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第3話:第一印象は結構大切


僕に最初に話しかけてくれたのは、


「…………」


「……ど、どうしたの?」


「あ、いや……」


思わず見とれてしまった、とは言えないよな。


電車に子供料金で乗ることができそうな、幼さの残る顔。


背丈も低めで、その顔立ちを裏切ってはいない。


腰くらいまで伸ばして、長く濃い茶色をしたきれいな髪。


僕が喋らなかったのを見て、少しオドオドしている気弱そうな目。


その他、僕の言語力で表現しきれない諸々を含め、万人が万人『可愛い』と表現するに違いない。



「私は、井戸端いどばた海梨かいり。よろしくね」


「……井戸端会議?」


そんな馬鹿な。



「会議じゃないから。『か・い・り』。訂正も人生で何回したんだろ…?」


「あっ、ご、ごめん。えっと、井戸ば…」


「海梨って呼んでくれないかな? その苗字あんまり好きじゃないし」


「わかった。海梨ちゃん、だね」


「そうゆうこと。で、前園君はどうしようか……」


僕をどう呼ぶか、本気で悩んでいる海梨ちゃん。


勿論、悪い気はしない。



「んー。よし」


お、決まったか?


「お〜〜い、ヒノ〜!」


決まってないらしい。誰かを呼んだ。



「どしたん、カイリ?」


来たのは、



「あ、委員長だ…」


名前は忘れたけど、先ほど学級委員長に選ばれた人。


雰囲気としてはボーイッシュ。


多分僕より高い背で、ハキハキした口調だったような気がする。


いかにもクラスの人気者、といった感じだ。



「およ? 転校生の地味な方、こー君やん」


地味……。



「ヒノちゃん。会っていきなりそれは酷いよ」


「あ、やっぱり? で、どしたん急に呼んで」


「……前園君のあだ名を考えようと思ったんだけど」


「うちがもう言ってもうた、と」


初対面でな。



「『孝介くん』でいいや。なんか、シンプルで」


何かを諦めてしまった海梨ちゃん。最早あだ名ではない。



「次はうち、ってさっき委員長になったばっかやし覚えとるわな?」


げ。


流石にこの状況で、忘れました、とは言えない。



「……これは『聞いたけど忘れた、どうしよう』的な顔やな」


「孝介くんも孝介くんで孝介くんなりに酷い」


見事に心を読まれた。



「はぁ……。うちはこがらしひので。カイリの幼馴染。もう忘れんといてよ」


「い、いえっさー…」


「ちなみに、ヒノちゃんには双子の弟がいて」


「あっちにおるんが我が弟、凩やみよ」


見ると、このにぎわいの中一人静かに読書している…………女子?


いや、一応学ランを着てはいるが、女の子っぽい顔立ちで、ロングの髪を軽く一つにまとめている。


ついでに言うと、ひのでちゃんはさっぱりとしたショートヘア。


二人の顔は……激似。



「なんか、簡単に入れ替われそうだね」


つーか、性別逆だろ。


「いやー。さすがに声でバレる」


「性格も真逆だしねー」


日の出と闇夜だからか? 名付け親に問題があるのだろう。



「前は上手くいっとったんやけど……」


「あ〜。小学校の時とかね。やみよくんは乗り気じゃなかったけど」


「やってたのか!?」


「担任の先生もついには『そこのやみよ、又はひので!』って呼んでたんだよ」


「ほんっと。生徒の名前をなんだと思っとんや、ってカンジ」


「原因はヒノちゃんが作ったけど」


「確かに。あの頃はウチも若かったなぁ」


「年寄りくさっ!」


…あの〜、すいません。


話に入れないんですが。





「ん? あぁ〜〜〜!!!」


「どしたの、カイリ?」


「海梨ちゃん?」


「次、の技術っ。ぎじゅちゅしつだぁ!!」


「「え゛。」」


噛んだのはともかく(技術室って言いにくいし)、気がつけばまわりには誰もいない。


「教室移動って」


時計を見る。


「……あと1分しかないんだけど」


簡単に言えば…






「「「やばいっっ!!!」」」



「えっと、教室わかんないんだけど」


「案内するから早く来て!」


「わ、わかった……」


僕は腕をつかまれ、なるがままに走って行った。


舞台裏会話。

孝介「あれ?男女の一卵双生児って、医学的あり得ないと思うんだけど」

ひので「じゃあ、ウチらは一卵性じゃないんやろうな」

孝介「でも、顔はすごく似てるし…」

海梨「二卵性でもないってこと?」

一同「…………」

孝介「この話は、忘れよう…」

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