。


僕らの過去を、余すところなく。



「うーん……。話はだいたい分かったけどやなぁ、孝くん。さすがに危険すぎたんとちゃうん?」


「下手すりゃ今藻さん、死んでたぜ?」


「できるだけ手は打ったんだけどね…。空気中に蒸発した灯油に発火しないように、あと学校に燃え移らないように、場所は風通しが良くてコンクリート作りの屋上。灯油を撒き方も、僕らの周りだけが燃えるように慎重に撒いたよ」


「やけど、なっちゃんの体に灯油をかけたんは流石に危険すぎん? もしも炎が少しでも触れたら……」


「それは心配なし」


僕はひのでちゃんの問いを遮って答えた。



「あれ、ただの水だったから」


話の中でも、僕は『液体』としか言っていないはずだ。無論、地面に撒いたのは本物灯油だけど、ナオにかけるものだけは中身を水にしていたというわけだ。



「うーん……」


と、タクとひのでちゃんが一応納得した時、今まで黙り込んでいた海梨ちゃんがおもむろに口を開いた。



「それって、やっぱり危ないよ。もう終わった事だから、何を言っても仕方がないけど、同じことはして欲しくない。さっきの話、一番危険だったの、孝介くんなんだよ?」


……さすが。さすがは海梨ちゃんだ。


この作戦は完璧だった、ということにしようとしたけど、海梨ちゃんレベルは騙せないか。


あの頃の僕は本当に馬鹿だった。では今は違うのかと問われれば答えに窮するが、それでも今の僕ならあんなことはしないだろう。


ナオの安全だって完全に保証されたわけでもないし、他の先生や友達が駆け寄ってくる可能性も大いにあった。


最後に、僕自身の安全性。少しでもタイミングがずれていたら全身火傷は必至。ナオは最初から灯油が撒かれていない場所に立っていたけど、僕は違う。


…………本当に、



「馬鹿だったよ。でも、その時の僕は、精一杯やったんだと思う。現に、作戦以後・・の僕の読みはだいたい当たったしね。全て、何事もなかったかのように…………終わったんだよ」


黙りを決め込んだ生徒。我関せずを貫いた教師。


僕は復讐を考えた。


けれど、しなかった。


ナオに、止められたから。


「もう終わった事だから」って、言ったから。


だから…………、



「……孝くん。これ」


唐突に、ひのでちゃんが傘を差し出した。



「何? どうしたの…?」


と、僕が訊くと、ひのでちゃんは、少し離れた電柱を顎で指した。「行ってこい」とでも言うように。


今いる場所から一歩踏み出す。それだけで、雨粒が容赦なく僕を打ち付け、肩を濡らした。


こんな状態で、例えば道端に座り込んでいる人がいたとするなら、全身びしょ濡れで……、



「絶対風邪ひくぞ」


「……………」


「買い物してたんじゃないのかよ……」


電柱の陰に隠れるようにして、ナオが膝を抱え込んで座っていた。


着ている衣服は水分を限界まで吸い、髪は風呂上がりのごとく湿っていた。


そして、最も濡れていたのは…………顔、頬。


輝く雫は、雨か涙か。



「………香乃かのちゃん……」


香乃――矢井田やいだ香乃。自殺した、女子生徒。


全くこいつは……。


あれだけ辛い思いをしたのに、なんで人のために泣くんだ。


なんで自分のために泣かないんだ。


僕は、ナオの助けになったのか? 苦しみから解き放つことができたのか?


きっと、それは僕の思い込み。あの笑顔は、優しさゆえのかりそめ。


ナオはずっと苦しんでいたんだ。友達を死なせてしまったことに、責任を感じていた。過去からの呪縛は、まだ続いていたんだ。そして、これからも。


――だったら、僕ができることはなんだ?


簡単だろう? これ以上、悲しませやしない。得られるのがたとえ、かりそめの笑顔だとしても。



「……なぁ」


僕は、手にした傘をナオの頭上で開く。


そして、そのまま泣き続けるナオの前で何も言わずに座った。




雨は、まだ止みそうにない。


なんというか、シリアスがクダグダとずるずると延びてしまいました。その上、更新速度が有り得ないほど遅くなりまして…。これが世に言う「スランプ」なのでしょうか…? よくわかりませんが、とにかく頑張ります。あと、余談ですが、携帯電話からだと、前書き後書きで改行ができないんですね。

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