第15話:井戸端海梨の葛藤
「登場人物の日常」編です。
第一弾は井戸端海梨編。
タイトルの付け方は、まぁ、某有名なアレの真似です。
「ニャ〜」
「にゃ、にゃー」
鳴き返してみたけど、状況は一片たりとも変わらなかった。
今、私・井戸端海梨は公園の隅に捨てられた猫とにらめっこをしています。
……猫って笑うのかな?
えっと、捨てられた猫と向かい合っています。
拾うか捨てておくか迷っちゃってるんです。かなり真剣に。
「でも、どうしよぅ…?」
拾って帰りたいけど、多分お母さんに怒られるよね…。
でもさ、箱に貼ってる台詞も台詞だよ。
『棄てないでください。』
…………何この、一昔前の昼ドラみたいな台詞。
普通『拾ってください』だよね?
しかも『捨てる』じゃなくて『棄てる』だし。かなり酷くなってない?
そこがまた同情を誘うんだよ。
でも、本当に飼いたいなー。
目がさ、ちょっと前の消費者金融のCMの、何か書いてる札を下げたチワワみたいな感じですっごくウルウルしてるの。
……あの札、何て書いてあったっけ?
『ご利用する時点で無計画』? 実際そうだよね。えっと、『ご利用は軽率的に』…でもない…。なんだったっけ?
……まいっか。
とりあえず、この猫のことを考えよう。
飼うとなったら、まず名前をつけなくちゃ。
どんな名前にしようかな?
「タマは?」
「ニャー」
ダメか…。普通すぎたかな?
「それじゃ、シロ」
「ニャー」
うーん。『白猫』だから『黒犬』と対比させてみたんだけど…。
あの人を登場させちゃいけないってことなのかな?
「それなら、総理大臣、なんてどう?」
「ニ゛ャー!!」
ごめんなさい! 人のを真似しちゃだめだよね! しかもあんなすごい小説を真似るなんて恐れ多いよねそうだよね!!
「ニャ」
はい、すみません。反省します。
って、まだ飼うって決まってないのに、何言ってんだろ?
あ、でも、ちゃんと説明すれば許してくれるかも。
ほら、いっつも送られてくる進○ゼミのマンガだって、最終的には「仕方ないわねー。そこまで言うなら良いわよ」とか言うし。
え、現実は違う?
いやいや、やってみなきゃわかんないですよ?
さて、どう説明しようかな……?
……。
…………。
………………。
お、思い付かない…。
そもそも『捨てられてた』以外に説明しようがないよぅ。
しかも、考えれば考えるほどマイナスイメージしか浮かんでこない。
餌代はかかるし、便所の世話もしなくちゃいけない。あと、服に動物の臭いが付いちゃう。
諦める?
いや、諦めたくない。
うぅぅ〜。
こ、こうなったら…。
孝介くんみたいに策を弄してみるのはどうだろう。
そうだね……。
ぽくぽくぽく(思考中)。
ん!!
裏庭にこっそり餌を置いておこう。
それを毎日続けて猫を住み着かせれば、飼わざるを得なくなるはず。
…………完璧ッ!!
よし!
そうと決まれば、実行しよう。
「いいわよ」
「……え?」
「その猫飼うんでしょ? 別にいいわよ」
うわー。すっごくあっさり了承されちゃった。
「でも、お父さんは…?」
「……海梨は飼いたいんでしょ?」
「う、うん」
「それじゃ飼いなさい。その代わり、ちゃんと世話するのよ」
「で、でも…」
「飼いたくないの?」
「そんなことは!」
「そ。変な子ね」
飼えることは嬉しいんだよ?
だけど、ね……?
えと、2回連続ですが、重大なお知らせです。
僕が書いていたもうひとつの小説、「新入社員」ですが、諸事情により一時削除させていただきました。
諸事情
1・私生活が前より忙しくなった。
2・ストーリーが行き詰まった(大筋は考えていたが)。
3・「ラプソディー」のほうに全力を注ぎたい。
です。楽しみにして頂いていた方、本当にすみません。また余裕ができたら校正して出そうと思います。
もう一度言います。
本当にすみませんでした。