第25話:策士と銀の刃と冷たき烈風の共闘
「ナオ! おまえ、何やってんだ!?」
「いや〜。サッカーの応援来たら、なんかこんなことになっちゃった。テヘ♪」
「テヘ、じゃないっての。今の状況、分かってるのか?」
「こーちゃんが来てくれたからもう安心!」
「あっそ……」
全く…、最後に会ったときから、こいつは何も変わっちゃいない。
平均値ぐらいで、僕より低い背。
肩より少し下くらいまでの髪。
大きくて、くりっとした目。
鼻っ面には、昔の腕白坊主よろしく絆創膏が貼ってある。
そして、純真無垢なその笑顔。
何もかもが、そのままだ。
「なんだァ、おまえら? こいつのダチか?」
不良の一人が訊いてくる。
「そんなところですね。てなわけなんで、その娘、返してくれませんか? あ、ちなみに待たせてる友達に『20分経って帰らなかったら警察呼んどいて』って言っておきましたんで」
僕の言い放った嘘に、少し不良がたじろいだ。
表情には出さないよう気を付けているが、僕は静かに怒りを燃やしていた。
こいつら――許さない。
と、不良グループのリーダーっぽい人が一歩前に進み出た。
「俺らもサツを呼ばれちゃ困るんでな、退こうと思ったんだが……」
その目は僕やタクではなく、その横、やみよに向けられた。
「女みてーな顔、長い髪、その眼……。なるほど、おまえが『葉桜の冷たき烈風』か…」
ぶりざーど?
「中坊のくせに調子こいてるらしいじゃねぇか、テメェ?」
「……ただの正当防衛だ」
やみよも一歩前に出て言った。
「そのツラが、ムカつくっつってんだよ!!」
そう言うと、そいつは不意討ち気味にやみよに殴りかかった。
が、
パシッ!
「え……?」
やみよはその拳を避けることもせず、右手で受け止めた。
「はッ!」
そして、そのまま腕を思い切り捻り、相手がバランスを崩したところで足払い……、いや、そう呼ぶには些か強烈なローキック。
相手が無様に倒れるまでの所要時間、約二秒。
「ぐ……。くそっ。おい、やっちまえ!」
リーダーっぽい人(倒れたままでカッコ悪い)が言うと、残りの不良が一斉にやみよに襲い掛かった。
しかしやみよは全く動じず、構えた。
一人目。正面から殴りかかったがその拳は空を切り、かわりに鳩尾に強烈な右ストレートが決まる。
二人目。横から襲いかかるが、流れるような回転で勢いのついたエルボーが胸のあたりに突き刺さり、仰向けに倒れる。
三、四人目。前後からの挟み撃ちにするも、やみよは一人が突き出した拳を避け、その腕を持ち体を半回転させながら後方に一本背負い。そして、そのままもう一人に向かってそいつを叩きつけた。
ダメージを受けた不良たちは、その威力の強さにより起き上がれないらしい。
高校生相手、しかも複数に対してここまで圧倒的とは…。
冷たき烈風の二つ名は伊達じゃない。
と、
「オラァァァアアア!!」
不良最後の一人が落ちていた鉄パイプを拾い、やみよに襲い掛かった。
攻撃後で少し反応が遅れたが、すぐに回避行動に――
「…………!!」
動かない? ――いや、動けないんだ!
倒れた不良の一人に両足首を固定されている。
あれでは、あの鉄パイプを避けれない!
思わず僕は目をつぶった。
でも、その音は僕に届いた。
ガキィィィィィィィィィィィィィィン…………
…ん? これは、鉄と人間がぶつかる音じゃない。
目を開ける。
逆手に構えたカッターで鉄パイプを受け止めている、
柴村琢人が、そこにいた。
途中、孝介の口調が変わりましたが、あれが孝介の『本気モード』です。
ちなみに、やみよは本気を出していません。本気だと素手でも人を殺してしまう可能性があるので。
バトルっぽいものを入れてみましたが、どうでしょうか? 初めてなので巧く書けた気がしません。感想やアドバイス等ありましたら本当にお願いします。