第30話:本気と書いて「マジ」と読む、の?
結局、スーパーでアイスを買い(コンビニより安かった。結果オーライ)、家に帰ると、海梨ちゃんから電話がかかってきた。
「さっき琢人くんから電話があったんだけど……」
お、これはまさか。
「明日、みんなで遊ぼうって。確か奈央ちゃんもいるんだよね? 琢人くんから聞いたよ」
……ヘタレめ、と言いたいところだが、遊ぶ約束をするだけでもかなり勇気が必要なんだろうな、とフォローにまわっておく。
「分かった。明日……ボーリングね。……ああ、自分で払うって。大丈夫だから。……うん。じゃね、また明日」
ガチャン、と今時は珍しい黒電話を切る。
「海っちから?」
「うん。明日みんなで遊ぼう、だって」
「あ、そうなんだ! 楽しみだね!」
満面の笑みを浮かべるナオ。
つられて僕も笑った。
それはとても微笑ましい光景。
一年半前のあの時には、想像もできなかった―――
「孝介〜、奈央ちゃ〜ん、ご飯よ〜」
「え? あ、はいはーい」
母さんの声が感傷に浸りかけた僕を現実へと引き戻した。
「今日はなんとハンバーグだよ、ハンバーグ!」
「……なんで知ってんの?」
「ん? 100%の的中率を誇る勘」
「それは勘じゃない」
人間の食欲の為せる業?
「はぁ……はぁ……は、ゲホッ……はぁ……」
「ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……ふぅ」
全開にした窓から時折そよ風が吹き込む僕の部屋で、息も絶え絶えにナオと二人で床に倒れこんでいた。
どうしてこうなったかというと……、
〜回想(描写なし)〜
「こーちゃん、暇だから『叩いて被ってジャンケンポン』しよ!」
「いきなりだな。第一、この家にヘルメットはあっても叩く物がないから」
「あ、こんな所にピコピコハンマーが」
「えぇ!? 都合良すぎ!!」
「いーじゃん。やろうよ。せーのっ」
「「叩いて被ってジャンケンポン!」」
カポッ
「勝ったのにヘルメを取るな!」
「おっと間違えた」
「…………」
「はい、もう一回!」
「「叩いて被ってジャンケンポン!!」」
ガゴッ
「痛っ!! なんでヘルメで殴る!?」
「また間違えちゃった♪」
「はぁぁ!?」
「「叩いて被って(以下略)」」
「痛たたたた…」
「まだ叩いてないけど」
「お腹痛い! トイレ!」
バタァン!
「…ハンバーグの食べ過ぎだな」
十分後。
「復活!!」
バシッ
「なんで叩くのー!? てゆーか、ピコピコハンマーのくせして打撃音が鈍いよ! “ピコッ”じゃないのー!?」
「知らん」
「あーもう! も一回!」
「「叩いて被(以下略)」」
バシッ
「ぐえ」
「「叩い(略)」」
バシッ
「あべしっ!」
「叩(略)」
ベチッ
「ひでぶっ!」
「(略)」
(略)
「たわら(略)」
―――そして一時間後、今に至る。
〜回想終了〜
「まさか…、『叩いて被って』がこんなにハードな競技だったとは…」
だからクラスマッチにも採用されたのかな?(第12話参照)
「疲れた…。もう寝る…」
「ん。おやすみ〜……って、どこで寝る気!?」
「どこって、思春期真っ只中の男子の部屋だけど?」
ルビの下の文字が見えるのは僕だけだろうか、いや違う(反語)。
「気にしない気にしない。てゆーか、小学生の時なんかいっつも一緒に寝たりしてたじゃん」
「年齢を考えろ年齢を!」
正論を放ってみた。
「もう空き部屋ないって」
現実論で返された。
「ぐっ……」
「大丈夫。ちゃんと床で寝るからさ。こーちゃんは心置き無くベッドで惰眠を貪ってくれ給え」
「あんた誰だよ」
しかも最後酷い。
「あーもういいや。僕が床で寝る。ナオはベッドで寝てろよ」
「え? いいの?」
「いいの。分かったらさっさと寝よう」
そう言いながら、クローゼットから布団を取出し手際よく敷いた。
「電気消すぞー」
「あ、ちょっ、ちょっと待って」
ナオは慌てた様子で制止しに入った。
「何?」
「えーっと、その、ほら、あれだよ」
どれだよ。
「あぁ、なんていうか……」
目線が繁殖期の蚊の如く宙を舞い、それがやっと僕に向いて一言。
「きょ、今日、楽しかったね!」
「……うん」
あれだけ引っ張っておいてそれだけ!? とツッコミそうになったのだが、そんな気持ちは一瞬で失せた。
ナオの笑顔が、淋しさを含んだそれへと変化していくのが感じ取れたからだ。
なぜ今そうなったのかは分からない。僕と会ったことで、『あの事件』を思い出たのかもしれないし、それとはまた違う理由なのかもしれない。
でも僕は、そんなナオを見ていられなくて――
「…おやすみ」
一言言うと、部屋の電気を消した。
暗闇の中で、ナオが「おやすみなさい」と呟き、ベッドに寝転がったのがわかる。
「はん……」
臆病鶏め。何かかけるべき言葉があっただろうに。
そう自分に毒づき、僕は目を閉じた。
シリアス、来ました。
これから増えてきます。
この頃、更新が週一しかできなくてすみません…。
せめて週二くらいにはしたいですねぇ。