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第31話:思春期男子なんてそんなもん





「ええ!? 一緒の部屋で寝た!?」


次の日。所変わって、そよ風が涼しい木陰の集合場所。


昨日からのことを説明する際、うっかりナオが口を滑らし、そのことがタク他二名知るところとなってしまった。


ただまぁ、食い付いてきたのはタク一人だったけど。


「じゃあ何か? おまえら、したのか?」


一転、声を潜めるタク。



「何を?」


「何って……、ほら、『アレ』だよ」


「「アレ?」」


アレ……アレ…なんだろ………アレ、ねぇ……。


……あぁ。わかった。なんというか、タクの考えそうな事だ。


どうやらナオも分かったらしい。こっちを向いて苦笑いをしている。


ん〜、ここは……。



「うん。したよ、『アレ』。な、ナオ?」


ナオはいきなり話を振ったので少し驚いたが、すぐに理解したらしく、ニヤリと笑った。



「そうそう。したよ。楽しかったね〜」


「マジで!?」


「でも結構疲れるな、『アレ』」


「終わった時なんか、ぜぇぜぇはぁはぁ言ってたからね〜」


「確かに暑かった。めっちゃ汗かいたな」


「ちょっと痛かったかな? もう少し優しくしてくれても良かったんじゃない?」


「あー、ごめんごめん」


「でも一回休んでからは、あたしも本気出したんだから!」


「……おいおいおまえら。まだ中三だぜ?」


「「中三だけど?」」


「……返す言葉もねぇ」


と、ここでひのでちゃんが、ずいっと顔を出した。


完全にニヤついている。



「で、結局孝くんは何しよったん?」


さすが。ナイスなタイミング。



「「“叩いて被ってジャンケンポン”だけど?」」


「え……!?」


アホ面、どーん。



「マジか……。あ、だから……確かに中三は、………………………………………………………ううぅ」


はい撃沈。


ちなみに海梨ちゃんは、最初から最後まで目を白黒させていた。


うん。一番純粋で清廉なリアクション。どうか、そんな綺麗な心のままでいてほしいものだ。



「さぁてと。そろそろボーリング場に行こうよ」


「あ、あっちだよ、あっち」


海梨ちゃんは自分の入れそうな話題になると、ここぞとばかりに入り込んできた。



「んじゃ、行こか」


「レッツらゴー!」


今だにうぅぅぅ……、と唸っているタクを残し、僕らは歩き出した。













「つ、疲れた…」


「楽しかったね〜」


「指ぃ……」


「あんなん楽勝♪」


「なんか微妙な結果だ」


と、五者五様の感想を漏らしながら、ボーリング場を後にするみんな。ちなみに上から、僕、海梨ちゃん、ナオ、ひのでちゃん、タクである。


ボーリングのことについて説明すると長くなってしまうので省略するが、一つ言えることは『スポーツと呼称される物に於いて、ひのでちゃんに勝てる者はいない』ということだ。


3ゲームして、スペア二回、その他すべてストライクなんて人間業じゃねぇ。



「奈央ちゃん、指大丈夫?」


海梨ちゃんが心配そうに訊く。


なぜかというと、ナオの指がボーリングの球によって言葉では言い表わしたくなくなるような、いや、言い表わせないほどの扱いを受けたからである。


それでいて、関節が外れたり骨折しなかったのは奇跡に等しい。つーか、絶対に奇跡だ。



「ちょっと痛いけど、別になんともないよ!」


こいつの指の骨はアル○マイト製なのだろうか。



「それよりさ〜、あたしは海っちやヒノのことをあだ名で呼んでるんだから、あたしのこともあだ名で呼んでよ」


いきなりワガママ言うなぁ…。



「そうやなぁ……。どう? カイリ?」


「奈央ちゃんだから、『なっちゃん』なんてどうかな?」


「お、いいねー。じゃ、改めまして、なっちゃんです! ヨロシク!」


「あ、よろしくお願いします」


「だから海っち、堅苦しいって」


途端に、はっ、とした顔になる海梨ちゃん。どうやら無意識らしい。


と、今まで黙っていたタクが話に割り込んできた。



「なぁ、井戸端。俺のあだ名も考えてくれよ」


……さて、この言葉が意味する事を考えよう。


好きな人に親しみを込めて呼んでもらいたい、かな?


積極的だなぁ。僕には絶対真似できない。



「ええ〜。たっくんはたっくんでありたっくんでしかないやん!」


大真面目に返すひのでちゃん。使う時・場所・場合さえ間違わなければいい言葉なんだけど。


しかも、タクが海梨ちゃんのことを好きなのを知ってるはずだよな。


ん〜、ひのでちゃんは一体誰の味方なんだろう?



「正義の味方?」


……心を読まないで。タクとかがぽかんとしてるから。



「でも、うぅん……。琢人くん……琢人くん…」


「しばむら、たくと……」


海梨ちゃんは一応考えていたようで、ナオも参加し相当悩んでいる。



「……やっぱり、たっくん、かな。なんか他に思いつかないから…」


最終結論。無理。



「ん〜。しば、むら。んんん…シバタク……違うか…」


タクの目的外のくせに今だに悩んでいるのはナオ。果たして何が『違う』のであろうか。



「なんか悲しくなってきたぞ、俺」


「だいだいやなぁ。『柴村琢人』っちゅー名前がいかんのや」


……ひのでちゃん、その言い草は酷い。



「そんなんじゃないよ。私のネーミングセンスがないだけだから…」


「いぃや、あだ名の付けにくい名前なんや」


そこにナオも同意する。



「確かにね〜。それにほら、不吉だし。タクくんの名前ってさ、似てるじゃん?」


「誰に?」


最後の疑問は僕。



でも、この質問はするべきではなかった。


気付くべきだった。


思い出すべきだった。


タクは――――



「誰って……





 柴村廉人に」



「「「――!!!」」」




瞬間、



空気が、



固まった―――


シリアス一直線。

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