第27話:自分に自信が無さすぎるのも問題
ナオは引っ越す前に住んでいたマンションの隣人。つまり幼馴染だ。
正直に言うと、僕はナオのことが好きだった。
いや、過去形ではなく現在形で表されるべきなのだろう。
いつからかは分からないけど、気付いた時には好きだった。
向こうはそれを知らない。
いや、知らなくていい。
あいつも僕みたいな男より、もっとカッコよくて頭が良くて運動できる人の方がいいだろう。
もしかしたら、今日のサッカー観戦だって、サッカー部に好きな人がいるからこそ見に来たのかもしれない。
それはそれでいい。
僕は今の関係を壊したくない。
それだけだ。
ただ、ナオはその明るい性格と幼馴染という間柄ゆえ、時々『僕に好意を寄せているのではないか?』と、僕が勘違いしそうになる行動言動をとることがある。
そりゃ嬉しいけど、自分の中で諦めをつけようとしている僕としては複雑であり、変に期待してしまったことに対する自己嫌悪しか残らない。
なんにしても、叶わぬ恋であることは知っている。
自分のことは、
自分がよく、知っている。
その後、待たせていた海梨ちゃんとひのでちゃんと合流し、商店街から離れたファーストフード店で昼食を食べていた。
「あたしの名前は今藻奈央っていいます。山城中の3年です。よろしくお願いします!」
そう言って、ぺこりと頭を下げた。
「丁寧にせんでもええよ。ウチらは同学年なんやし」
「そうですよ。それに私たち、もう友達なんですから」
「やっぱりそうだよねー。えーと、海梨ちゃん、だったっけ? 言ってる事とやってることが真逆だよ?」
「あ! 確かにそうで……、そうだね」
「切り替え早っ!」
二人を対象に突っ込んでみた。
「「「女子の団結力をなめるな♪」」」
息合ってるし…。
「奈央ちゃん、沢山怪我してるけど大丈夫?」
見ると、ナオの指や頬にはいくつかの絆創膏、腕には切り傷があった。
「ん? だいじょーぶだよ。さっき怪我したのは膝だけだから。しかも、自分で転んだだけだし」
「こいつ、昔っからよく怪我する奴だから。タンスの角に小指をぶつけるなんて日常茶飯事。そんなんだから僕がいつも絆創膏を持ってなきゃならないんだよ」
「…やっぱり」
「あ、そうやったんや。なんで孝くんはいっつも絆創膏持っとんかなー、思とったけど、そゆこと」
「そゆこと。……というかナオ、自分が怪我すること分かってるんだから自分で予め用意しとけよ」
「あ、そういやポケットに……、あった!」
「あるのか!?」
あるなら、自分で貼れよ!
「そうそう、こーちゃん。家の電話番号教えて。言わないまま出ていったでしょ? 色々話したい事があるんだから」
う…。別れるのが淋しかった、というのは秘密だ。
「ああ、分かったよ」
別に嫌ではなく、むしろナオと話す機会が増えるのは嬉しい。
………………はっ!
いかんいかん。少し期待してしまった。
何度も言ってるだろ、僕。
ナオは僕のことが好き、なんていう幻想は捨てろ。
現実を見ろ。
「孝介くん、孝介くん」
「あっ、ごめん。何?」
「いや、なんかすごく真剣な顔してたから」
「あー、何でもない」
「……たっくん、何で眉間にシワ寄せとん?」
「何でもない」
「わかりやす…」
「今藻さん、何か言ったか?」
「べーつに!」
と、まあこんな感じで会話が弾み、気付けば夕方。
「それでは、あたしはこれで」
「また、葉桜に遊びにおいでよ」
「そんときは一緒に遊ぼうで!」
「もちろん!」
すっかり意気投合した女子三人組。
「じゃ、ばーいばーい!」
そう言って、ナオは走り去って行った。
向こうから自転車のブレーキ音とそれが倒れた音が聞こえたのは……、まぁ、無視しておこう。どーせいつものことだ。
「俺らも帰るか」
「そうだね」
「あ、先行っといて。ウチら、少し用があるから。な、やみよ?」
「…………」
ひのでちゃんはやみよに同意を求めたが、完膚無きまでに無視だった。
「そうなんだ。じゃ、お先に〜」
「またな」
「おー、グッバ!」
そうして、僕・タク・海梨ちゃんは駅のほうに向かった。
「なぁ、やみよ。電柱の陰から見たんやけど、今日あんたらが追っ払った不良って……」
「片桐醍醐。『葉桜の紅い狂気』だ」
「あっちゃあ……。また、エラい奴に目ェ付けられたなぁ」
「どうする?」
「あちらさんにもよるやろ。でも、孝くんとかを巻き込まんようにせなな」
「……分かっている」
「分かっとんならええ。でも忘れんときぃ、
傷つくんはウチらだけで十分や」
「…………ああ」
「よし。そんならもう帰ろか」
「…………ん」
どうやら孝介は、これまでの人生で地味だと言われ続けて、自分の中で『何か』を諦めてしまったようです。
……はい。そんな話は置いといて。
また来ましたテスト期間! でも今度は更新停止はしません! なぜかって?
どっちにしろ週一しか更新しないし(ォィ
てなわけで停止はしませんが、更新速度は遅くなる、ということで…。